ロンドン ― 追跡する視線
星が瞬き、夜が日付を越える。 ロンドンの冷たい空気の中、三人の影が静かに歩む。
だが、その背後には、鋼の瞳が静かに追っていた。
夜が日付を越えようとし、星が静かに瞬いていた。
ロンドンの空気は冷たく、しかしどこか懐かしい。
だが、故郷の風を感じる間もなく、空気がわずかに動いた。
「ジョー、誰かに……つけられてる。」
ルクジムが低く、静かに告げる。
ジョーが周囲を見渡しながら応じる。
「たしかに気配を感じる。だが、相当な手練れだな。普通の人間じゃ気づかないはずだ。」
スーマが小声で割り込む。
「音響判定した結果、誰もいないはずのこんな夜更けの裏通りで、一定間隔を保ってついてくる影があるな。」
三人は、古い石畳のトンネルに近づいた瞬間――
……空気が揺れた。
次の瞬間、影は消えた。
石畳の路地に残ったのは、わずかな残響だけ。
――そして、足音……
その直後、静かな足音とともに一人の人影が現れる。
「……見失った。気づかれたか? なんて感がいいんだ……」
ミラ・カステリは、トンネルの奥をじっと見つめながら、小さく呟いた。
何かを感じたミラは、トンネルの前から静かに立ち去った。
……
その直後、トンネルの奥――
闇の中で、見えぬ瞳がひとつ、ゆっくりと開かれた。
それは肉眼に映らぬ、意識に突き刺さる“視線”だった。
空間の奥に潜む“視線”が、確かに何かを見ていた。
「……匂いを断て。道を変える。ノクターン古書店だ。」
ルクジムが小さく呟く。
ジョーは黙って頷き、二人は再び風のように姿を消した。
空気がわずかに揺れ、残されたのは気配の名残だけ。
……
ミラの端末が通知を発する。
「……スコットランドヤードへ引き継ぎ。本件より即時離脱し、アイスランドへ向かえ……」
怪訝そうに通知を見つめたミラは、そっと端末を切った。
「ここまで来て……そんなわけにはいかない。」
そう呟くと、彼女は走り出した。
アレクサンドロが殺害された数日後、ロンドンでは連続して不可解な事件が発生していた。
――地下鉄4番線での列車事故。
――廃教会の爆破。
――港湾倉庫に残された、跡形もない人影。
どの現場にも焼け焦げたサークルと、中央に“目”の痕跡。
事件は未解決のまま、ロンドン異常事象対策局は「同一犯による無差別テロ」として処理し、表向きは幕を閉じた。
スコットランドヤードは今もなお、真相を追い続けている。
ミラ・カステリは、一連の事件を思い返しながら、ある現場へと向かっていた。
「――答えは、この街にある。」
今回はep.11 古書店「ノクターン」 ― 決意の夜明けにリンクしたお話になっています。
「ノクターン古書店―出会いと再会」へ続く




