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Ain Soph Aur ― アイン・ソフ・オウル ― 【プロット・企画書】  作者: 昭丸
第七楽章 エーデルワイス
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Op.63 コルトレイル

 ワイザムの屋敷から王城に戻ったミコトは、自室の机に向かった。

 机の上には、ララたちから分けて貰った薄紅色の便箋が置かれている。

「…………」

 静寂の中でしばらく考え込んだ後、ミコトは便箋へと慎重に筆を走らせた。


          ◆


 日が傾いた頃、ミコトを始めとして、カムラ、シタン、ワイザム、クリファ、ララたち三姉妹、加えて幾人かの人々が王城のテラスに集まった。

 コルトレイルに備え、各々が小さな熱気球を作る。

 定刻。

 ランプに火が点され、ミストルティンの各所から熱気球が一斉に夜空へと放たれた。

 星々と重なり、淡い光を放つ無数の熱気球を見上げながら、ミコトは便箋にしたためた内容を反芻した。


〈大好きな、母さんへ。

 苦しいことがありました。

 哀しいことがありました。

 でも、心配しないでください。

 僕は、精一杯、元気に生きていきます〉


          ◆


 熱気球が夜空に放たれた後、ミストルティンの町中がにわかに騒がしくなった。

 あちらこちらに引火しないよう水打ちをされた屋台が設けられ、路地に人が溢れる。

 一方、王城のテラスでは、どこからか持ち出したヘルメットを被ったララたちが、カムラに駆け寄っていた。

歌療士(ノルン)消防団は、これより火消しの任務に当たります!」

「「ます!」」

 ララの号令と敬礼に合わせて、リリとルルも敬礼をした。

「人目があるとはいえ、暗いから気をつけるんだよ」

「「「はい!」」」

 カムラの言葉に、三姉妹が元気よく返事をした。

 次いで、ララが拳を振り上げる。

「さあ、徹夜で食べ歩くよ!」

「「おお!」」

 リリとルルも、ララに合わせて拳を振り上げた。

「おぉ……!」

 徹夜で食べ歩くという言葉に反応したクリファが、爛々と目を輝かせた。

「火消しの任務はどこへ行ったんだ……」

 シタンが呆れたように呟いた。

「シタン、念のため引率を頼むよ」

「はい、樹士団の中からも、何人か祭り好きを連れて行きます」

 カムラの依頼にシタンが頷いた。

 その時だった。

 カランと、ミコトの足元で乾いた音がした。

「?」

 ミコトが視線を送ると、そこに小さな金属のケースが転がっていた。

「……!」

 ケースを拾い上げたミコトは、驚きに目を見開いた。

 見覚えがあった。

 まだ母親のイノリが生きていた頃、父の日にお小遣いをはたいてタカシに贈った、ステンレス製の名刺ケースだった。

「ミコト? どうかしたのか?」

 シタンがミコトに歩み寄って来た。

「あ、えっと――」

「シタン様! ミコト様! 先に行っちゃいますよ!」

 ミコトの言葉を遮るように、ララの声が響いた。

「やれやれ、せわしないな……」

 ぶんぶんと手を振る三姉妹とクリファを見て、シタンが苦笑した。

「待たせると煩そうだ。行くとするか」

「はい」

 ミコトは名刺ケースを上着のポケットに押し込むと、シタンと共に、食欲に急き立てられた少女たちの元へと向かった。


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