第13話 プレイヤーを見つけた
『午後11時59分までに、プレイヤーを見つけてください』
画面に表示された文字を、俺は何度も読み返した。プレイヤーを見つける。そんなことを言われても、俺には何を探せばいいのか分からない。そもそも、プレイヤーが本当に存在するのなら、そいつは俺のすぐ近くにいると表示されていた。だったら、この部屋のどこかにいるはずだ。
俺は部屋を見回した。ソファ、テーブル、テレビ、カーテン、棚。いつも見ているものばかりだ。壁も床も天井も変わっていない。隠れられるような場所もない。それでも、プレイヤーがいるというなら、どこかに何かがあるはずだった。
「プレイヤーを見つけるって、どうすればいいんだよ」
テレビには何も表示されない。俺は仕方なく部屋の中を調べ始めた。棚を開け、引き出しを確認し、テレビの裏まで見た。何もない。スマホも確認したが、知らない番号から新しいメッセージは届いていなかった。
午後九時を過ぎた。時間だけが減っていく。俺は焦っていた。もし見つけられなかったら、本当にゲームオーバーになるのか。死ぬのか。それとも、またセーブポイントに戻されるのか。どちらにしても、今の自分が消えることだけは確かだった。
そのとき、テレビが勝手についた。画面には、部屋の映像が映っていた。
「……これ、今の部屋?」
映っているのは、間違いなく俺の部屋だった。けれど、画面の中には俺がいない。代わりに、部屋の中央に白い四角形が表示されている。
『プレイヤー視点』
俺は画面に近づいた。映像が動いた。ゆっくりと視点が右へ向く。俺もつられて右を見る。何もない。再び画面が動く。今度は左。俺も左を見る。何もない。
「どこだよ……」
画面の中の視点が、俺の後ろへ向いた。そこには何もなかった。けれど、画面の端に小さな文字が表示されている。
『視点固定』
俺はその意味を考えた。プレイヤーは、この画面を見ている。つまり、俺の目の前にあるテレビを通して、この世界を見ているのかもしれない。
そう考えた瞬間、背中に寒気が走った。俺はゆっくりとテレビを見る。画面には、俺の姿が映っていた。
さっきまでいなかったはずの俺が、画面の中に立っている。
そして、画面の中の俺は、こちらを見ている。
俺は動いていない。なのに、画面の中の俺だけが動いた。右手を上げる。俺も右手を上げようとした。しかし、俺の手は動かなかった。
画面の中の俺が、笑った。
「……誰だ、お前」
画面の中の俺は答えない。代わりに、テレビに文字が表示された。
『プレイヤーを確認しました』
俺は息を呑んだ。
『対象を選択してください』
画面の中に二つの名前が表示される。
『俺』
『プレイヤー』
俺は意味が分からなかった。
「どっちが俺なんだよ」
画面の中の俺が、ゆっくりとこちらを指差した。その瞬間、スマホが鳴った。メッセージが届いた。
『正解です』
俺は画面を見た。
『プレイヤーは、あなたです』
頭が混乱する。今まで俺を操作していた存在を探していた。でも、その答えが俺自身だという。
テレビの中の俺が、今度は自分自身を指差した。
『あなたが操作している』
そして、もう一つの文字が表示される。
『あなたも操作されている』
俺はその二つの文章を見つめた。意味は分からない。でも、少しずつ分かってきた。俺の中には、二つの存在がいる。一人は、この世界を生きている俺。もう一人は、その俺を操作している存在。そして、その二人は別々の人間ではない。同じ俺の中に存在している。
午後十一時三十七分。残り時間は二十二分だった。テレビの画面に、新しいメッセージが表示された。
『プレイヤーを見つけました』
俺は息を吐いた。これで終わった。そう思った。
しかし、次に表示された文字を見て、俺は固まった。
『次の目的:プレイヤーを操作対象から切り離してください』
俺は画面を見つめたまま、動けなくなった。その瞬間、右手が勝手に動いた。そして、俺の手はテレビの電源ボタンを押した。




