↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRでボロ屋敷買ったら勇者がメイドに魔王が執事として雇用されに来た  作者: 無頼惡兎
第1章  おじさんボロ屋敷で勇者と魔王を雇う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/19

第7話新人の希望と僻地のボロ屋敷

4話が2話分の量になってました。すみませんが、4話の修正はできないのでこのままスルーで行きます。内部で2分割してあります。そのまま読めたって言う、強者ではない方は、止めてもらって構いません。ってここで言う事かと思ったのですがすみません。

 僻地にある『はじまりの若葉の森』の木漏れ日の中で、サトウは上機嫌に声を張り上げていた 。

「よし、それじゃあ一旦、街に戻ろうか!」

 ここには、ボロ屋敷リフォームを楽しみにしているおじさんと、屋敷のために雇用された(サトウの勘違い)、最高級の衣装を纏った三人の一般使用人が控えていた。

 漆黒の執事服に純白の手袋をはめバングルを付けた、魔王執事のマオ(元魔王)。

 カワイイフリルのメイド服に髪飾りとブレスレットの似合う、勇者メイドのユウ(元勇者)。

 先ほど調印書によって【宮廷給仕メイド長】へと逆転進化を遂げ、空間の裂目から出した縫い針の一撃で双葉スライムを消し飛ばした金の刺繍の入ったゴージャスなメイド服に身を包むシルキー族の少女、フィース――愛称フーちゃん。


  「帰れるのかっ……ようやくか、はい、旦那様……」

  「は、はい。承知いたしました、超えっ……旦那様……」

  「わかりました!ご主人様……」


 マオとユウは、引きつった笑みを浮かべながら平伏するように頭を下げ、フィースは満面の笑みで答えた]。

 無理もない。二人は街での針の筵状態、スライムとの激戦(千日手)命からがらのレベル上げをしてきたばかりなのだ。しかしその甲斐もあってか基礎レベルも5へ、基礎職業共にレベルが5になった。そんな二人は、二度と職場復帰すら不可能な状態になっているなんて思ってもいない 。もっとも、目の前の状況に飲まれかかっていて脱出に精一杯であった。

(くっ、まさかフィースが俺たちより強いとは、数時間で5、奴はどのくらいなんだ……街へ戻るはめになるとは……!)

(まさか、スライムに勝てないなんて……先輩として終わりだわ……まだ、可能性はあるはず……!)

 内心で冷や汗をだくだくと流し、自らの不甲斐なさと新人の底知れなさに怯える元最高戦力二人 。そんな先輩たちの様子を小耳に挟みながら、新人メイド長であるフーちゃんは、ふふんと小さな鼻を鳴らした。

(フフッ、おじ様が言ってたけど、先輩たちがどんな方かと思えば……双葉スライム一匹を相手に素手でペチペチと……泥仕合を繰り広げていた、頼りなく弱い先輩だったわ。この私が、おじ様の一番になっておじさまに褒められる!二人は邪魔かもしれない!がんばって役に立つ!)

 みずぼらしい冒険者風の格好をしていながら、その実、一瞬で自分を上級職へと進化させたサトウを「底知れない超越者の大富豪」だと確信しているフーちゃん。彼女の頭の中の想像では、これから向かうサトウの邸宅は、まばゆいばかりの歴史ある大豪邸、白亜の美しい完璧な大屋敷に違いないと完全に補正がかかっていた。

 そんな三人の複雑な視線を知ってか知らずか、サトウはのほほんと街道を歩き、最初の街の広場へと足を踏み開けた。

 街に戻ったサトウの目的は、森で集めた素材の売却と、何よりボロ屋敷の修繕に必要な木材、漆喰、塗料、工具といった大量のリフォーム用品の買い出しである。

「ええっと、まずはこの頑丈な木目調の板木を三十本と、壁を塗るためのそれなりの漆喰を十樽をくだされないか。」

 サトウは、ゲーム内通貨(ガルム)を机の上にドン、と積み上げる。

「足りるかい?それと、この街でも手に入る頑丈な釘も追加でたのむ。」

 市場の商人が目を丸くして商品を揃え「毎度、どーも」そう言い今度は、サトウの前に積み上がった大量の重い建築資材を前にして、困り顔をした。

「おっと、うっかり買いすぎちゃったな。さすがにこれだけの木材と漆喰をインベントリーで僻地の我が家まで運ぶのは、骨が折れそうだ。マオくんとユウちゃんに手伝ってもらうにしても、収納能力はないか、それに、二人はあまり重い荷物を持てないみたいだし困ったなぁ」

