第二話【クレイジーサイコヤンデレ美少女。及川カレン】
「受け止めてッ! 一年分の私の愛をッ! そして私の純潔をッ!!」
そんな掛け声とともにとび込んできた美少女を、黒江はため息をつきながらさらりとかわし、みぞおちにボディーブローを叩き込んだ後、背中に肘鉄を叩き込んだ。
「ノォオォオ! オナカとセナカがメテオストライック!」
少女はなぜか悦びの声を上げながらのた打ち回った。それがこの、彼女の幼なじみかつ、彼女の天敵かつ、オランダ人のハーフで、正真正銘ガチでレズビアンな後輩、及川カレンだった。
「今年はおとなしくしてほしいんだけれど」
黒江は何事もなかったかのように着席して言う。
「私から生き甲斐を奪わないでおいてくだサイ!」
「そんな生き甲斐私にとっては害でしかないのよ。駆除するわよ」
「害虫扱い?!!」
「そんなことないわよ。害虫に失礼でしょ」
「全然フォローになってないデス!」
「当たり前じゃないあんたをフォローするつもりなんてないんだから」
肉体と精神の両方に致命的なダメージを食らいながらも、カレンの瞳は欲望の炎がめらめらと燃えていた。なぜなら初めてあった日から10年間。実に10年間もこのようなやり取りをしてきたのだ。校内ヤンデレランキング殿堂入りは伊達じゃない。
カレンは懐からひとつの小瓶を取り出した。小瓶には[カレン特製マル秘薬]というラベル。あからさまにあやしい。ロクなものではない物であることは確実だ。
「ふふふ、今日の今日こそこの薬で瞳子さんを私のものにグッヘッへ……ってうをぉおい!」
黒江はカレンからその小瓶を奪い取り、それを地面に叩きつけた。
「任務完了」
黒江、すがすがしい、やりきったという顔で着席した。
「ほ、ほわぁあぁあ! 私の特製マル秘薬がぁああぁ!」
カレンはその場に崩れ落ち、搾り出したかのような悲鳴を上げた。
「とにかく。今日は勘弁してよね」
黒江はそんなカレンからまったく眼中にない様子。ひとしきりカレンは悲しみに明け暮れていたが、あることに気がついて驚愕の表情を浮かべた。
「瞳子さん。今日『は』ってどういうことデスか?」
黒江はギクっとした表情でこわばった。
「ま、まさか瞳子さん、誰かにチョコレイトをあげたりなんかしないデスよね?」
「そ、そんなことないわよ!」
カレンは急に鼻をスンスンと鳴らし、黒江のにおいを嗅ぎはじめた。そしてまたも仰天の表情を浮かべた。
「ちょ、ちょちょ、チョコレイトの匂いがするッ! やっぱり! 誰かにチョコレイトをあげるんデスね!」
このカレンの絶叫を聞き、クラス中の男子および女子およびちょうど入ってきた担任の先生の視線が黒江に集まった。緊張感のあふれる沈黙が流れる。しかし、この状況は、何かの甘い香りによって一変することになった。
前作ではブクマ、評価いただき誠にありがとうございました!ものすごく元気と勇気をもらえました。これからも精進するので応援を宜しくお願いします!具体的に言うと評価とブクマとか。評価とブクマとか。あとコメントとか……宜しくお願いします!(ゴリ押し