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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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五十二頁    天使 陸   『恋人』

 五十二頁

 

 天使 陸

 

『恋人』

 

 佑羽は、恵理奈ちゃんの事しか見えていなかった。

 

 佑羽がした事は、みんなを危険に晒して、数ある可能性を無視した策だったんだ。

 

 それでも、みんな生還して、そして、恵理奈ちゃんの殺人衝動は潰えた様に思う。何故かというと、あれ以来、誰からも心の声が聴こえなくなった。きっともう必要が無いから、その力は消えたんだ。みんなが居たから、ハッピーエンドで終われたんだ。

 

 神様に感謝です。キュンです。使い方合ってるかな?

 

 せっかくみんなと仲良くなったのだから、一度しかない青春を謳歌しよう! 誰かをカフェにでも誘ってみよう! 放課後、猫宮さんが一人で居たので、声を掛けてみた。

 

「あっ、猫宮さん? ちょっと付き合ってくれないかな?」

 

 猫宮さんは、眉間に皺を寄せながら応えた。

 

「はっ? 付き合うだと? 何を言っている? 猫の想い人は女神だと別荘に居たお前なら分かっているだろ? そして、彼氏が居るからと言われ玉砕した事を知っているだろ? なんなんだよお前? 傷心の猫をからかっているか?」

 

 んっ? 何か誤解されてるな……付き合ってって佑羽が言った事を、告白されたと勘違いしているのかな? そんなんじゃ無いから、怒らないで欲しいなぁなんて、えへっ……

 

「ち、違うよ……ちょっと、二人で喫茶店にでも行ってお喋りしたいなぁなんて……思っただけで……」

 

「二人きりになりたいだと? はぁ……そういうの困るんだよ」

 

 あれ? まだ勘違いしてる? この人、どうやって言ったら誤解が解ける仕組みになってるの?

 

「ゆ、佑羽はただ……」

 

「はっ? まだ言うか? はっきりと言ってやるんだよ。お前の様な何の魅力も無い奴と付き合うくらいなら、誰とも付き合わない方がまだマシなんだよ‼︎ 自分の価値を見誤るんじゃ無いんだよ」

 

 えぇぇぇぇぇッ⁉︎ そこまで言われる⁉︎ ゆ、佑羽は何でこんなに嫌われてるの……

 

(話すか? ウズウズするんだよ。でも、わんちゃんに言うの止められたしな)

 

 へっ? 何今の?

 

「まさか……心の声……?」

 

 ヤバッ、声に出しちゃった。

 

「はぁっ? 天羽お前、変な宗教にでもはまっているか?」

 

 うわぁ、聞かれてた。

 

「ち、違うの! そういうのじゃ無くて、えへっ……?」

 

「気味の悪い女なんだよ」

 

 そこまで言うか⁉︎ ってか、さっきのは何⁉︎

 

(ヤバいんだよコイツ。女神のお気に入りだから嫉妬して冷たく接していたけど、もしかして後ろから刺してきたりするタイプの狂人なのではないか? ……もうちょっと、優しくした方が良いのか……?)

 

 ちがぁぁぁぁぁアッ‼︎ ほ、本当違うの‼︎ あ、でもっ……それで優しくしてくれるのなら、狂人認定欲しいかも……

 

「ゆ、佑羽にも優しくしてぇぇぇぇぇ⁉︎ じ、じゃないと、ゆ、佑羽、おかしく、お、おかしくなっちゃうかもぉ⁉︎」

 

 こ、こんな感じでどうだ?

 

(ヒ、ヒィィィイッ‼︎ な、なんなんだよコイツ⁉︎ まともだと思ってたのに……周りに居る奴らの中で唯一まともな奴だと思っていたのに‼︎ こ、怖っ……)

 

 めっちゃ心象下げちゃった……でも、これで良かったんだよね⁉︎

 

「はっ、ハハッ、じ、冗談なんだよ? 猫は、天羽と、つ、付き合うんだよ……」

 

 はっ? ど、どういう意味で?

 

「い、良いの? じゃあ……ちょっと付き合ってもらおうかな?」

 

 カフェにね?

 

(はぁ……流れで天羽と付き合う事になってしまった。猫は何をしているか? でも、プラスに考える事も出来るんだよ! 女神には彼氏が居る。そして、この女は女神にとって特別な存在……その女と猫が付き合っていれば、女神の注目を引ける。なかなか、悪い手では無いんだよ)

 

 ちょ、ちょ、えぇぇぇぇぇえっ⁉︎ 交際する事になってるんだけど⁉︎ そんなつもり無いんだけど⁉︎ しかも、めちゃくちゃ不純な動機で受け入れてるじゃ無いか⁉︎

 

「まぁ、仲良くしていこう」

 

 猫宮さんが右手を差し出して来た。

 

 こ、これ、断ったらどうなる⁉︎ 印象悪い? で、でも! そんなつもりじゃ無かったから……

 

 ………………

 

(何だコイツ? 自分から告白して来た癖に、やたらと間を空けるんだよ)

 

 だから違うんだって⁉︎ で、でも、ど、どうすれば⁉︎

 

(兎咲のあの件も、謎を解き明かす為にコイツの手を借りたい所なのだけど……)

 

「えっ? 美穂ちゃん……?」

 

「な、何ッ⁉︎ 兎咲⁉︎」

 

 猫宮さんが誰も居ない教室の出入口を凝視した。

 

「え、えへっ……勘違いだった……今日美穂ちゃんは、お休みしてるもんね?」

 

 美穂ちゃんに、何かあったの?

 

「ビビらすなよ⁉︎ 本当、何の取り柄も無い女なんだよ」

 

 そこまで言う⁉︎ ってか、何でまた心の声が聴こえ出したのだろう? 何か危険が迫っていて、それを伝える為に聴こえて来たのかもしれない。

 

「これから、ちょこちょこ会って話してくれたりしてくれるの?」

 

 今この心の声が聴けるという能力が復活した事に、何かしらの意味を感じた。猫宮さん、利用する様で悪いけど、そう導かれているとしか思え無いんだ。

 

(はぁ……初めての恋人が天羽かよ……)

 

 落ち込んでるなぁァァアッ⁉︎ 何かめっちゃ傷付くし! ……まぁ、佑羽も不純な動機で付き合う訳だし文句言え無いけど……

 

「いつでも、猫に頼ってくれば良いんだよ」

 

 へっ? まぁまぁ良い事言ってくれるし。

 

「う、うん。宜しくね?」

 

 あれっ? これって、勘違いから始まった事だけど、佑羽は猫宮さんの気持ち分かってるんだから、正式に恋人同士になったって事になるのかな?

 

「……そうだ天羽よ。お前と付き合ってやる代わりに、休み時間などに猫が女神と話し易い状況を作る様に努めるんだよ」

 

「へっ?」

 

 それはあまりにも、交際相手の気持ち無視してない?

 

「何を戸惑う? 猫はただ、クラスメイトとの距離を縮めたいだけなんだよ」

 

(その位の得が無いと、コイツと付き合ってやる意味など無いんだよ)

 

 心の声聴こえちゃってますけど?

 

「わ、分かった……」

 

 猫宮さんが帰って行った。お互い好きでも無い相手と、付き合う事になってしまった。

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