 サトウがそう言って苦笑した瞬間、待ってましたとばかりにフーちゃんが前に躍り出た。

「ご主人様!!そのような雑事、このフィースにすべてお任せください!」

 フーちゃんはそう言うと、金糸のフリルを美しく翻し、マオとユウを極上の優越感が混じった視線で見つめ、フフッと鼻で笑った。

「そこの情けない先輩方は、レベルは初心者で収納の無いのでしょうけれど、私は違います。熟練度最大スキル――『収納』!」

 フーちゃんが小さな手をかざすと、広場に積み上げられていた山のような木目調の板木や漆喰の樽、配置用の頑丈な釘の袋が、ものすさまじい速度で空間の裂目へと吸い込まれ、すっきりと消え去ってしまった。上級職レベル35の底力である。

「おおお!これは凄いね、フーちゃん!一瞬で全部片付いちゃったよ。本当に優秀で頼りになるなあ、ありがとう!」

 サトウが相好を崩し、ピュアな100%の悪意のない笑顔でフーちゃんの頭を優しく撫でまわした]。

 その瞬間、フーちゃんの脳内には最高に満たされた幸福の鐘が鳴り響いた。

(あぁ……おじ様に褒められた……! このフィース、大富豪たるおじ様のお役に立てて光栄の至りです! もっと、もっとおじ様のために尽くさなくては!)

 嬉しさのあまり完全に限界のタガが外れたフーちゃんは、サトウが「あ、ついでにあの予備の鉄の柵と、レンガ五十個も買っておこうかな」と呟くたびに、「すべて私の『収納』にお任せを!」と、顔色一つ変えずに自らの最大重量の限界のギリギリまで資材を次々と空間に詰め込んでいった。

 そんな様子を横で見ていたマオとユウは、ガタガタと全身を震わせていた。

(な、何て恐ろしい新人だ……。あの山のような大木や鉄塊の質量を、何食わぬ顔で空間に維持し続けている。アレが後輩だと!?)

(それに、あの化け物おじさんを見て! そんな規格外の能力を持つ新人メイドの頭を笑顔で撫で回してるわ……! やっぱりあのおっさん、逆らう者を笑顔で消し飛ばす底知れない超越者に違いないわ……!)

 二人が激しい深読みの恐怖に怯えていると、広場の周囲にいた一般プレイヤーたちからも、ヒソヒソとした噂話が立ち上り始めた。

「おい、見ろよあの三人組…… 最高級の衣装を身に着たイケメン執事とカワイイメイドだぞ」

「公式の伝言板で言ってた、僻地の隠れ超大富豪ってあのおじさんのことか……!」

「あのレベルの固有使用人を三人同時に雇うなんて、一体どれだけのガルムを溜め込んでるんだよ」

「前線の騒ぎとは無関係の平和なやり込み勢って噂だけど、まとってる雰囲気がガチすぎて近づけねえわ……」

 周囲のプレイヤーたちの怯えるような視線とざわめき。マオとユウは、それを「サトウの放つ底知れないプレッシャーに、街の人達も恐れおののいているのだ」と確信し、さらに二人顔を合わせてうなずき合うのだった。

「よし、買い物も完璧だし、それじゃあ我が家へ帰ろうか!」

 サトウの明るい声が響く。

 おじさんに褒められたい一心で、自らの『収納』スキルの限界をはるかに超えた重量の修繕資材を限界まで詰め込み、肉体に凄まじい負荷デバフを蝕まれているとは微塵も感じさせない健気な笑顔で、「はい、おじ様!」と元気に一歩を踏み出すフーちゃん 。

