異常事象対策局――内部潜入
暗闇に包まれた施設内。
銃声と無線が交錯し、酒名コードの崩壊が静かに進行する。
建物内に侵入したルクジムは、スーマを片手に目的の貨物エレベーターを目指していた。
暗闇に包まれた施設内は、外の世界とは明らかに異なる空気を纏っていた。
その時――
「タタタタッ」「パンパンパンッ」
奥から銃声が響く。
明かりのない建物の奥で、何かが起きていた。
「なんだ!何が起きてる?」
ルクジムの声に、スーマが冷静に応じる。
「慌てるな。ジョーは大丈夫だ。」
「それより今の銃声……セキュリティを解除したのは、奥にいる“奴ら”かもしれねぇ。」
一呼吸置いて、スーマが言う。
「行ってみよう。」
ルクジムは黙って頷き、銃声の方へと足を向ける。
途中、倒れた兵士の亡骸が転がっていた。
その手には無線機が握られている。
「……ウォッカリーダー!こちらウィスキー!黒い獣だ!バーボンもジンも……もう駄目だっ……!」
無線から、緊迫した声が響く。
ルクジムとスーマは、状況の確認のため奥へと進む。
「こちらウォッカ!各員応答しろ!」
通路の影で、一人の男が無線に向かって叫んでいた。
「……こちらウィスキー。ワインもリキュールも応答なし!見張りに着いたブランデーも連絡が付きません……」
男は無線を離し、低く呟く。
「どうなってんだ、ここは……人っ子一人いないのに、変な化け物がウロウロしてやがる……」
その時――
「……隊長、こちらウィスキー!KS-1が通じません!うわー!!……」
「おい!ウィスキー!ウィスキー!返事をしろ‼」
無線は、沈黙のまま切れていた。
施設内は、すでに“何か”に侵食されていた。
男の背後で、黒い影が揺らめいた。
陽炎のように歪む空気の中から、漆黒の獣が姿を現す。
ブラックドック。
「しまった‼」
男が叫ぶ間もなく、獣が地を蹴った。
黒い稲妻のような軌道で、彼に向かって飛び掛かる。
「ギャワワーンッ!」
次の瞬間、ブラックドックの巨体が宙を舞い、施設の壁に激突した。
鈍い衝撃音が響き、コンクリートの粉塵が舞い上がる。
「……‼」
粉塵の中、黒煙を纏った拳を振り下ろした姿勢のまま、ひとりの青年が立っていた。
大柄な体躯から吐き出される荒い息が白く揺れ、その眼光は闇の奥で獣のように光っている。
「フェンス内雑木林 ― 悲しき運命」へ続く。




