27乗船の準備
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
進化が終わると、センターの出口にモンスター使いが1人待っていた。
★3ライガーと★2ヤングブルードラゴンを連れている。
「レンディールさんですね。
私はこの町のモンスター使いでロイと言います。
クララ・ハルメルンからの依頼の状況と顛末について説明するように、アーカイクさんから言われてきました。」
例の依頼を受けた人か。
出発する昼までに話を聞きにいきたいと思っていた。
アーカイクさんは手際がいいな。
俺達はロイさんに連れられて、センター内の小さめの会議室に案内された。
「まず、依頼の顛末を話しますので、その後に質問があればお聞きします。
依頼内容は、倉庫から聞こえる動物の唸り声の正体の調査です。
結果は、船の出発までに依頼の達成が出来ずに終了です。
船内の全ての倉庫の荷物の間を丹念に確認しましたが、異常は発見できず。
依頼人が唸り声を聞いたという場所で1日声が出るのを待ちましたが、動物の声を聞くことはできませんでした。
質問はありますか?」
「荷物の中身は調べなかったのですか?」
ご主人様が聞く。
「ハルメルンさん本人の荷物は開けて確認させていただいたのですが、
他人の荷物は勝手に開けられないとのことで、そちらは調べていません。」
ハクエンさん、ずっと荷物の中で眠らされたままと言う感じだろうか。
唸り声も、たまたま目覚めた時に助けを求めようとしたのだろうなあ。
「他人の荷物って結構多いのですか?」
「そうですね。全体の3分の1くらいは他人の荷物みたいでしたね。」
予想通り過ぎる回答しかこない。
あと、何を聞いたらいいだろうか。
(調べてない荷物って、船のどこ辺りにあるの?
あと、唸り声を聞いた場所はどこ?)
「君が、噂のウル君?
他人の荷物は、船倉の後ろの方に倉庫に固められていたよ。出発するまで移動させてなかったはずだよ。
唸り声も船倉の後ろの方から聞こえてきたとハルメルンさんが言っていたよ。」
俺は既にセンターで有名人になっているみたいだ。
それはともかく、やはり、唸り声の主はハクエンさんぽいな。
荷物の概ねの位置も確認できた。
(ハルメルンさん以外の荷物の持ち主って船に乗ってるの?)
「荷物だけで自分は乗らない人の方が多いみたいだよ。
乗る人もいるみたいだけど、私は乗ることろまでは見ていないから、人数までは分かりませんが。」
当然犯人も乗ってるよな。1ヶ月近く放っておいたら衰弱死する可能性があるわけだし。
「ハルメルンさんて、どんな感じの方ですか?」
ご主人様、さすが。それは大事です。
「ハルメルンさんは、人当たりのいい優しそうな人でしたね。
娘のクララさんを安心させたいと思って、自分にできることなら何でも言ってくれといってましたし、非常に協力的でした。
ただ、傍にいた★4ヘルハウンドの目つきが鋭くてちょっと怖かったですけど。」
これで、ハルメルンさん本人が加担している可能性はほぼないと見ていいかな。
本人も協力的だということだし、早い段階でハルメルンさんに会ってもいい気がする。
(ハルメルンさんとクララさんの部屋の位置はどこ?)
「船の中央部にあります。一応立て札もありますし、例のヘルハウンドが部屋の扉の前をうろついてました。
中でハルメルンさんの部屋とクララさんの部屋に分かれています。」
(ヘルハウンドどうにかしないと中に入れそうもないですね。)
俺はご主人様に言う。
「ハルメルンさんはモンスター使いなのですか?」
「分かりませんね。ヘルハウンドを従えていますので、その可能性は高いと思っていますが。
私はモンスターと会話ができる魔法を使っているのですが、ヘルハウンドはハルメルンさんのことを『主殿』と呼んでいました。」
「何とかヘルハウンドにも事情を話して、ハルメルンさんに会わせてもらうしかないわね。
これで、方向が見えたわ。ウルは、まだ聞きたいことある?」
(乗客の部屋の場所は分かる?)
「船の後部にそれらしい部屋があったけど、実際に使われているかどうかまでは分からないね。」
まあ、乗船前の船しか見てないからそうだよなあ。
(そうだ、船の出発日っていつ決まったか分かる?)
「元々出発日は一昨日だったみたいだよ。
私の依頼の調査のため、結局出発を1日遅らせることになったようだよ。」
「予定が決まってたいのなら、犯人はそれに合わせて犯行をすることできるわね。
犯人は一昨日かその前日には港町に着いていたわけだし。」
これで、ハルメルンが犯行に合わせて日程を決めた線は完全になくなったな。
(俺はもう聞くことない。)
とご主人様に言う。
とりあえず、聞きたいことは聞いたかな。
「ロイさん、ご協力ありがとうございました。」
ご主人様がお礼を言う。
「いえ、私の見てきたことが少しでもお役に立ててばと思います。」
ロイさんが帰った後、俺はご主人様と方針を相談する。
(乗船したら、早々にヘルハウンドを通してハルメルンさんに会わせてもらう方向でいいですか?