 彼女の頭の中には、これから向かう、ピカピカで完璧な美しい大豪邸の姿だけが広がっていた [1-10]。

 この時のフーちゃんは、違う方向でヤバイと知る由もなかったのである [1-10]。

 サトウの後ろを歩き、ようやく僻地にある『我が家』へと到着した瞬間、新人のフーちゃんの足がピタリと止まった。

 サトウおじ様ほどの底知れない超越者が住む場所なのだから、きっとまばゆいばかりの歴史ある大豪邸、白亜の美しい完璧な大屋敷に違いない――そう信じて疑わなかった彼女の目の前に現れたのは、見るも無惨な格安のボロ屋敷(現実)であった。

 あまりの落差に、フーちゃんの思考が真っ白にフリーズする。

「……え?……ここ、ですか……?」

 想像とあまりに違う過酷な現実への精神的衝撃。そして、おじさんに褒められたい一心で、街の市場から『収納』スキルの最大重量限界まで大量の木材や漆喰を無理して詰め込み、耐え続けていた肉体への負荷――「筋肉硬直」と「飢餓」と「混乱」のトリプルデバフが、この瞬間に一気に合流して爆発したと同時にフーちゃんは絶望の白目を剥いた表情のまま、ひざからガクリと崩れ落ちてしまった。

 我が家の敷地内についたことで、システムからの警告音に気づいたサトウは管理画面を開き、彼女の身に起きているログに気づいた。急いで駆け寄って、自分のために限界まで資材を運んで頑張りすぎてくれた彼女の様子を優しく気遣った。

「フーちゃん!?どうして混乱してるかわからないけど……こんなに重いものをたくさん『収納』させて運ばせちゃったから、お腹も空いて体が固まっちゃったんだね。ごめんよ、まずは寝かせてあげよう。それと、この屋敷の庭を片付けて、みんなでピクニックみたいに食事をとろうか!」

 サトウは無邪気な笑顔でそう提案すると、マオとユウに庭の草刈りをするように頼みフィースを背負い、4人で庭に向かうのであった。

((フッ、あの小娘、気を失うのが早かったな。いい気味だ/ね))

 荒れ果てた庭へと到着したサトウは、まず開きっぱなしになっていた管理画面に目を向け、自分の職業を『なんちゃって魔王(生産特化)』へと戻した。これからのDIYリフォームに備えて、家の中限定の便利なクラフトバフを有効にするためである。

 そうしてサトウは、背負っていたフィースを木陰の安全な場所へと優しく寝かせると、眩しいほどの無邪気な笑顔でマオとユウを振り返った。

「よし、それじゃあ二人とも、まずは庭を綺麗にしていこうか。俺もすぐに準備をして、みんなと一緒にやるからね!」

 自分もやるぞと張り切るサトウのその言葉と姿を前にして、マオとユウの脳内では凄まじい心理戦が幕を開けていた。

(くっ、何が『俺もやる』だ……!やはりこのおっさん……先程のレベル上げの結果を求めてるのか……!?)

(嘘でしょ……!?草刈りなんてただの建前で、本当は私たちがどれだけ動けるか、その実力を値踏みするつもりなんだわ!ここで少しでも、不甲斐ない姿を見せたら処分されるに違いないわ……っ!)

 お互いに背筋を凍らせ、冷や汗を流しながら激しい深読みの視線を交わす二人。しかし、底知れない超越者(サトウ)の機嫌を損ねるわけにはいかない。

「そうだ、さっきレベルも上げたし、今なら覚醒の時間長くなってるかも。二人とも使って、3人で片付けちゃおうか」

 そう言いながらスキルを使い始めるサトウのエフェクトに更にビビる二人は、恐怖のあまり完全にうわずった声で返事をした。

「は、はい! 旦那様、ただちにこの庭のすべてを平らげてみせます……っ!」

「仰せのままに、旦那様……! 我が全力を以て、速やかに完了させますわ……!」

 二人は引きつった笑顔を浮かべながら、覚醒を使う。ユウの右手にはモップではなく鎌が、左手にはやはりバケツを持つスタイルで、マオは大人びたスタイリッシュな姿へ。魔法が使える事に気づきエアカッターを使い、まるで決死の戦場にでも赴くかのような壮絶なプレッシャーを背負いながら、ドタバタと必死の勢いで庭の草刈りを開始するのであった。

