第1話:僻地のボロ屋敷と、光と闇のレベル1調印式
久しぶりに投稿!自分が読みたいと思うものをAIと作成したものです面白いと思ってくれるといいです
「……うん、最高にボロい。実に見事なボロさだ」
現実の肉体には1ミリも悪影響がない、医療基準をクリアした安心安全の完全フルダイブ型VR-MMORPG『ファンタジー・ワールド』。その視界の向こう側、見渡す限りの大自然のなかにポツンと佇む物件を見て、俺――佐藤(42歳)は満足げに深く頷いた。
現実世界の俺は、それなりに必死に働いて資産を築いた。これからの人生(時間)はたっぷりある。そんな俺が余生にと選んだのが、この超自由度を誇る最先端のゲームだった。
プレイヤーの頭上にはシンプルに『名前』だけが表示される仕様で、レベルや職業といった余計なUI(文字表記)は一切出ない。そのすっきりした画面が、おじさんの俺には居心地が良かった。
おじさんの俺に効率主義はない。最初の数ヶ月、ライトプレイヤーとして普通に戦い、ある程度の戦闘をこなしたところで、レベルは24相当で自然と止まってる。無駄な高級装備を買わず、堅実に貯めたゲーム内通貨の使い道を模索した結果、俺はこのプレイヤーが誰も来ない後方の僻地にある、格安のボロ屋敷を即購入したのだった。
自宅のふかふかのソファに体を預け、脳波連動でログインした俺が、のんびりと現地に到着したのは、ちょうど15時頃だった。
ギシギシと悲鳴を上げる床を踏みしめ、初めて我が家の内装へと足を踏み入れる。壁には大きな穴が開き、何より床板が乾燥して今にも踏み抜きそうなほどベコベコに歪んでいた。どこからどう見ても激やばのオンボロ物件だが、リフォームのしがいがある。
「よし、まずは壁より、この今にも抜けそうな床の補強から始めるか」
俺はメニュー画面を開き、この物件(なんちゃって魔王城シリーズ)に付属していたハウジング専用の生産・エンタメ用ロールである『なんちゃって魔王』へと役職を切り替えた。家の中限定のクラフトバフがかかる、便利なDIY用の機能だ。
俺は、インベントリから道具と板材を取り出し、さらにゲスト用に共有できる『ウェルカム設定』をオンにして、作業の合間に食べるつもりだった【一本丸ごとの大きな棹羊羹】をお皿に乗せて床にポンと置いた。心底うっきうきになりながら、さっそく入り口の床の補強を始めようとした、まさにその時だった。
――キィーィー……
突如として、我が家のボロボロの玄関扉が、まるで外から力のない状態で軽く押されたような頼りない音を立ててゆっくりと開いた。
そこから、今にも倒れそうにフラフラと玄関口へ滑り込んできたのは、「フリルが可愛いメイド服」を着た、目の下に凄まじいクマを作った美少女だった。
彼女の頭上には、ただ一言、『ユウ』とだけ名前が表示されている。
ユウは、今にも倒れそうな極限の視界のなかで、サトウの放つ漆黒の演出煙への恐怖と、その足元にある大きな羊羹(命を繋ぐ回復リソース)の『両方』を同時に完璧にロックオンし、「な、なんて濃密な漆黒魔力塊……!」とガタガタと震えた。
ウェルカム設定のおかげで、共有解放されていた大きな羊羹に、ユウは臨戦態勢のプライドも警戒心も、女の子としての体裁もすべてをかなぐり捨てて、野生動物のように飛びつき、俺の傍で無心にモグモグ、モグモグと食べ始めてしまった。
そんな彼女のただ事ではない様子に俺が驚いていると、羊羹を貪り食って少しだけ喉のすくみが取れたユウちゃんは、涙目になって、消え入りそうな声でと必死になって答えてくれた。
「むぐっ……うぐっ……! お、お願いです、私をここで……この屋敷の『使用人』として雇ってください……っ! 最前線の過酷な……その、ブラックな労働環境から、もう耐えられなくて…それで……逃げてきちゃったんです……! 雑用でも何でもしますから、どうか命だけは……っ!」
今、食べてる大きな羊羹HPとMPが『持続回復』する状態になる。ユウの体力は、まだミリ残りからほんの数パーセント回復しただけの、極めて不安定な状態だった。
「うちで雇ってほしいのかい? いいよ。ただ、まずはそれをゆっくりと食べて元気を出しなさい。それと、何ができるか、どんなお仕事をしていたのかは、落ち着いてから聞かせておくれ」
俺は床板の補強作業をスキルを使い進めていく中で、後ろの方にいるメイド服姿の可愛い女の子に気さくにそう声をかけた。
ユウちゃんの脳内は、目の前の恐ろしいサトウのスキルエフェクトにたいそう驚く。
(ひっ……!? あの人は人間!?それに、食べ終わった瞬間……私の能力や何ができるかをじっくり尋問する気だわ……っ! 勇者だとバレたら……一瞬で消されるかもっ!)
