18センターの依頼
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★2ブラックベア)
パワーとガルガンの訓練が終わり、ご主人様は依頼の掲示板を確認することにしたようだ。
どうせだから俺達もついて行く。
俺もまだ依頼の文字は読めないが、ご主人様が新しい依頼が分かるように暦の単語を優先して覚えた。
美味しい依頼は必然的にすぐ誰かが受けるので、いい依頼を探すには新しい依頼を優先的に見ていくのが効果的だからだ。
この世界の暦は1年が12カ月、1ヶ月が25日で1年が300日である。
依頼日という単語と、1月から12月の個別の単語は覚え、数字も覚えたのでとりあえず依頼日の判断はできる。
さあ、新しい依頼を探して、ご主人様を手伝おうと思ったのだが・・・
「レンディールさん、探しました。センターの依頼を引き受けてくれませんか。」
そう言って、ご主人様を呼び止める男がいる。
あれっ、この人間の言葉が分かる。
ご主人様と一緒で、意思疎通の魔法を使っているのだろうか。
ご主人様が事情を聞いてみると、この人はこの島の封印を管理している担当者の1人でマイケルさん。
今回、センターが管理している封印の一つから、異常な気配があるという報告があったため、確認に行きたいとのこと。
依頼内容はその護衛である。
本来は、もっとレベルの高いモンスター使いに依頼するのだが、もうすぐモンスター使いの大会の開催があるため、出払ってしまっているとのこと。
それで、残っているモンスター使いの中で一番経験があるご主人様に依頼したいのだという。
「封印の場所はどのあたりですか?」
ご主人様が聞く。
「この島の中央部ですので、歩いて3日ほどかかります。悪用しようとする者に知られてはまずいので、詳細な位置は教えるわけにはいかないのですが。」
「島の中央部だと、レベルの高いモンスターがいますよね。わたしだけでは少し荷が重いかと。
他に何人か雇っていただいて、協力して護衛するという形にできませんか。」
今回は流石にご主人様も慎重だ。
「いや、レンディールさんクラスの人たちも大会に行ってしまっているのですよ。2週間前の定期巡回では何もなかったので、そう報告したら、皆さん大会に向かってしまって、残ってる皆さんはレンディールさんより経験の浅い人ばかりなんです。」
「それで、技の訓練の予約すぐ取れたのね。いや、こちらの話。
大会って5日後のはずなのに、皆さん行くの早いのですね。
それなら、センターの治安担当の人に応援は頼めないのですか?」
「交代休暇中の予備人員が、3日後から大会の警備に駆り出されるみたいで。」
「もし、何かあるとしたら、これは明らかに時期を狙ってますよね。
私では何かがあっても報告に戻るのが精一杯で問題に対処までは難しいと思いますが、それでもいいのですか?」
ご主人様が脅しに入った。大事の可能性もあるし、これはちゃんと態勢を整えた方がいい気がする。
「やむを得ません。もし、一大事であれば、センターに報告して大会を中止してでも対処の要請をします。
今の段階では本当に事件なのか分からない以上、そこまでするわけにはいかないのです。」
そりゃマイケルさんとしても、何もないかもしれないのに大会を中止させるような暴挙はできないよね。
「では報酬についても聞かせてください。正直、かなりの危険の可能性があるので、相当な額でないと。」
おや、この段階で報酬の話?
ご主人様は断る理由探しているのかな?
「直接報酬としては1000ジュエル位しか出せません。危険性に釣り合っているかというと厳しいと思います。
代わりに、育成担当に話を通しますので、コーチの空いている時間に技を無料で教えるとかでなんとかなりませんか?
この町のセンター限定になりますが。」
これは、マイケルさん上手い。ご主人様の弱みを巧みについてくる。
「それは魅力的で困ったわ。島の中央だと★5モンスターが出てくる可能性もあるから、5000ジュエルは払ってほしいところなのよね。
技の習得の費用は1回500ジュエル×技レベルよねえ。差額分の合計8レベル分+αは覚えさせてくれるのなら、考えてみるけど。
ウルはどう思う?」
ご主人様がマイケルさんの交渉術に苦戦して助けを求めてきた。俺も思っていたこと言おう。
「報酬もそうですけど、危険性が分かっているわけですから、何かあった時の連絡体制をしっかりしておく必要があると思います。そもそもですけど、まだ事件かどうか確認もしていないのに、異常な気配というのは何故分かったのですか?」
俺はマイケルさんに聞いてみた。
「君、モンスターと契約できるだけあって賢いんだね。もしかして、限界突破種?」
マイケルさんが興味深そうに俺の顔を覗き込む。
「それ、なんですか?」
初めて聞いたんだけど。
「ごめん、知らなかった?