 大人びた二十代の姿へと覚醒した二人の作業スピードは、文字通り凄まじかった。ユウはバケツを構えながら目にも留まらぬ速さで鎌を振るい、マオはスタイリッシュな身のこなしで風の魔法『エアカッター』を連発して、周囲の雑草を容赦なく刈り取っていく。

 その神速の草刈り作業を目の当たりにしたサトウは、目を輝かせて大感動していた。

「おおお! 二人とも、ものすごい勢いだね! 覚醒するとそんなに効率が上がるなんて、本当に優秀な使用人を雇えて俺は果報者だよ。素晴らしい!」

(くそっ……!なぜこんなことに最前線よりはまだいいが今後も何に付き合わされるんだ!?)

(私の聖剣がっ……!マオのせいなの……!?もう勇者として戦えないじゃない……) 

 サトウが手を叩いて純粋に大喜びしていると、木陰で寝かされていたフィースが、うう、と小さく声を漏らして目を覚ました。「混乱」と「気絶」からようやく回復したのである。

「……はっ! おじ様! 大変申し訳ありません、このフィース、不覚にもお役に立つ途中で意識を……!」

「あ、フーちゃん、気がついたかい?無理させてたみたいだねごめんよ。そうだ、今ここで買った資材を全部出しちゃおうか。」

「はい!ただちに!」

 フーちゃんが自らの『収納』から、街で購入した大量の木材や漆喰、鉄の柵やレンガをドバババッと一気に庭へと吐き出す。

 目の前に積み上がった大量の資材と、二人が完璧に綺麗に刈り上げてくれた庭を見渡し、サトウはますます腕を鳴らした。

「よし、これだけ綺麗になれば、いよいよ本格的なDIYができるぞ。……その前に、お腹いっぱい食べようか。」

 そう言ってサトウは、インベントリーからおじさん特製の美味しそうな料理を次々と取り出し、綺麗になったばかりの庭の草の上にレジャーシートを広げてピクニックのように食事を並べ始めた。終わるのを眺めてたマオとユウは、ポフンッと音を立て元に戻る。

「さあ、みんな遠慮しないでたくさん食べてね!」

 サトウはいつも通り、現実世界で自分用によく作っていた、少し形が不格好な手作りのおにぎりと具沢山の豚汁をのんきに差し出しただけだった。しかし、目の前に並んだごく普通の温かい家庭料理を見た三人の脳内は、再び凄まじい恐怖と深読みに支配されていた。

((な、何て禍々しいエネルギーを秘めた料理なんだ……!不格好な形に偽装されているが、一口食べただけで、蓄積していた精神疲労と肉体のデバフが一瞬で完全に消滅し、全ステータスが急速に回復していく……っ! これほどの高い回復効果を持つ料理を、まるでおにぎりであるかのように無造作に配るだなんて、やはりこのおっさんは底知れない化け物だ……!))

 リアルに近いこのゲームのシステム上、ただの美味しい食事を摂ったことで飢餓や疲労のデバフが正常に解除されただけなのだが、そうとは知らない三人は、その恐るべき手料理に恐怖でガタガタと全身を震わせ、涙目になりながら夢中で口へと運び、お腹いっぱい満たされていくのであった。

 そうしてみんなのお腹がしっかりと満たされたところで、サトウは満足そうに深く頷いてから、ふと思いついたように管理画面のボタンを操作した。

「せっかくだから、こうして趣味のDIYをのんびり楽しむんだし、現実世界でも流行っていた『動画配信』ってやつを、このゲームのシステムを使ってみんなを映そうかできるかは今度やってみようかな?そろそろ、現実でもご飯を食べなきゃだな、みんな好きにして待っててくれ」

 サトウが何気なくそう言って、クラフトシステムの設定を終えてログアウトの操作を行った瞬間であった。

 ゲームから切断される直前のエフェクトとして、宙に浮かぶ渦に吸い込まれるように薄くなって消えた。ゲームを終了するときのただの派手な演出効果でしかなく、目の前で文字通りサトウが消え去ったのを再び目撃したマオ、ユウ、そして初めて見たフィースの三人は、恐怖で全身の血の気が引いて完全に絶望の表情のままその場に立ち尽くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。