19技を色々試してみる
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★2ブラックベア)
次の日の朝、マイケルさんと待ち合わせて封印に向かって出発する。
隊列は、俺とパワーが先頭を進み、マイケルさんとご主人様を真ん中に置いて、後ろをガルガンに任せることになった。リーザは今はご主人様の荷物にとまっている。
町の近くは見晴らしのいい平原なので、マイケルさんの指示した方向へ進んでいくだけだ。
今は遠くがよく見えるし、まだ何も出てきていないので、俺は歩きながらパワーと話す。
(パワー、お前昨日早く寝たよな。覚えた技の特訓でも考えているのか?)
(ウル様、凄いぜ。俺様のことお見通しなんだな。)
(そりゃ、俺もお前と戦った時に同じことを考えていたからな。ホールドの精度が、戦う度に上がっていただろ?)
(2回目の時、飛んでかわしたはずなのに、ウル様のホールドが追いかけてきたのは驚いたぜ。
ウル様も、夜のうちに特訓をしていたんだな。)
(まあな。
俺もあの時はホールドを覚えたばかりだったからな。
あのコントロールは、俺にホールドを教えてくれた師匠が使っていたんだ。
何とか物にしようと思って、夜に頑張って特訓したなあ。)
(俺様もコーチのように、殴りながらインパルス出せるようになりたいけどよお、難しくてよ。)
(コーチは、あれはパワーが進化してからじゃないと難しいと言ってたぞ。無理はするな。)
これは、まずかったか。パワーにスイッチを入れてしまったかも。
(なあ、ウル様、今夜特訓に付き合ってくれねえか?)
とりあえず、パワーが無茶しないよう見ておいた方がいいだろうし、俺も自分で試したいことあるし付き合うか。
(ああ、いいぜ。俺もホールドで試してみたいことがあるしな。)
その後、俺とパワーは技の話で盛り上がった。
そして、その日は平原を進むだけだったこともあり、何事もなく日が暮れてきた。
今回も道中を急ぎたいため、狩りには時間を使わずぎりぎりまで歩いて保存食で済ませる。
そして、夜は目が見えないリーザと依頼人のマイケルさん以外が交代で夜の見張りをすることになった。
俺はご主人様にお願いして、パワーと俺が連続になるよう順番を調整してもらった。
順番は、ガルガン→パワー→俺→ご主人様の順番になった。
ただ、パワーには自分の順番が半分終わったら俺を起こすよう頼んでおいた。
(ウル様、ウル様、起きてくれ。)
俺はパワーに起こされて目が覚めた。
結構いい時間だな。
パワーは少し息を切らせている。先に自分だけで訓練していたみたいだな。
(パワー、何も襲ってきてないな?)
俺は、パワーに聞く。番をするのが一番の目的だから、訓練していて何かあっては本末転倒だ。
(ウル様、大丈夫だって。何も襲ってきていないぜ。)
まあ、流石に番もしてくれているよな。
確かに周りを見渡す限り何も近づいてきていない。
この辺りはまだ平原だし小動物も少ないせいか、何かが近づけば分かりやすそうだ。
それじゃあ、訓練を始めますかね。
(パワー、先に自分でも訓練をしていたんだな。何かコツでもつかめたか?)
(ウル様、折角だから今日の成果を見てくれよ。)
パワーは、成果を見せたくてたまらないらしい。これは期待できそうだ。
(それは楽しみだな。早速見せてくれよ。)
(じゃあ、当たらないようにウル様のちょっと左に向けて腕を向けるぜ。)
パワーは、右腕を前向きに伸ばして、俺の少し左に向けた。
少し左にするのは、インパルスは攻撃技なので、俺に直接当たらないようにするためだ。
(片手だけで衝撃波が出せるようになったのか。凄いじゃないか。)
パワーは昨日までは両腕ともに前に出して何とか衝撃波を出していたので、俺は、片腕で出せるようになったのだと思っていた。
が、衝撃波はパワーの左腕から左に出た。パワーは左腕を誰もいない左に向けていたのだ。
(ウル様、どうだ。今日の特訓の成果は。)
パワーが得意になって聞いてくる。
(両腕じゃなくても片腕で、しかも、腕を前に向けていなくてもインパルスを出せるようになったんだ。
すごいじゃないか。
しかも、この出し方ならフェイントにも使えるぞ。)
俺は、パワーの成長に素直に驚く。
俺は中身が人間だから特別なだけで、パワーは賢いし技の覚えも早いよな。
マイケルさんの言っていた限界突破種というのは、実はパワーのことを言っているんじゃないだろうか。
もし熊が群れを作っていて、その中にパワーがいたら絶対目立つよな。
俺はそんなことを思った。
(俺様やっただろ。どうしても腕の先からしか出せないところの目途が付かないけどよ。)
パワーはまだまだ上を目指しているらしい。
(パワー、今それもできてしまったら、コーチと大して変わらないぞ。
コーチが★4まで進化して、ようやくできるようになったことを、今お前ができてしまったら複雑なんじゃないか。)
(コーチならきっと喜んでくれるぞ。)
(確かにそうだよな。いい熊だもんな。
で、次は腕以外から衝撃波を出せるように練習するのか?)