ハルメルンさん本人は加担していないと思いますので。)
「私もそれでいこうと思うわ。犯人以外にも乗客がいるわけだし、犯人は元々の出発日に合わせて犯行に及んだのだと思う。たまたま大会がピンポイントで重なっただけで。」
(じゃあ、乗船後の方針は決定でいいですね。
あと、この町にも図書館ありますか?)
「船で移動中に時間がありそうだから、本を読むのね。分かったわ。
昼まで時間あるから、探しに行きましょう。」
ご主人様は、俺の意図を察して本を探しに連れていってくれた。
昼になり、マイケルさんに案内されて高速船にやってきた。
20人くらい乗りの比較的小さな船だ。
アーカイクさんが待っている。
「レンディールさん、待っていました。」
アーカイクさんが船の説明と船員の紹介をしてくれる。
船の動力はなんと12匹の★3サーペントだ。
エンジンとかない世界なら、確かに一番早いかも。
4人のモンスター使いが指令を出して動かすらしい。
一度に動かすのは6匹と2人で、2交代で動かすようだ。
なるほど、こういう船なら手配に色々準備がいるだろうな。
船の上はサーペントの餌と交代中のサーペントとモンスター使いの休憩場所が船上のかなりの部分を占める。
あとは進行方向を指示する船長と交代要員の副船長。
そして、俺達だ。
船長の話では、追い付いた後も、何かがあっても俺達が脱出してきても救助できるよう2ー3日はハルメルンの船の後を追いかける予定とのこと。
五島諸島で一番北の亀島から離れたら、高速船は帰るので、それまでに解決してほしいとのことだった。
乗船したら周りは敵だらけだったという可能性もゼロではないし、しばらくは救出用の船がとどまってくれるのはありがたい。
俺達は高速船に乗って出発する。
大きな船ではないので、狭い部屋に全員が詰め込まれる。
とは言え、1人と4匹が過ごすには十分なスペースではある。
到着までは任せるしかないので、俺は本を読んで人間の文字を勉強することにした。
ご主人様は何か真剣に魔法の本を読んでいる。
気になったので聞いてみた。
「これ?
フライトの魔法を新たに覚えようと思ってるの。
ハルメルンさんの船は大きいでしょ。乗り込むのは大変だろうから。
短時間でも空を飛ぶ魔法を覚えておこうと思って。」
俺は、乗り込む方法まで考えていなかった。
仮に、大きな船の甲板まで10メートル登らないといけないとしたら、俺やパワー・ガルガンはどうやって登るんだ?
完全に見落としていた。
「最初にパワーに登ってもらって、残りのメンバー引き上げてもらおうかなと。」
(自分以外にもかけられるのですか?)
「もちろんよ。ただ、かけられる人が空を飛ぶことをイメージしないと空中を進めないのだけど。」
(俺様が、空を飛べるのか。すごいぜ。)
パワーが話に割り込んできた。
「パワー、私が魔法を覚えたらちゃんと飛べるように練習しましょうね。」
(おう、俺様楽しみだぜ。)
ご主人様が気づいていなかったら船に乗り込めずに立ち往生していたかも。危なかった。
次の日の朝、ようやく魔法を習得したご主人様が、パワーにフライトの魔法をかける。
「パワー、空中に浮くことできる?」
(俺様に、任せろ。)
パワーは難なく部屋の中で空中に浮く。そして、部屋の中を空中で自由自在に動き回る。
飛行の魔法がかかっていても、本人が空を飛ぶことをイメージできないと飛べないわけだから、パワーはセンスがある。
「船に追い付いたら、パワーが最初に飛んで船に入ってね。
ウルは、ホールドでロープを船の何かに巻き付けて。
あとは、私達がロープにつかまっていることろをパワーに引き上げてもらう。
こんな感じで、船に乗り込むけど大丈夫?」
(パワーにストレングスをかけてもらって、1人ずつ運んで貰えないですか?)
「出来るならその方がいいわね。ガルガンはロープにつかまるの難しいでしょうし。」
パワーはストレングスを使って巨大化する。体長4メートル近くになり、流石に船の部屋の中は厳しくなる。
甲板に出て、ガルガンを抱えて空を飛べるか試してみる。
最初はバランスが悪かったが、しばらく練習すると、ガルガンを担いだまま空を飛べるようになった、
これなら、パワーに1匹ずつ順番に全員運んで貰えば問題ないな。
これで準備は万端のはず。
追い付いたら乗り込むか。