あまり公にはできないのですけど、
現在でも、極々稀に★6に進化できる潜在力を持った個体が生まれることがあるのですよ。
生まれた時から明らかに賢くて技の覚えが早かったりするから、目立つのですけど。
君がまさにそれって感じで。」
いや、ウルフにしては賢いのは元人間だからです。言わないけど。
「それを俺に聞かれても困る。それよりも確認してないのに、なぜ異常な気配だと分かったの?」
話が脱線したから元に戻そう。
「そうだったね。
レンディールさんは知ってると思うけど、今回の封印は昔伝説の勇者が当時の魔王を封印したところなんですね。
そして、当時勇者に協力したこの島の★5ビャッコ達がいて、今でもその子孫が封印の近くにいて封印を守ってくれているのです。
センターはそのビャッコの子孫たちに、封印が解かれる危険があったらセンターに知らせることができる通信アイテムを渡してあるのですが、今回その通信アイテムが稼働したのです。
つまり、何かは分かりませんが、封印を守っているビャッコの子孫が、危険があると判断したということです。」
「ビャッコの子孫の危険信号だけでは大会の中止まではできないので、現地の状況を確認したいと?」
「そういうことです。」
「そのビャッコの子孫が間違えて稼働させてしまったとかいう可能性は?」
「ないとは言いませんが、その場合は何もなくてもちゃんと報酬は払いますから。」
「その通信アイテムの予備はあるの?俺達が危なくなって撤退せざるを得ない時に、センターに危険を知らせることができるわけだし。」
「1個ですがあります。私が持っていく予定です。あれは1個につき1回しか使えませんので、何もなければビャッコの子孫に渡しますし、何かあれば私が稼働させてセンターへ知らせて、緊急体制を取ってもらうつもりです。」
「ご主人様、道中の野生モンスターなら何とかなりそうですか?」
一応体制は考えてあるみたいだし、遭遇する野生モンスターが何とかなるなら受けてもいいかなと俺は思った。
「★4クラスのモンスターとの遭遇は想定しておいた方がいいかもね。
まあ、無理に戦う必要はないから、危険そうなら避けて進みましょう。
封印の近くには★5ビャッコもいるのでしょうけど、味方なんですよね?」
「野生の個体がいるかもしれませんが、封印の近くにいるのは味方です。
実際、私は仕事で2ヶ月に1回会いに行っていますので、向こうも私の顔は知っているはずです。」
マイケルさんも行く以上、★5ビャッコが敵になる心配はなさそうだ。
もし、操られているとかだったら、即センターへ救援依頼発動でいいよな。
「それじゃあ、依頼内容と対応を整理しましょうか。
1つめ、緊急で重大な危機があった場合。連絡アイテムを稼働させてマイケルさんがセンターに救援要請。センターには大会を中止して至急増援を派遣してもらう。私たちは、増援の到着まで近くにとどまり、状況報告など増援に引き継いで依頼完了。
2つめ、それなりの危険があった場合。センターには連絡アイテムによる要請はしない。ただし、マイケルさんの要請がなくても大会終了後増援を派遣してもらう。私たちは、増援の到着まで近くにとどまり、増援に引き継いで依頼完了。
3つめ、何もないか、私たちだけでも対処可能な場合。私たちが対処して、帰る途中で、後から来るセンターの増援に状況を報告して依頼完了。
こんな感じでいいですか?」
ご主人様、流石だ。自分の担当範囲をしっかりと限定してきた。
「センターの増援対応はそれでいいと思います。ですが、レンディールさん。
増援が到着したら、増援の方達を手伝ってくれないのですか?」
そりゃマイケルさんとしても、手伝ってもらうつもりでいるだろうな。
「その分は、増援の人たちと同じだけの別報酬で。経験で色がつくのは仕方ないけど。
同額分、技を教えてくれることでもいいわよ。」
まあ、確かに俺達だけ仕事量が多いのだからそうだよな。
ご主人様は、マイケルさんの払いやすい報酬にして押し込むつもりだ。
「分かりました。増援の方と同額分を技の訓練でよければ対応しますので、お願いできますか?
今回の護衛報酬分として1000ジュエル+技8レベル分、増援到着後分は増援の方と同額分の訓練で。+αは無しでお願いします。」
おお、マイケルさんが折れた。
「分かりました。引き受けましょう。」
マイケルさんも強敵だったが、どうやらご主人様の方が1枚上手だったようだ。
これ、訓練分の金額を普通に貰えるならぼったくりの金額のような気がする。
「では、私は上層部と救援に関する対応の調整をしてきますので、明日の早朝の出発でよいですか?」
「分かったわ。日の出と同時にセンターの入り口の待ち合わせでいいかしら?」
「了解です。それでは、護衛よろしくお願いします。」
そう言うと、マイケルさんは内部調整のため戻っていった。
こうして俺達は、封印の管理者の1人であるマイケルさんの護衛をすることになった。




