16話 決着
ファンヌが届かない所をエクセルがカバーしたのだ。
だが……あのルロワーゼの魔力弾は今までのエクセルであれば絶対に打てないはずの威力であった。
「……」
ルロワーゼはぐっと目を細めて、サーブを打ち込む。
あと一点取れば終わる。それはルロワーゼにとっても同じだった。
ルロワーゼは魔力を解放し、移動速度を速め、強力な一打を放つ。
放った球の先にエクセルがいた。エクセルはラケットを振ろうとする。
返されると思ったルロワーゼは身構えるが、その球はエクセルのラケットを通過し、奥にいたファンヌのラケットに吸い込まれる。
「そこ!」
エクセルの対応で一瞬気がそがれたルロワーゼはファンヌの一打を止めることができず、追加得点を許してしまう。
これで同ポイント。本来のルールでは2ポイント以上離さないと勝利とならないが、特別ルールで両校あと1本取った者が勝利となる。
「……」
ルロワーゼは魔力弾を生み出し、ファンヌ達を見据える。
「ファンヌ」
「ええ、エクセル様」
「彼女が始めて感情を見せたな」
「あと1ポイントです。絶対勝ちましょう」
ルロワーゼのサーブ。ファンヌが追いつき、打ち返した。
ファンヌが打ち返した所にはルロワーゼはすでに移動している。
(動きが速くなってる。まだ余力を残していたというの!?)
とんでもない相手が現れたとファンヌは気を引き締める。
ルロワーゼが返した弾をギリギリで受け止めることができた。
しかし攻撃し返すことができない。防戦一方だ。
相手は1人だというのに……この体たらくである。
(エクセル様と一緒だったら負けない!)
ファンヌはルロワーゼの攻撃に必死に食らいつく。
渾身の一撃をファンヌはラケットに込めた。
その後のルロワーゼの動きを察知する。
ルロワーゼは深呼吸をしていた。
(何かくる!)
ファンヌの推測は正しかった。
ただ……判断が遅れた。
ルロワーゼが動きのギアがまだ一段階上がったのだ。まるでギアを外したような、能力を解放したようにも見えた。
それから打ち返された魔法弾は威力、スピードとも申し分ないものだった。
ファンヌは直感的に理解する。
この弾は絶対に返せない。ファンヌと今までのエクセルの共同作業では絶対に返せなかった。
ただ一人違った。
エクセルは魔力弾が弾む先へいち早く移動していた。
そしてまるで刀を振るうようにラケットを縦に振り抜く。
「ヴェイロン様と同じ動き……?」
ルロワーゼがそう呟いた後、彼女の後ろ………セルファート側のコート……ラインギリギリの所にボールは落ちたのだった。
ファンヌもエクセルもルロワーゼもその光景を呆然と見ていた。
そこをただ1人の男が拍手をするように手を叩く。
「我らの敗北か。ふん、たまにはいいだろう」
最後の攻防に静まり帰っていた歓声が第一王子、ヴェイロンの声に広がり高まった。
「……わ、私達の勝ち……なのですか」
「ああ……そうだ」
「エクセル様、あなたはいったい……」
エクセルは首を横に振った。
「交流会の後はすぐにパーティだ。俺達も参加しなくはいけない……行くぞ」
エクセルは足早とコートを出て、コロシアムを後にしてしまう。
1人残されたファンヌはエクセルの背中を見つめていた。
(今日までのエクセル様では絶対返すことのできないあの動き。……もしかして)
ファンヌは無言のまま首を横に振った。
この後は貴族のみが参加できるパーティだ。
ファンヌは生徒会長として気を引き締めることにした。




