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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
モンスター使い
17/122

17パワーのコンプレックス

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)

ガルガン   レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)

パワー    ウルの仲間モンスター。(★2ブラックベア)


 ご主人様が技の訓練の予約をして戻ってくる。


「ガルガン、パワー。訓練の予約をしてきたわよ。

 明日、新しい技を教えてもらいましょうね。」


(やったー。)

(俺様やるぜ。)

 2匹ともやる気のようだ。


「リーザは退屈だけど、我慢してね。」

 ご主人様が1匹蚊帳の外のリーザにも声をかける。


(大丈夫よ。進化した時にわたしだけ覚えさせてもらったから。)

 リーザが気にしてなさそうでよかった。


(ご主人様、今日は中途半端に時間がありますよね?)

 とりあえず、手配が終わったところで、俺は自分のことを切り出すつもりだ。


「確かにそうね。すぐには受けられないけど、依頼を見てこようかと思って。」


(ちょうどいいです。俺もついて行きたいです。)


「ひょっとして、人間の文字を覚えたいとか?」


(流石、ご主人様。よく分かりましたね。)


「ウルは今までそういう事を気にしてたからね。それじゃあ、勉強しにいきましょうか。」


(はい、お願いします。)

 こうして、俺はご主人様から人間の文字を教えてもらうことになった。

 俺の狼の体では人間の言葉を喋ることはできないので、ご主人様の魔法に頼らずとも相手の言葉を理解し、地面に文字を書くなどして人間と意思疎通ができるようになりたいと思ったのだ。


 俺はご主人様について行く。

 しかし、ご主人様は依頼の掲示板とは違う方向へ行ってしまう。

 センターの出口じゃん。


(ご主人様、どこへ?)


「折角人間の文字を勉強するなら、まずは、人間の子供用の本から始めた方がいいかなって。」

 なるほど、確かにそうだ。

 ご主人様はいつもこういうところを気にかけてくれる。

 いい依頼があったとしても、明日までは受けることができないからな。

 俺の勉強を優先してくれたんだ。


 ご主人様は図書館のようなところで、2冊の本を借りてくれた。

 片方がこの世界の文字についての本。もう片方が子供用の物とか数字とか月などの絵とその単語が書いてある本のようだ。

 ある程度覚えたら、俺が自分だけでも勉強できるようにと考えてくれたのだ。


 この日、俺はご主人様に教えてもらって、この世界のアルファベットと、色々なものの単語を覚えた。

 文字や単語スペルは全然違うものの、文法も発音も前世の英語に近い。

 まあ、技の名前とかパワーというネーミングとか英語っぽいからなあ。

 英語が分かっていれば、さくさく覚えられたかも。

 俺は、前世で使わないからと思ってあまり英語を勉強してこなかったことをちょっとだけ後悔した。



 ご主人様から教えてもらった後、俺が自分で勉強しようと本を読んでいると、

(ウル様、何か難しいものを見てるな。)

 パワーが俺が読んでいる本を興味深そうに覗き込む。


 パワーは、いつの間にか俺のことを様付けで呼ぶようになった。

 確かに俺は最終的に戦ってパワーに勝ったし、パワーと契約もしているので立場上は主人なのかもしれないが、俺的には違和感がある。

 パワーに聞いてみると、俺がモンスターなのにご主人様の相談に乗るくらい色々考えられることをすごいと思って尊敬したという事らしい。俺とご主人様の会話を聞いてもパワーには理解が追い付かなかったみたいだ。先ほどのご主人様との技の相談のことかな?

 まあ、俺は元人間なのだから、この世界についてある程度知れば、当然それくらいはできる。寧ろ、結果的に理解出来なかったとしても、熊なのに人間並みに考えようとしたパワーの方が俺は凄いと思う。熊にしては恐ろしいくらい賢いもんな。

 とは言え、俺は人間だからと言っても混乱するだけだろうし、何て言おうか?


(これは、人間の子供が勉強するために使う本というものだ。これを見て人間の言葉を勉強すれば、ご主人様の役に立てると思って読んでいるんだ。)

 とりあえず、こういう説明をするのが精々だ。パワーの中の『俺が狼なのに人間並みに賢くて凄い』の図は覆せそうにない。


(俺様は、もうウル様には勝てねえぜ。人間並のこと考えるんだからよお。)

 これは、パワーがコンプレックスを感じてるパターンか。

 まずい。フォローしないと。


(パワー、何でも出来るようになろうなんて思わなくていいんだよ。俺はこういうのが好きで得意だからやっているだけ。

 俺は正面から戦ったら絶対にお前に負ける。だから、代わりにこういうところで頑張って仲間の役に立とうとしてるんだ。

 パワーは自分の得意なところで頑張ればいいんだよ。そうすれば、みんな認めてくれるし、自分の苦手なところは、それが得意な仲間の大切さが分かるから。)

