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思い出の場所で①

*この小説はフィクションです。

 司がいなくなったことに気づく前。司はある場所に向かっていた。

 いつどこで敵に遭遇するか分からない状況の中、能力を使って歩を進めていた。

 司の能力は透明化できること。言い換えれば、姿を消せる。彼らの目を盗み、隠れ住処アジトを抜け出したのだ。

 そのため、すぐに目的地に到着した。

 場所は二丈財閥の秘密に関与している蔵からそれほど遠くない街。

 司は足を止め、辺りを見渡す。

 一〇年以上前、この場所は栄えていた。だが、司と流が災害で被害に遭った時、この街も壊滅的な被害を受けてしまう。

 被害を受ける前は観光地もあったため、多くの人で盛んな街だった。災害によって、地面には亀裂が生じ、建物には所々ひびが入った。補修はされず、そのまま残されている。

 生活が不便になり、人は街から離れていってしまった。

「随分と変わってしまったな」

 司は誰にともなく言葉を漏らす。寂しさを漂わせている街を眺めながら、過去の記憶を思い出し、振り返る。

 不意に記憶がよみがえる。あの頃は、と声をとぎらせた。


 司はある建物の店で物を買おうとしていた。物を手にし、会計しにいこうとする途中、司の耳に話し声が聞こえてきた。

「えー、もうないよ。せっかくの限定品なのに買えないなんて。流が遅いからだよ」

「悪い。けど、それ言ったら梢も寄り道したからじゃないか」

 女性と男性の声だ。二人はある商品を買う予定だったらしい。

 司は会計に向かうのをやめ、持っていた商品を見つめる。

 商品には限定品と書かれている。この店に限定品は一つだけ。司が持っているのが最後だ。司自身も限定品が目的で買いにきた。

 ただ、司の場合は普通には買いにいけない。二丈財閥の人間だからだ。父親と家従の武蔵の目を盗み、上手く来れた。

 司にとって、やっと手に入れた貴重な限定品。司は手放すか悩んだ。

 二人は司と同じくらいに限定品を欲しがっている。

 司の気持ちが揺れ動く。司は方向転換し、男女に近づく。

「あの、これよかったらどうぞ」

 そう言って、手に持っていた限定品を手渡した。男女はとても驚いた表情で固まっている。女性より男性のほうが驚きを見せている。

「いや、受け取れないです。手に入れられなかった俺たちが悪いんです。だから、」

 男性は遠慮して受け取らない。司は男性の言葉を遮って、限定品を押し付けて早々にその場を去っていった。

「あの、ありがとうございます」

 嬉しそうに御礼を口にする女性の声が響いた。


 司は物悲しい気持ちになりつつも、仕方ないと思った。悔しさがにじむ二人の会話を耳にしてしまい、譲りたい気持ちに駆り立てられた。

 結局、何も持たずに店を出た。不意にある人物に見つかってしまう。

「司坊ちゃん、どこに行ってたんですか。総一様に怒られます。早く行きますよ」

 家従の武蔵だ。武蔵は司を目にすると、呼びかけた。司は目を丸くして驚き、その場を逃げ去ろうとした。

「坊ちゃん、分かってますよね?」

 武蔵がきっと睨みつけながら言葉にする。司はやむなく断念し、悲しげに目を伏せた。

「父さんになんて言われるか」

「今回は総一様には黙っておきます。これが欲しかったのでしょう」

 武蔵はにこりと笑い、どこからか司の欲しかった限定品を取り出した。

 司は驚きを隠せない。

「な、なぜそれを」

 司の言葉に武蔵は司坊ちゃんのことはなんでも知ってますと答えた。司は武蔵とともに自宅へと戻っていった。


 一瞬の記憶。司が能力者として流と初めて会った時、流はつらい表情をしていた。

 司は記憶を手繰り寄せ、流との再会を嬉しく思った。だが、口にはしなかった。

 流が覚えていない雰囲気だったからだ。思い返すと、覚えているか聞けばよかったと悔やんだ。

「なぜ、こんなところにいる?」

 司は背後から声をかけられ、咄嗟に後ろを振り向く。そこにはしかめ面の流が立っていた。

 一瞬、時が止まったような雰囲気が漂った。しかめ面の流にぽかんと口をあけたまま立っている司。二人の間に不穏な空気が流れる。

 突然、流が不気味な笑みを浮かべる。

「そうか。わざわざ出向いてきてくれたということか。ならば、」

 流は呟くように言葉を発し、司に襲いかかろうする。即座に司は構えて防御態勢をとる。

「馬鹿か。遅すぎる」

 流の攻撃を受けまいと司が防御しているはずだったが、司の頬から血が滴り落ちた。

「こんなはずじゃないだろ。お前は、」

 司が言葉を続けようとするも流が次の攻撃をしかけてくる。咄嗟に防御している腕に力を入れる。

 耐えきれず、体勢を崩れてしまう。

 流が電光の速さで攻撃をしかける。司は上手く避けきれず、攻撃を受けてしまった。

「なんだそんなものか。強い敵なのかと思えば、弱いのか」

 つまらなそうに呟く流だが、司は余裕を表情を見せている。流の表情が険しくなる。

「なぜだ。なぜ、そんな顔をする」

「ここからだ。お前がその気なら俺だって本気でいかせてもらう。覚悟はできてるんだ。行くぞ」

 次の瞬間、司はすうっと姿を消した。流に攻撃を開始した。

次話更新は4月23日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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