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夢を見た。自らの業の夢を。肉の焼ける匂いを。炎に焼かれる友を。
こちらに向けて、手を伸ばして事切れた弟を。逃げろと俺を突き飛ばした父が、力なく倒れる夢を。の
目の前で母が、物言わぬ肉の塊に変わる姿を。
そして、その鬼畜の所業をやってのけたそいつは、こちらに向き直り───
「……朝、か」
そこで、パチリと目が覚める。包まっていた毛布を脱ぎ、体を伸ばして立ち上がった。しかし、久しぶりに嫌な夢を見たものだ。
「この夢を見るときは、決まって面倒事に巻き込まれる時だが……まぁいい、どっちにせよ逃れられんことだ」
愛用している黒い外套を羽織り、赤い髪を隠しながら討伐対象の首を入れたボロ袋を肩に背負う。魔物の討伐証明の為にやっていることだが、流石にそろそろ洗わなければまずそうだ。
血が滴る上に、とてもひどい匂いが漂っている。
「……まぁ、いいか」
まずはクエストを終わらせることを優先。話はそれからだ。
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ギルドに着いたが、普段ならめちゃくちゃに煩いここに長いしたくない。さっさと換金したいところだったが、どうも……
「というわけでだ。頼まれてた魔狼の討伐、終えてきたぞ」
「カウンターに生首を直接乗せないでくださいます?」
この人は細かいことを気にする。
証明するにはこれが手っ取り早いだろ……あ、誰か吐きに行ったな、あれは新人か。
「済まない、以後は気をつける」
「そう言っていつも改善しませんよねあなた!! カードを出してまずは! 何体倒したとかもこっちで見れますからそれで!! いいですかアラスターさん、口で言うのは単純ですが気をつけるって言ったんなら──」
「それで、いくらになるんだったか。五頭は狩ったぞ」
俺がそう言うと同時に、何かが切れる音を聞いた気がする。
そして、銀貨を叩きつけられた……顔に。この場合叩きつけると言うよりは、投げつけるのほうが正しいか。
「痛いだろ」
「痛くなければ覚えないでしょ、アンタは!!」
そんな怒るか……? まぁ、報酬受け取ったなら文句はない……と思った時、後頭部に何か投げつけられた。
「これ置いてくんじゃないわよ! 誰が掃除すると思ってんのよ!」
「済まない」
フードを被っていてよかった、後頭部を汚れたままにしたくない。しかし後で洗わなければ……
投げつけられた生首を袋に押し込み、ギルドを出る。間違ってはないから何も言い返さないし、どうだっていい。
反応を面白がってるとこはあるのだろうが。さて、生首は……まぁ、魔物素材換金所に持っていけばいいか。
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「親父よ。魔狼の首だ、いくらになる」
「あんちゃんよ、生首じゃ何ともならんよ。それもう腐り始めてるじゃろが」
む、やはりだめだったか。何か匂い始めてたから嫌な予感してたんだが……仕方ないなそれは。
「いつものようにここで『灼いて』いいか?」
「構わんよ、処分する金も浮く」
店主の親父の承諾を得てから、掌からの焔で魔狼の首を包み込んで灰にする。あ、牙とか取っておけばよかったか……
「しっかしほんと、おめぇの焔は見事なもんだな」
「誇るもんでもない。生まれたときから当たり前のように扱えたものだから」
それに、この焔のせいで。家族は死んだようなものだ。愚かなあの日を、後悔しないことはない。
「竜族の血の血族か……珍しいもん、受け継いじまったな」
「ほんとにね。ほかの血族には会えちゃいないってぐらい珍しいのに。なんで俺なんだろ」
そう言いながら、換金所を後にする。俺の血を良く思わないやつなんて、この世界にはゴロゴロいる。
血族排斥思想の持ち主なんて、ちょっと歩けばすぐに出会ってしまう。
化け物の血、なんて言われるのも、もう慣れてしまった。
「……はぁ、やめだ。暗くなってんじゃない」
結局、俺は何時までも愚かさと、過去を振り切れないのだ。家族を殺した奴を見つけて、償わせる。まずはそこからだ。
そのために、俺……アラスター・スカーレットは生きているんだから。




