表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
モンスター使い
31/122

31馬島へ向かって

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)

ガルガン   レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)

パワー    ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)


 翌日、俺達は馬島に向かって街道を出発した。

 今日は虎島最大の街ウォーロイ、明日は虎島港に着く予定である。

 護衛の仕事を引き受けながら移動できればと思ったのだが、大会が終わりモンスター使いが多数いたため依頼が残っていなかった。

 まあ、普通に移動するのも悪くないかな。センターの宿泊施設に泊まるのはきついけど。


 ウォーロイの街に着いたら、依頼もチェックしておこう。

 俺はまだ一部読めない単語があるが、依頼文書の内容の概要は分かるまでになった。

 会話する人間が基本的にご主人様だけなので、なかなか会話の練習はできないが、基本的な単語の発音は教えてもらったので、町で通る人間の会話を聞いて勉強しようと思う。


 夕方になり、特に問題もなく俺達はウォーロイの街に着く。

 この町の歴史は比較的新しく、元々はセンターがモンスター使いの大会を開くためにコロシアムを建設したことが発祥だが、それを見物する人や、モンスター使い相手に商売する人が集まって大きくなり、今では虎島最大の街になっている。

 

 街に着いたら、まずは依頼の掲示板のチェックから始める。

 町の規模に比例して依頼の数も多いのだが、美味しい依頼は当然のごとく他の冒険者が引き受けており、残っていない。

 せめて、安くてもいいから港町への護衛がないかと探してみたが、それもなかった。

 そこそこの件数の依頼書を読んだが、俺は特殊な単語が使ってない限り、依頼書の内容が読めるまでになったことを確認できたからよしとするか。


(ご主人様、今日はどこに泊まりますか?)

 俺はご主人様に聞く。

 明日の朝一の依頼を探すならセンターに泊まった方が有利ではある。しかし、この街は同業者が多い。同じこと考えている奴も多いだろうな。


「今日は、主に大会の観客向けの宿にするわ。節約しないといけないし。」

 ご主人様がそう答える。

 まあ、明日受けられる依頼って、港町行きの護衛くらいだからなあ。無理してセンターに泊まることはないか。

 パワーが残念がっていたが、お前の技を教えてもらうために節約だと言って、納得させた。


 大会が終わり客も減っているため、宿はすぐに取れた。

 俺は、チェックインするご主人様と宿の人の会話を理解できるよう耳を澄ます。

 一応勉強を続けてきたので、宿の人の言っていることも理解できるようになった。

 部屋は、フルゴ村ほどではないが、質素なものだ。

 大会を見る観客は高額の宿泊料を払えないからな。

 お風呂も男女別の共同浴場だけで、仲間モンスター用のお風呂などはない。

 今は客が少ないからモンスター使いも客に取るが、宿自体がモンスターが泊まるような作りになってないからな。


 今日はもうすることないよな。

(ご主人様、人間の会話の勉強のために、散歩に行ってきていいですか?)

 俺は、ご主人様に聞く。


「ウルなら大丈夫だと思うけど、変なところ行かないようにね。」

 ご主人様のOKは出たのだが・・・


(ウル様、俺様も連れていってくれ。ジャンプの練習をしておきたいぜ。)

 パワーがついて行きたいという。コーチも続けた方がいいと言ってたけどなあ。


(俺は人間の会話の内容を理解する勉強に行くんだが。隣でドタバタされると困る。)


(別のところで邪魔にならないようにするからいいだろ?)


(街の中で騒ぎを起こすんじゃないぞ。)


(分かってるって。)


 俺は、パワーを連れてウォーロイの街を出歩く。

 まずは、パワーが練習しやすいところを探そう。

 今は使われていないコロシアムの外側は人もいないし、練習にはいいかな。


(それじゃあ、俺は街の中歩いてくるから、ここで練習しながら待っていてくれ。)

