Op.32 跳べる
サージェントプラナスに乗り、ミコトとシタンはキスカヌを訪れた。
キスカヌの防衛システムは極めて堅固であり、試しに敷地内に向けて撃ち放った銃剣の弾丸は、レーザーのようなものでことごとく迎撃される。
それらの様子を見届けたミコトは、ケテルを用いてキスカヌの鳥瞰図を空中に表示させた。その鳥瞰図には、キスカヌの敷地の外縁部から敷地内の一つの建物に至る複雑なルートが描かれている。
「これが、キスカヌに入ることのできる唯一のルートなんだと思います」
「下の方でカウントされている数字は?」
「おそらく、ルートが変更されるまでの残り時間です。高いセキュリティレベルを維持するため、一定時間ごとにルートを更新しているんだと思います」
ミコトは、鳥瞰図のルートに従い、キスカヌの敷地内に一人で足を踏み入れることを告げた。
対して、シタンは「確証が得られない状態で侵入するのは危険だ」と、その提案に反対した。しかし、ミコトの手が震えていることに気づき、続く言葉を飲み込む。
「正直、恐いです……だけど、もう、背を向けて、後悔するだけの自分でいたくはありません」
その言葉を聞いたシタンは、悔いるような表情を垣間見せるが、ミコトの提案を受け入れた。
キスカヌの敷地内へと、ミコトは慎重に足を踏み入れた。
レーザーの砲塔がミコトを照準するが、攻撃は仕掛けてこない。
ミコトはケテルに描かれたルートをたどり、順調に歩みを進める。
そして、最後の曲がり角に差しかかる。
しかし曲がり角の先には、地面に穿たれた大きな亀裂が行く手を阻んでいた。
ふと風が吹き、衣服の裾がルートの外に出た。途端にレーザーが放たれ、ミコトの頬をかすめて衣服の裾を消失させる。
ミコトの胸中で恐怖が鎌首をもたげ、歩みが止まった。鼓動が速くなり、口内の乾きに反して冷や汗が全身を濡らす。
ミコトは、ケテルが空中に表示した数字を見やった。ルート更新までの時間は、わずかしか残されていない。
絶望がミコトの視界を暗転させようとした、その時だった。
「がんばれ! ミコトっ!」
シタンの叫びが、ミコトを貫いた。
(そうだ……僕は、向き合うって決めたんだ……!)
ミコトは自らの決意を思い出し、強い眼差しで前方を見据えた。そして、恐怖の呪縛を引きちぎるように、亀裂に向かって走り出す。
(大丈夫……跳べる!)
自分を叱咤し、ミコトは力の限り地面を蹴った。
空中に表示された時間が0になる――同時に、ミコトは亀裂を跳び越え、ルートの踏破を達成した。
ミコトは荒い息を整えた後、シタンへと手を振った。
「防衛システムの解除方法を探してみます」
そう声を張り上げ、ミコトは建物の内部に入った。




