10話 誤算
「ティー様、どうしてあのまま逃げてしまったのですか? わかるように説明してください」
「ごめんなさいぃ、ごめんなさいぃ。悪ふざけして火柱とか火の呼吸とかしてたら草花に火がついちゃってぇ!」
ファンヌは生徒会室でティートリアの顎を手で掴み、真顔で問い詰める。
さすがのティートリアも悪いと思ったのか従順だった。
「これであなたにお咎め無しなのが不思議でなりません……」
「え、そんなのティーが王女だからに決まってるじゃないですかぁ、アヒャヒャ」
「あなた全然反省してませんね」
「してます、してます! ファンヌさん、そんな怖い目でみないでくださいぃ」
絶対王政、この国では王の力が絶大だ。
火事を起こしたティートリアは許され、近くにいながら止められなかったファンヌも本来なら大きな処罰の対象となるのだが第二王子エクセルが側にいたことにより厳重注意で特段お咎めなしだった。
ファンヌとしてはありがたかったが……この国の行く末が心配になる始末である。
何度か問い詰めて、ティートリアを解放することにした。
「それよりぃ聴きましたよぉ!」
「何をです」
「エクセルくんにお弁当を作ってきたんですよねぇ! エクセルくん喜んでましたよぉ!」
「それはエクセル様に食べていただくためでしたからね。力を抜くわけにはいきません」
「いや〜〜、ファンヌさんがまさかエクセルくん狙いだっとは驚きですぅ」
「は?」
そんなはずがあるわけがない。
ファンヌがエクセルに弁当を作ったのは策略の果てにあるものであった。
恋愛能爆発のティートリアに物申さねばとファンヌは思考を続ける。
「違いますよ。短期間でテニヌの実力を上げるには栄養管理が必要です。エクセル様は購買で適当にランチを買おうとしていましたからね。生徒会長として体調管理を求めるのは当然です」
「あーー、そういうことですかぁ。ですよねぇ」
ティートリアは納得したような顔をした。
「ヴェイロンくんに婚約破棄されたファンヌさんが同じ顔のエクセルくんに恋愛感情抱くわけないですもんね、アヒャヒャ」
(この女、首だけでなく、その無駄に育った乳も一緒に削ぎ取ってくれる)
ファンヌの断首ゲージが大幅に上昇したことをティートリアは知らない。
用事があると言ってティートリアが出ていき、生徒会室にはファンヌが1人残る。
「エリエスいるのでしょ」
「はい、ここに」
生徒会室の天井裏からタルアート家メイドのエリエスが出てきた。
「この1週間私のことをずっと見ていたわよね」
「まぁ、お嬢様の護衛と諜報が私の仕事ですからねぇ」
「私がエクセル様にお弁当を作る時、こんな感じだったわよね?」
ファンヌは真顔でエリエスに問いた。
“ふっふっふ、どんなメニューであの男を落としてやろうかしら”
“私の料理テクニックで身も心も落としてくれる”
“媚薬を入れてやろうかしら。私にかかれば男なんてイチコロ”
「こんな感じだったわよね!?」
「全然違いますね。どう見ても恋する乙女がお弁当作りに悩んでいる光景でした」
「違います! そんなはずない!」
「そうですってば、好きなんでしょ? 第二王子が」
「そんなわけない。私が恋に落ちるなんてありえない! 私は……エクセル様を私なしでは生きられない体にするのが目的! お弁当作りだってそうなの!」
「全く謀略のカケラも見られない光景でしたね。クールぶってる普段のお嬢様より好みですが」
「違うの、違うの〜〜〜!」
生徒会室にエクセルが入ってくるまで違うの違うのと言いまくるファンヌの姿が見られた。