(それもあるけどよ、ウル様が今何しようとしてるのが気になってるんだ。)
パワーは俺が考えていることを理解しようとして気にしてたな。
折角だから、パワーに話しておこう。
(俺は、技の工夫した使い方を試してみようと思っているんだ。
技も使い方次第で色々なことができるんじゃないかって。)
(ウル様は、やっぱ難しそうなこと考えてるな。)
ちょっと引かれたか。
(今考えているのはホールドについてだけど、折角だから見てくれよ。)
(何をするつもりなんだ?)
パワーが興味深そうに聞いてくる。
(まあ、見てなって。ご主人様に話してロープを出してもらっておいたんだ。
じゃあ、まず1回目。)
俺は、ロープを持ってくると、誰もいないところに向けてホールドを放つ。
(何か、いつもより遅いだけの気がするな。)
パワーは俺のホールドを何度も受けているだけあって、そのあたりの分析は鋭い。
(もう1つ、気づくことはない?)
(ロープの先じゃなくて、ロープの途中から伸びてきたから、2本のロープが動き出しているところか?)
(その通り。)
俺は、いつもはロープの先っぽを飛ばして目標を縛ろうとしていたが、今回はロープの途中を飛ばした。
当然ロープの前側と後ろ側の2本がついてくるから、パワーの指摘通り普通よりはスピードが遅い。
(ウル様、スピードが遅くなっただけで使い道がなさそうな気がするぜ。)
(まあ、そうだな。じゃあ、ロープを戻して2回目。)
(ロープじゃなくて、近くにあった石が飛んだ。ウル様、凄いぜ。)
(これ、動かすものをロープから石に変えただけなんだ。
もともとホールドはツタとかロープを動かしてコントロールして相手の動きを封じる技なんだけど、別に動かすのはロープじゃなくて石でもいいよね?)
(かなり速く飛んでたし、ウル様の飛ばした石に当たったらすごく痛そうだよな。)
精神集中に必要な時間が違うから、攻撃に使うくらいなら早く撃てる攻撃技を使った方が早いけどな。
(ホールドでできることが、近くの軽いものを動かすという力だから、動かすものや方向によっては違う使い方もできるんじゃないかと思ったんだ。)
(技も色々な使い方ができるんだな。
ウル様、俺様も閃いたぜ。1セット俺様の攻撃かわしてみてくれねえか?)
(なんか面白そうなこと思いついたな。じゃあ、俺も全力で避けてみるから、大怪我しないように注意しながら来てくれ。)
(分かったぜ。練習中に起こったことが役に立つかもしれないと思うとわくわくするぜ。)
パワーは両腕を伸ばして俺の方へ向けた。
でも普通に衝撃波飛ばすんじゃないよな?
それじゃあ、何の工夫もないし。
パワーが急に腕を少し下に向けインパルスを放つ。
それじゃあ、当たらないぜ。インパルスは俺の前の地面に当たる。
が、その衝撃で土が飛び散る。前が見えない。当然パワーの姿も。
俺は咄嗟に右に飛んだ。
そして、俺のいたところにパワーがタックルを仕掛けてくる。
(やっぱ、ウル様には読まれてたか。)
パワーが残念そうに言う。
(すごいぞ、パワー。
インパルスを地面に放つことで、土を舞い上げて敵から自分の姿を見せないようにするんだな。
こんな使い方ができるなんて、パワー、お前はやはり才能があるぞ。)
(俺様だってやるときはやるんだぜ。ウル様みたいに技を自由自在とはいかねえけどよ。)
(パワー、俺が完璧みたいに言うけど、俺だって全然ダメな技あるんだぞ。
トリプルスラッシュの技だけど、まともに成功したことがない。)
(どんな技なんだ?)
パワーが興味深そうに聞いていた。
(攻撃するときに、右前脚の爪・左前脚の爪・牙の3回連続攻撃する技なんだけど、うまくいかなくってな。)
(3回連続攻撃か。強そうだな。俺様もやってみるぜ。)
また、パワーのスイッチを押してしまったらしい。
パワーはどうやったら連続攻撃ができるのか色々試し始めた。
結構時間が経っている。
俺は、パワーにほどほどにして寝るように言うと、自分はホールドでできることを色々試しはじめた。
明日からはちゃんと警戒が必要だろうから、ここまで練習できるのは今日までだろうな。
もちろん俺もちゃんと番もしてたぜ。
特に何も出なかったので、パワーが寝たのを確認してから、時間が来たところでご主人様を起こし、異状ないことをご主人様に報告してから俺も寝た。