 今の俺にできる、精一杯のフォローをしたつもりだ。こういうのはご主人様が得意なんだけど、今は部屋にいないからな。


(俺様、頑張ってみる。)

 パワーはそれだけ言うと、部屋の向こうで何かを考え出した。

 思い詰めている感じではないから、大丈夫だろうか。

 念のためご主人様が戻ってきたら、あった事を話して、後でフォローをしておいてもらおう。


 リーザとガルガンは気にせず、部屋でくつろいでいる。

 2匹とも難しいことは考えず、できることを精一杯やる感じかな。

 それはそれで大事なことだから。

 寧ろ、仲間モンスターとしてはこれが普通で、パワーが特別なのだと思う。

 まあ、パワーがここまで強くなったのは、今までもずっと、パワーなりに色々考えてきたからなのだろうな。



 夜になって、初めてパワーがお風呂の洗礼を受けた。

 意外にも、パワーは気持ちがいいと喜んでいた。俺達の中では一番お風呂が好きなようだ。

 パワーは部屋の絨毯も気に入っていて、いつもこんなところで寝たいと言っていた。

 予算的に流石に無理だとそれとなく言ったら残念がっていた。

 ご主人様が何かフォローしてくれたからなのか、パワーに元気が出たようで良かった。




 次の日、パワーとガルガンは別々に技を教えてもらいに行った。

 ご主人様は同時に両方を見ることができないため、俺はパワーの訓練に同席する。


「私はガルガンの方を見てくるけど、時々は見に来るからね。」

 ご主人様は、そう言うとリーザを連れて出ていった。


 パワーが昨日のことをひきずってなければいいけど。

 俺はそれを心配しながらパワーの様子を見ていたが、幸いにも杞憂だったようだ。

 離れたところから見た様子でしかないが、パワーは★4アルカスである熊のドルカンコーチと熱く語り合っている。

 あれはまさに体育会系の先輩と後輩だ。

 呼吸や精神集中の訓練をあっという間にクリアし、早々にコーチがストレングスの技の見本を見せ始めた。


 えっ、ストレングスって、体も一回り大きくなるのね。筋力だけを上げる技だと思っていた。

 ドルカンコーチが重い岩を軽々と転がして見せた。

 次はパワーがやってみるらしい。

 技を使う前はパワーですら、大きな岩はぴくりとも動かない。

 何度かやっているうちに、パワーもストレングスを覚えて大きくなる。

 なんか、コーチの時よりも大きくなったような気がするのは気のせいかな?

 パワーも先ほどまで自分が動かせなかった岩を軽々と転がした。


 あっと言う間に技の習得が終わったみたいで、2匹が俺のところにやってきた。

 あまりに早かったので、ご主人様はガルガンのところに行ったままだ。


(すいません。ご主人様はもう1匹の方を見ているみたいで。)


(は?パワーのご主人はあんただろ?)

 何で知ってるの?

 パワーに聞いたのかな?


(確かに契約してるのは俺ですけど。)


(やっぱパワーのご主人じゃねえか。ご主人は仲間のモンスターの責任を持たなあかん。)


(ご主人って人間のことでは・・・)


(種族なんて関係ねえ。お前さんはパワーの主人なんだから、グダグダ言わずにご主人らしくせんかい。)

 おーこわ。

 ドルカンコーチは熱血そうだもんなあ。

 パワーと契約しているのが俺である以上、パワーのことには責任持たないとダメだよな。

 確かに、コーチの言う通りだ。

 いつの間にか、俺はご主人様に何でも任せてしまう癖がついてしまっていたようだ。気を付けないと。


(すいません。

 見ていた感じ、あっという間に覚えたようですが、結果はどうですか?)

 俺は怖くて思わず謝ってしまった。


(パワーは賢いぞ。実に技の覚えが早い。

 精神力も強いようで、技の効果もワシ以上で驚いたわい。

 こいつは次に進化したらワシより強くなるのう。楽しみじゃわい。)

 ストレングスでどれだけ体が大きくなるかは精神力が影響するんだ。俺が覚えたらもっと大きくなれるのだろうか、とか考えてしまう。

 あと、パワーは今★2なんですけど、★3に進化したら★4のコーチより強くなっていいのでしょうか?

