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混じり合った記憶と感情 (千堂 勇輝)

*この小説はフィクションです。


*勇輝は二重人格ではありません。

 俺は知らなかった。俺自身のことも過去のことも全て。だけど、流れてきた記憶で知った。

 最初は疑った。嘘なんじゃないかってさ。

 本当だと思ったのは、あの記憶がよみがえったからかもしれない。

 親父が優しかった頃の記憶。俺がまだ小さかったとき、親父は優しかった。俺の好きなものを喜んで渡してくれたんだ。

 そんな親父がいるはずもないと思った。なぜなら、最近の親父は荒れていたから。

 美鶴さんのところに行き、酒ばかり飲んでいた。所謂、酔っ払いだ。

 俺たちに怒鳴ってばかりで口が悪い。嗚呼、だからか。俺もそういうところが親父に似ているんだと気づいた。

 まぁ、いいか。優しいんだし。


 *

 僕は誰なんだろう。あの時、そう感じた。それなのに、今は違う。なんだか懐かしい気がする。

 ずっといた場所でもあり、帰る場所だと知ったからかな。

 でも、それは危険な場所でもあることを知った。僕が能力者だから居れる場所なんだ。

「勇輝」

 ふと、声をかけられる。振り向くと、探がいた。探はどこか遠い一点を見つめているような気がする。

「勇輝、ここに来られてよかったって思う。辛いことはたくさんあるけど、だからこそ分かり合えると思うんだ」

 突然のことで言葉を失った。そんなふうに思ってるなんて思わなかった。だって、ここに居るってことは僕の知らないところでつらい思いをしてきたはずだから。

「勇輝?」

「ごめん。そんなこと思ってるなんて思わなかったよ」

 笑ってその場をごまかした。


 僕には不思議な力があるらしい。それは、父さんからペンダントを貰った後からだった。

 そのペンダントには母さんらしき女性の顔写真が小さく貼り付けてあった。

 それを父さんは今まで身につけていたんだ。もしかしたら、不思議な力は母さんに関係しているのかもしれない。そう思った。

 いつの間にかペンダントが無くなっていた。それなのに、その能力は消えなかった。どうしてなんだろう。ペンダントがあったからだと思ったのに。

 どう考えても、不思議な力が起こる原因が分からなかった。


 日が何日か経った頃、いやな予感がした。僕の予感が当たった。激しい頭痛が続くようになった。

 それに頭の中に記憶が流れてくることが多くなってきている気がする。

 何か忘れていることがあるような、僕の知らないところで何かが起きていた。

 それは、もしかして僕の知らない出来事なのかもしれない。

 瞬が怪我をしていることが多かった。

 何が起きているんだろう。きっと、知らない間に僕が何かしてしまっているのかな。

 僕以外にいないのだから。

 *


 気づいたら、俺は知らない場所にいた。

 目の前に瞬がいる。それに瞬を見てると、無性に腹が立ってくる。なんだ、この感情は。

 俺は瞬を攻撃した。瞬は弱かった。あの時となんら変わらない。

 俺になんの恨みがあるのか分からないが、攻撃してくる。だから、攻撃をした。勝った。

 そう思っていたら、俺の知らないところで……


 知らない奴がいる。直後、いやな記憶が流れてきた。

 この記憶は……小さい頃の俺と親父か。少しだけ覚えている気がする。

 親父は今と比べると、想像し難いほどに俺に優しかった。ものが欲しいとは言わなくても、何でも与えてくれた。そんな、親父が変わったのはいつくらいだろうか。

 突然、荒ぶった様子を見せた。そうなった経緯が知りたくて、親父の後を追ったこともあった。

 美鶴さんの呑み処の前についた。話を立ち聞きした。親父は酒を飲みながら、俺が知らない母さんの話をしていた。それに俺のことも。

 親父は過去を引き摺っていたんだ。母さんを亡くしても、母さんを愛してるんだ。それはいい。引き摺って悲しむより前を向いたほうが母さんは喜ぶと思う。

 そんなことを思っても、親父には言えない。言ったら、怒鳴る。言わなくても怒鳴ってる。

 俺はいい。みんなにまで怒りをぶつけるのは違う。けど、親父に言ったら、荒々しい言葉を投げられるだけだ。

 だから、親父を放っておいたほうがいいはずなのに、喧嘩を吹っかけられたことが度々あった。

 そんなことを考えていたら、不意にいやな記憶が流れ込んできた。

 親父が死んだ記憶。しかも、目の前の男が、殺しただと? そんなことはないはずだ。親父はまだ……

「お前が、殺した?」

「そうだ」

 男は返事をした。その瞬間、俺の中で感情が膨れ上がるのを感じた。

 思わず、男を攻撃していたんだ。そこでも、ある事が起きた。

 男の記憶が流れてきた。最初は戸惑った。でも、同時に男の感情も流れてきたからか、冷静になれた。今まで何度も経験したから、落ち着いていられたんだ。

 次第に男を助けてやりたいと思うようになった。それなのに……


 突然、男の体が砂のように崩れていった。俺は言った。生きたいなら妹のことを考えろ、と。それでも、止めることができなかった。

 そこで俺は意識を失い、いつの間にか知らない場所にいたんだ。

 美鶴さんたちに不思議な経験をしたことを話した。本当言うと、言うか迷った。男の体が崩れていったなんて普通は信じない。でも、能力者ならあり得ると思い、話した。

 信じてくれるか分からない状況の中で信じると言ってくれたことが良かったと思う。

 もし、信じてくれなかったら、俺はまた……

「勇輝、ぼうっとするなよ。考えたって何も変わらないって」

「は?」

 ふと我に返り、思わず声が出てしまう。目の前の瞬が得意げな顔をしている。

 まだ何か言いたそうにしてるのは気のせいだろうか。まぁ、いい。全て終わったんだ、全て。

「そういえば、天埜流のお別れ会には行くよね? まぁ、強制参加だから」

 瞬の言葉で思い出した。まだ終わってない。流さんにちゃんとお別れしないと。

 全て終わったら、今度は……

「それよりさ、自由に動くことを許可されたら、また腕試ししてくれない? 今度こそ、決着つくから」

「お前は弱いよ」

「は? どの口が言ってんの?」

 俺たちはまた美鶴さんに怒られた。

次話更新は8月27日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

次回が最終話の予定です。その後に完全版の登場人物紹介などを載せようと思っています。

最後までよろしくお願いしますm(._.)m

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