 俺は、コロシアムの外側にパワーを残して、人間が会話しているところを探しに行った。


 俺は町の中心の商店街の方へ向かう。

 もう日は暮れてきたのに、色々な店が出ていて、物を買う客がまだまばらにいる。

 物を買っている客のと店員の会話を聞いてみよう。

 たまに分からない単語があっても、前後の文脈から大体の内容は分かる。

 勉強の成果もあり、これくらいの会話なら、俺は理解できるまでになった。


 次はもう少し難しい会話にも挑戦しようとか思っていると、遠くから子供の泣き声が聞こえてくる。

 遠くからなので、人間は誰も気づいていない。

 泣き声はやむ気配がない。

 気になるな。行ってみるか。

 俺は、泣き声の方向に向かって走っていった。


 人気のない通りに入る。

 5-6歳の男の子が座って泣いていた。

 血の匂いがする。

 転んで膝を擦ったみたいで、膝から結構な血が出ている。

 ちょうどヒーリングも覚えたし、治してやるか。

 俺はそう思って近づくと。


「うわー、狼、助けて。」

 と言って、大声を出されてしまった。

 俺は襲ったりしないってば。


 子供の叫び声を聞いたのか、走ってくる人間の足音が聞こえる。

 絶対まずい展開だな。これは。

 ヒーリングだけかけて立ち去るか。

 とは言え、近づかないとヒーリングはかけられない。


 俺は、子どもに近付くと、こっちくるなと言って傍にあった石を投げてきた。

 簡単にかわせるけど。


 走ってくる足音が近づいてくる。

 仕方ない。子どもの傍から離れよう。

 俺は、一旦子供の近くから去って、建物の陰から様子を見ることにした。


「トム、探したわ。どうしたの、その怪我。」


「お母さん、狼に襲われそうになったんだ。」


 違う。濡れ衣だ。俺は怪我なんてさせてないぞ。

 ヒーリングをかけてあげようとしただけだぞ。

 しかし、人間の言葉を話せない俺には、その主張をすることはできない。

 このまま近くにいたらまずいかも。

 母親が来たんだしこの子も大丈夫だろ。さっさとパワーのところへ戻ろう。

 俺は、親子に見つからないようにしながら、その場を離れた。


 パワーのところに戻ると、パワーは熱心に練習をしている。

 ジャンプの練習は終わったようで、インパルスの練習をしていた。


(ウル様、早かったな。)

 パワーが気づいて話しかけてくる。


(邪魔して悪かったな。誤解されたので逃げてきた。)


(どうしたんだ?)


(転んで怪我して泣いてる子供がいたから、ヒーリングしてやろうと近づいたら、

 来るなと叫ばれた挙句、やってきた母親に、狼に襲われたって言われた。

 仕方ないから、逃げてきた。)


(ウル様、それは災難だったな。

 厄介なことになってもまずいし、帰った方がいいぜ。俺様ももう帰ることにするぜ。)


 俺達は宿に帰って、ご主人様に事情を話す。


「それは逃げてきて正解ね。

 大丈夫だと思うけど、もし騒ぎになったら、私が説明に行くから心配しなくていいわよ。」


(ご迷惑かけてすいません。)

 俺はご主人様に謝る。


「モンスター使いと契約しているモンスターは、普通は自分だけで出歩かないから、野生のモンスターと勘違いされたかもしれないわね。今後は、気をつけた方がいいわ。」


(はい、気を付けます。)


「別に怒ってないから、気にしないで。」

 俺がシュンとしているのでご主人様は心配してフォローしてくれたみたいだ。


(人間と会話出来たらなあ。)

 今日のことで俺はふと思った。


「確か★5セトの専用技にあったはずだけど。」


(セトにならシルバーウルフからでもなれますね。)


「この前、シリウスを目指すって言ってなかった?」

 ご主人様が突っ込んでくる。


(何でもないです。

 今日のことでちょっと思っただけですので。シリウスを目指すことは変わりません。)


「考えた上でセトに変えるならいいけど、何かある度にぶれるのは良くないわよ。」

 はい、仰る通りです。

 こんなことで方針がぶれてちゃだめだよな。

 襲われたと勘違いされたショックからまだ立ち直れてないのかもしれない。

 

(まだショックから立ち直れてないので、ちょっと休みます。)

 俺はご主人様にそう言って、ベッドの横で丸くなった。

 そのまま寝てしまったらしく、気づいたら朝になっていた。


 気を取り直して、虎島港を目指そう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