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ブルー インフェルノ メテオーラ 蒼い業火に焼かれた魔女は守護天使と転生する  作者: 暁月シナツ


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21.三人の悪党2

 目の前には、喉元を切られたひょろ長の男が血だまりを作って倒れている。ほんのわずかに、胸郭が動き、ゴヒュ、ゴヒュっと血を吐き出している。

 まだ、死んでいない。

 メリッサは男のそばに膝をつき、魔法を展開した。

「治癒の光。創傷治癒、循環動態回復、換気機能回復、血液循環量補完」

 緑色の光がメリッサと倒れた男を包む。星の光のような粒子がパチパチと弾け飛んだ。

 魔力を放出するその蒼色の瞳には、夜空の星のようなきらめきが浮かび上がっている。

 男の傷は塞がり、途切れそうだった呼吸は寝息に変わっていった。

「うまくいったみたいです。死なれたら寝覚めが悪いですからね」


「そんな治癒魔法見たことがないぞ」

 コウモリ男が攻撃するのも忘れて、あっけにとられている。今、メリッサが使ったのは通常の治癒魔法ではないからだ。

「魔女の秘密を見た奴は、絶対に逃がさない」

 メリッサは空中にいるコウモリ男を睨みつけた。 

「小娘が!」

 コウモリ男は、風魔法の斬撃を飛ばしてくる。メリッサは素早く防御魔法を展開した。

 防御壁によって斬撃がはじけ飛ぶ。コウモリ男は旋回しながら斬撃を連打した。

「狙いにくい」


 家を壊すことにトラウマがあるメリッサは、市街地戦で攻撃魔法を出せずにいた。このまま防戦一方では埒が明かない。

「街が壊れないように結界を張ったから、好きなだけやるといい」

「いつの間にそんな高度な魔法を使っていたんですか」

 まるで心を読まれたかのように、必要な魔法が用意されていた。彼の魔力の出力がまったく感じ取れないうちに、魔法展開されていたことにも驚く。よく周囲を観察すると、確かに自分たちを囲んで十数メートルの立方体に結界が張られている。


「模擬戦以外での対人戦は初めてなのですが、やってみます」

「奴は魔法の展開が遅いから、実践練習にはちょうどいいんじゃないか」

「そうですね」

「お前等、俺をバカにするな!」

 メリッサは、右手をコウモリ男に向けてかざした。今日戦った怪鳥より動きも遅い。捕まえるのは簡単そうだ。

「風よ吹き荒れよ」

 風魔法によって、コウモリ男の周囲にだけ暴風が吹き荒れた。

 コウモリ男は飛行魔法のバランスを崩した。攻撃ではなく暴風に攫われるのは想定外だったようだ。


「捕獲魔法。籠目(かごめ)

 風に巻き上げられ、体勢を立て直そうとしたコウモリ男の体を、光の球体が追跡する。光の移動速度は早い。光は籠の目に形状を変え男を捕らえた。

「くそっ」

 籠の中に入れられた男は、浮遊力をなくし自重によってそのまま地上に落下した。

 ドベシャ。

 捕獲魔法の籠は無傷だが、中の男は落下の衝撃をもろに食らってうめき声を上げている。メリッサは籠に歩み寄り、中のコウモリ男に話しかけた。


「誰の指金ですか?」

「言うわけないだろ!って魔物の狩りじゃねーんだよ、人に捕獲魔法使うやつがあるか!」

「攻撃魔法でしか戦ってはいけないというルールはありませんよね。これでも気を使って魔法素材を傷つけないように捕獲するための魔法を使ってあげたんですよ」

「落ちた衝撃は普通にあったぞ!」

「そこは少し痛い目みてもらうように、カスタマイズしておきました」

 コウモリ男は鼻がつぶれて、鼻血を垂れ流している。顔貌がコウモリにより近くなっていることに気が付き、メリッサは思わず噴き出した。

「何を笑っていやがる」

「なにも、ふふっ」


 様子をみていたセスランが、メリッサの作った籠をまじまじと見た。 

「魔女殿、よくできた魔法だ。だが、このまま籠に捕らえておいても、こいつは口を割らなさそうだ。少し魔法の練習をかねてやってみないか?」

 メリッサの耳元で、セスランがある魔法を小声で伝える。

「それは、面白そうです」

 メリッサは光の籠に手をかざし、魔法を展開する。

「温度上昇、湿度固定」

 籠が一瞬赤色に光った。


「焼き殺さないように、空気だけ温めるんだ。光の籠を熱源に変えるイメージをしてごらん」

 メリッサの肩にセスランの手がふれて魔力を流し感覚を誘導する。すると脳裏に雷の魔力が光に熱を発生させて温まるイメージが視えた。さらに魔力の調整をする。想像力が魔法の要だ。

「うわっなんだ!熱い!」

 コウモリ男が座り込み、襟元のボタンを外し始めた。


「上手くいったみたいです!サウナの完成ですね!」

 新しい魔法が出来るようになって、メリッサは飛び跳ねた。

「ふふっ」

 彼は口元を押さえて、笑っている。

 メリッサは子どもっぽいことをしてしまったと気づき、顔を真っ赤にした。

 すると、彼は優しく微笑んだ。

「よくやった。合格をあげよう」

 その言葉と表情が、メリッサの胸の中で何か懐かしさを感じさせる。ふいにセスランが両腕を伸ばし、メリッサのローブのフードを頭にかぶせた。


 彼は、視線を外しパチンと指を鳴らす。

「入っていいぞ」

 周囲に張っていた結界が解け、倒れこむ悪党たちの向こう側に、アレイと騎士団が現れた。

「待ちくたびれたぞ。で、こいつ等をやったのは魔女殿の方だな」

 魔法騎士団の服を着たアレイが、一瞥してそう言った。

「なぜですか?」

 含みを持つ彼の言い方が気になった。

「いやセスだったら、五体満足では残ってな……。いや何でもない気にするな。俺の洞察力でわかったんだよ」

「何ですかそれ」


 メリッサの背後で、相棒の魔法術師が睨みつけていることにアレイは気づいて、話題を変えた。

「悪党どもはこっちで連れてくぜ。あの籠の中に入ってる奴はどうする?干からびそうだが?」

 魔法騎士団の騎士達が、ひょろ長の男と筋肉男を捕らえていた。街の人たちは避難したのだろう、防衛線のロープが張られている。コウモリ男はまだサウナに入ったままだった。

「誰の指金か吐いたら水をあげると取引してみてください」

「なんか地味に嫌な拷問だよな」

「体を傷つけたりするのよりは、マシじゃないですか」

「耳が痛いなー。俺たちはそういうことするのが仕事だったりするんだけど」

 コウモリ男は暑さに耐えかねて、すでにパンツ一枚の姿で倒れていた。


「恥ずかしいですね」

「魔女殿は見ない方がいい」

「恥ずかしい目に合うという拷問まで付与されてるのなコレ。きっついなー」

 結局コウモリ男は水を餌につったら、すぐに誰の指金か吐いたのだ。籠から出されたコウモリ男は水魔法をたっぷりくらい、「整った」状態で騎士団に連行されて行った。

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