 などとも思ったが、怖いので黙っておいた。


(ありがとうございます。

 パワー、凄いぞ。こんなに早く覚えられるとは思っていなかったぞ。)

 俺がご主人様に倣ってパワーを労うと、


(俺様頑張ったぜ。)

 パワーが照れくさそうに返事をする。


(ところで、まだ時間もあるようだし、もう一つ技を覚えていくかの?)

 コーチは、パワーのことが気に入ったようだ。


(今日は技1つだけ教えていただく予定でしたけど、よろしかったですか?)

 俺は、ドルカンコーチの提案に乗り気だったのだが、一応聞いてみた。


(なに、細かいことは気にするな。折角時間が余っとるからの。

 ごちゃごちゃいうようなら、ワシが一喝入れておくから心配するこたあない。)

 うん、熱心なのはありがたいのだけど、コーチの立場は大丈夫なのだろうかと余計な心配をしてしまった。


(ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします。)

 とは言え、渡りに船なので、俺もお願いすることにした。


(それじゃあ、パワー。インパルスの技を覚えるぞ。

 我々熊族は世間では遠距離技を苦手としていると思われておる。

 だから、敵として出会っても距離が遠いと、敵に後回しでいいと思われるのだ。

 そこで、敢えて遠距離技を覚えることにより相手の不意を突く。

 熊は近づかれなければ怖くないなどという不名誉な常識を覆すのだ。

 ワシにできたのだ。パワー、お前ならできる。さあ、練習するぞー。)


(おう。俺様頑張るぜ。)

 2匹は訓練に向かっていった。


 ドルカンコーチ、熱く語っていたなあ。

 熊は近づかれなければ怖くないという、世間の評価が気に入らないのだろうなあ。

 まあ、俺としても遠距離技を教えてくれるのはありがたい。

 パワーもコーチの影響かすっかり体育会系のノリだなあ。

 敬語を全然使っていないけど、コーチも気にしてないみたいだからいいか。

 そもそも熊の世界に敬語なんかないか。


 俺はパワーの訓練を引き続いて見ている。

 好相性技ではないため、さすがのパワーも習得には苦戦をしていた。

 コーチの怒鳴り声が聞こえるが、パワーは必死に頑張っている。

 パワー、がんばれ。

 俺は必死に努力しているパワーの姿を見て、心の中で応援を続けた。


 そんなことをしているうちに、ご主人様がやってきた。

 リーザはガルガンのところに置いてきたみたいだ。

 俺は、ご主人様に現状を報告した。


「さすが、パワーは覚えが早いわね。

 しかも、ウルが希望してた遠距離技まで教えてもらえるなんてラッキーじゃない。

 パワーは大丈夫そうね。」


(教えてもらう技は1つの予定でしたが、2つも教えてもらって良かったのでしょうか?)

 俺は不安もあったので聞いてみた。


「堂々とは言えないけど、訓練を依頼した予定時間を超過しなければ大丈夫よ。

 ウルの時もサンダーとトリプルスラッシュの2つの予定だったけど、時間内だったからホールドも教えてもらったんだし。」

 ご主人様は、少しだけパワーの様子を見ると、ガルガンの方へ戻っていった。

 俺もご主人様の返事を聞いて安心した。


 コーチの指導とパワーの必死の練習の成果だろう。

 大分苦戦はしたが、はじめてパワーの体から衝撃波が出た。

 まだ、両腕を揃えて前に伸ばさないとうまく力をコントロールできないようだが、それでもちゃんと衝撃波を出せたのはすごい。

 練習すればいずれドルカンコーチのように、腕を振り下ろして攻撃しながら衝撃波も出したりもできるようになるのだろう。

 これは、凄い技を教えてもらった。


 後から聞いた話だが、コーチのように自由自在に衝撃波を出すには★4レベルの熟練度が要るようだ。

 とりあえず、パワーが★2レベルの両手を前に出しながら打てるようになっただけでも十分だと言えるのだが。


 ガルガンも無事スピードを習得したようだ。さすがに2つ目を覚える時間はなかったらしい。


 今日の訓練で全員が遠距離技を習得できたし、技のレパートリーも広がった。

 次は、依頼をこなしして資金を貯めつつ、経験を積まないといけないな。

モンスターデータ


ウル

 ★2ウルフ

 マスター:なし

 コスト:150(+35)

 習得技:サンダー・ダブルスラッシュ・ホールド


リーザ

 ★2イーグル

 マスター:レンディール

 コスト:12

 習得技:ウィンドショット・ヒーリング・岩石落とし


ガルガン

 ★2サーベルタイガー

 マスター:レンディール

 コスト:16

 習得技:ファイア・スピードNEW


パワー

 ★2ブラックベア

 マスター:ウル

 コスト:35

 習得技:ベアハッグ・ストレングスNEW・インパルスNEW


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