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 次の日。ギルドに顔を出したら凄まじい声量で俺の声が呼ばれた。


「アラスター!! アラスター・スカーレット!! 来なさいこっちへ!」

「俺は此処にいる。何事だ、いやほんとに……」


 ものすごい形相で呼ばれるから俺また何かしたかと。してないよな、昨日のでまだ怒ってるのか?


「つまり、なんだ。俺にアルバスの大森林にて、謎の冷気の発生源を探れと」

「そういうことですよ、指名依頼ですから。断れませんよあなたは」

「正確には断ることもできるが、断った場合は保証できないということだろう。断るつもりもない」


 そんな風に受付嬢との戯れを楽しみ、早々に話を切り上げる。冒険者仲間から何かこう……よく分からない視線を受けながら、ギルドの外に歩き出した。


「ようアラスター! まだボロ布被ってんだなお前!」


 嘲るような声色。あぁ、うんざりするほど聞いた声だ……


「これはボロ布じゃないと、何度言えば分かるんだ……正真正銘の装備だ、ダンジョン産のものだよ」

「そんなもんがかぁ? このビリー様の鎧の方がよっぽどいいもん使ってるように見えるぜ」


 こいつ、そんな名前だったのか。鬱陶しいことしか覚えていなかったから、忘れていたぞ……しかし、ふむ……明らかに防具にヒビが入っている。


「そのライトアーマー、そろそろまずいぞ。あと何度か防げるか分からん」

「あ? うるせぇな。まだ使えんだろ」

「道具というものは寿命があるものだ、適宜買い換えろ。もしくはよりいいもの見つけろ……まぁ、お前にそれが分かればの話だが」


 絶対余計なこと言ったよな今。口が軽いんだよ昔から。


「てめっ……ちっ、混ざりもんの血のくせしてよ」

「それでもお前よりは強い」

「うるせー! あーあ、どこにでも言っちまえよ!!」


 そう言い、肩をいからせて去っていった。

 ほんとに何だこいつ……絡んできて、勝手にどっか行ったぞ。


「どこにも変わってるやつもいるんだなぁ……」


 俺も相当だとは思うけど、な。こんなにとなると……ちょっと心配になる。

 全く、なんだってこんな変わり者が多いんだ。


 ……何やら騒がしくなっているギルドを尻目に、ギルドを後にする。面倒事はささっと終わらせてしまおう。


─────────────────────


「しかし、謎の冷気……? そんなもの……ただ調子が悪かっただけじゃないのか? 風邪気味とかそういうのだろ、きっと」


 体調が悪いことなんてあることだろうに。そんなときは宿屋とか、自分の家で休むほうが先決だっての、無理するなほんとに


「……む、いるな」


 がさりと草むらが揺れ、間髪入れずに亜人型の魔物が勢い良く飛び出してきた。まぁ、ここらの亜人型なんてものは……ゴブリンぐらいだろう。


「初手で狩る……!」

「グギャッ!?」


 抜刀から、刀を振るうまでのプロセスを、限りなく早く、無駄なく行う。

 不意討ちじみたそれを、ゴブリンは避けられるわけもなく、物言わぬ肉の塊となって地面に倒れた。

 

 これが、多分戦闘の最適解。それは一撃で首を斬り落とすこと。首なくして生きて居られる魔物はそう多くない。最もアンデッド系列はそうもいかないが……

 まぁ、大抵はこれで即死する。


「しかし……手持ちの武器もない。ドロップには期待できない……む」


 よく見れば、ゴブリンの腕に見慣れない傷が。引っ掻いたようなものではなく、なんというか……


「これは、凍傷か……? こんな森の中で?」


 ここ、アルバスの大森林に出現する魔物は確か、獣のような種に、出るにしても小鬼ども。ゴブリンのような低級の魔物の筈。

 氷の魔法を使う魔物の出現は、記憶が正しければなかったはず……


「……明らかに。異変なのか……異変かぁ……」


 これが体調不良の思い過ごしであってほしかった。生態系がどうとか、そういう意味で……済ますことができればそれで終わりだったんだけどなぁ……


「……しかし、奴らに償わせるつもりで、こうして冒険者になって、腕を磨いていたのに……いつからお人好しになったんだろうな」


 俺が混ざり者……遠い先祖に魔族、もしくはそれに連なるものがいると分かっても、差別しない奴らもいた。けど、魔力ってのは恐ろしいもんだ。

 子供でも、掌を向けて集中すれば……ボン! それだけでひどい火傷を負わせる。


 実際、それで恐れられて。家族を、皆……


「──いかん。今は、考えるな。後でいくらでも考えられることだ」


 両頬を強めに叩き、思考をリセットする。こういうのは思い出すとキリがないと、最近になって思い知った。


 さて、今は調査だ。意識を切り替えろ……切り替えるんだよ


「ふぅ……氷の魔法を使う魔物の特異発生(イレギュラー)か、それとも……隠れ住んでる血族か……」


 どっちにしろ、碌なことになりはしないだろう。血族なら、まぁ話し合いはできるだろうが……あまり同族に会う機会がないから、何が琴線に触れるかわからない。どちらにせよやはり慎重にいかなければ……


─────────────────────


「……クソ、冷えるな……」


 探せど探せど、痕跡はなかなか見つからず。日も少しずつ落ちてきている、これは日を跨ぐか……? 


「……いや、よくよく考えたらこのだだっ広い森の調査をささっと……? ささっと終わるわけないだろうが」


 この広さだぞ。なんで1人で……それもギルドの狙いかもしれんな。血族が死のうが別にどうでも良いんだろうさ。


「同じ命でも、殺し合うんだから……化け物同士がぶつかろうが、人間にはどうでもいいか」


 同じ種で殺し合うのは人間だけじゃないと、分かってはいる。俺も人間だからか。それが露悪的に思えるんだろうか。


「どうだっていいか、そんなこと……」


 思考を斬り捨てる。今考えたって無駄なもんは無駄だ。たぶん。それなら歩いてしまおう。

 少しでも依頼を進めることが優先だろう、それに……


「一人には慣れてるからな」


 一人でいることには、ずいぶんと……慣れてしまったものだ



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