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記憶から抹消された同輩の存在

*この小説はフィクションです。

 美鶴と司が隠れ住処アジトに戻ると、二人は真っ先にある場所へと向かった。

 着いた場所は安置室の前。ここは亡くなった者の遺体を一時的に保管する場所。ここには流の遺体がある。現在は薄っすらと透けているが、確かに存在している。状態を確かめようと二人は躊躇なく入っていった。

 確認することもなく、二人は驚きを見せる。あるはずの流の遺体がないのだ。透けている状態から完全に消え去ってしまったのだろうか。

 しっかりと確認しようとした時だった。探が現れた。

「どうしたの? ここには誰もいないよ」

 探が不思議そうに尋ねると、二人は顔を合わせて唖然とした様子を見せる。

 誰もいないはずがない。亡くなってはいるものの流の遺体がある。それは阻止する者(ブロッカー)、全員が知っている。当然、探も知っている。

 何かがおかしいと思った二人は口を閉ざしたまま、辺りを見渡す。

 安置台には何もない。辺りも変わった様子がない。

 ひんやりとした空気に探が怯えた表情を浮かべる。みんながいる場所に行こうと二人に声をかけようとしたときだった。

「探、ここにいたのか。癒維さんが呼んでる。俺はあとで行くから先に行っててくれないか」

 隼人が顔を出し、探に声をかけた。

「わ、分かった」

 気まずそうに答え、その場を出ていこうとした。思わず振り返る。不安そうな眼差しで司と美鶴を見やる。

 美鶴が大丈夫よと口にすると、探は出ていった。


 探と入れ替わるようにその場に留まった隼人は二人に真剣な表情を向けた。

「あの、ここに流さんって人がいたんですよね。よく覚えていないんですが、何かあったのかと思って様子を見に来たんです」

 隼人の言葉に二人は目を見開く。

「少し前に司さんと俺で二丈財閥の秘密が隠された場所に行きましたよね。その後のことはぼんやりとしか覚えていないんですが、自分が何かを調べていたみたいなんです。その時の書き留めかもしれません」

 隼人は言葉を続け、状況を伝える。二人に紙を見せた。美鶴が受け取り、確認をする。紙には住所とその場所で起こった災害が書かれていた。

「ありがとう。私たちは少し休んでから癒維ちゃんたちに会うわ。怪我は大丈夫と伝えておいてくれるかしら」

「分かりました。またあとで伝えたいことがあるので、その時に話します」

 言葉を残して去っていった。隼人が立ち去る間際、美鶴は隼人にありがとうと感謝の言葉をかけた。


 二人は何も喋らず、思い詰めたように立ち尽くしている。

 数分後、突然どんと物音がした。司が拳で壁を突いた音だった。再び、壁を突こうとしている。美鶴が司の腕を掴んで止めた。

 司の動きは止まったが、司は悔しそうな顔をしている。

「なぜ、忘れたんだ。流は仲間だろ。忘れていいはずがない!」

 司は言葉を強め、再び拳で壁を叩こうとする。咄嗟に美鶴が止めるが、司の力が強く、司の拳が壁についてしまう。

「私たちは覚えている。きっと、流ちゃんの最期の姿を見ていたからよ。覚えている私たちがいるかぎり、まだ希望がある。今は怪我を治して、休んだほうがいいわ」

 美鶴は安心させるように言葉をかけ、司の背中を摩る。今なお、悔しそうな顔をする司。少し落ち着きを取り戻している。

 美鶴に別室に移動するように言われ、司は一度も振り返ることなく美鶴とともに移動した。


 別室にて。美鶴が司の軽い怪我を処置する。

「相当、怪我してるわね。無理をしたんじゃない?」

「このくらい、平気だ」

 美鶴の言葉に司は平然とした様子で答える。司の怪我の状態は酷かった。運が悪ければ、致命傷を負いかねない状態だった。然し、隠れ住処に着く前に一人で歩けるほどまでに回復していた。

 そのため、美鶴の処置は早く終わった。

 ただ、痣などは残っているせいか、痛々しい。

「美鶴さん、ありがとうございます」

 美鶴は唐突の言葉に呆気に取られてしまった。安心してふっと微笑んだ。

「改まってどうしたの? いつものことじゃない」

 美鶴は医療道具を片付けながら、司にちらっと視線を向けた。司は何かを訴えかけるようにどこか遠くを見つめている。

「司ちゃん?」

「美鶴さんが来てくれなかったら、正気を保てなかったと思います。だから、」

 言葉が切れ、司の目から涙があふれる。咄嗟に美鶴が優しく司の肩を摩る。

「無理してたのね。大丈夫よ。あとは私に任せて。ゆっくり休んでなさい」

 美鶴はそう言って、部屋を後にした。


 美鶴はこれからのことを考えた。

 探と隼人は流のことを忘れていた。きっと、他の阻止する者(ブロッカー)も忘れているだろう。

 希望はあると司に伝えても、自分だけではどうすることもできない状況。あの人物に頼るしかないと考えに至った。

「美鶴さん、大丈夫ですか?」

 不意に癒維の声が聞こえ、我に返った。癒維の不安そうな視線が美鶴の視界に入る。

「大丈夫よ。心配かけてごめんね。司ちゃんも大丈夫よ。今は休ませてあげてちょうだい。それよりも隼人くんと話をさせてほしいのだけど、」

「美鶴さん」

 癒維が答えるよりも先に隼人が現れた。隼人は美鶴をまっすぐ見据えている。手には束になった資料らしきものがある。

 美鶴と隼人は今いる場所から離れ、話し合いを始めた。

次話更新は5月14日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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