6話
ユエは大きな窓を開ける。
涼しい夜風がユエの髪を攫うように流れていた。
「今…この世界は危機に瀕している。世界の均衡が崩れてきているのだ」
「世界の均等が…?」
この世界に生きる、全ての種族の均衡
その均衡が崩れてきているということは、とても大変なこと。
だがイヴはそんな話は初耳だった。
きっと、イヴがいた村の者たちも知らないだろう。
まだ、表立っていない話のようだ。
「この情報はまだ未確認だ。我もつい先ほど聞いた話だからな」
「それで…お不安なのですか?」
それだけじゃないような気がイヴはしていた。
だが、それを無理に聞こうとは思わなかった。
ユエから話してくれるのを待ちたかった。
きっとこの時、自分自身いがつかないうちにユエを誘導していたんだとイヴは思った。
それでも…ずるいかもしれないが、ユエが自分に話してくれれば良いと思っていた。
「……長くなる話だ。それでも聞きたいか?」
「聞かせていただけるのであれば、私は此処にいます」
そう、イヴはにっこりとほほ笑んだ。
その笑みにユエはある女性の面影を感じた。
ドクンッと胸の鼓動が高鳴る。
その鼓動をおさめるのようにふーっと息を吐く。
そして月夜を見ながら、イヴに話し始めた。
過去に出会った、彼女のことを思い出しながら…