サトウを見て、パニック状態になっていた彼女は、身分を隠し通すためにはと、サトウの「まずはゆっくり食べて元気を出しなさい」という言葉を文字通り命の盾にして、持続回復バフを最大維持しようと、細もちぎった大きな羊羹を1時間かけて少しずつ、必死に無言で咀嚼し続けることしかできなかった。
一方、詳しい事情はあとでゆっくり聞くことにした、俺は目の前のDIY作業へと集中した。
入り口の床板から、奥へと続く廊下の床板に新しい板材をあてがい、金槌で釘をカンカンと小気味よく叩いては、1時間かけて順番に補強していく。その間、すぐ後ろからはのどかなモグモグ音だけがずっと響いていた。ユウちゃんが本当に一言も喋らなかったのは、目の前のサトウのスキルエフェクトを勘違いし怯えながら、必死な時間稼ぎをしやり過ごしていたからだった。
俺が廊下の床を直し終え、ちょうど屋敷の奥にあるリビングの扉のすぐ手前まで作業を進め、仕上げの釘をトントンと叩いていた頃、時計の針が16時頃を回った。その時だった。
――さらなる追い打ちが我が家を襲う。
――ドゴーン!!!
「頼むっ! 俺をここで雇ってくれぇぇぇーーっ!!」
扉が突如、木端微塵になり、爆音と衝撃で俺は本気で腰を抜かし、開いた口を金魚のようにパクパクと動かしながらその様子を眺める事しかできなかった 。
粉塵が収まりかけた時、俺と目が合ったその男の頭上に『マオ』とだけ表示されている 。
シックな執事服に身を包んだ、凄まじい眼光のイケメンのマオは目の前の存在と目が合ったことで理解してしまった 。
「ヒェッ……!!!!」
過労で回っていなかった脳が一瞬で凍りつき、一瞬で消されると思い込んだマオの脳裏を最悪の恐怖が駆け巡る 。
(あ、あの得体の……しれない存在はなんだっ!?お、おちつけ……っ! おちつくんだ俺……っ! あれはニンゲン、あれが人間!?……っ!)
「……っ! ……ふぅ、……はぁ、はぁ……っ!」
あまりのプレッシャー(スキルエフェクト)を纏ったサトウをマオはまじまじと、見てしまったことで乱れた呼吸を必死に戻そうと色々と行動をとるが、完全に挙動のおかしいパニック状態になっていた。マオは、落ち着きが戻ってきたことで切り出した。
「――っ。あ、あの……失礼、取り乱しました。そ、その、まずは勝手にドアを壊してしまい、本当に申し訳ありません……っ! 私は、最前線の……その、終わりなき無限の事務処理(※魔獣の無限リスポーンの指揮・管理)からバックれてきた、ただの執事の『マオ』と申します。……私をここで、住み込みで、は・た・らか……」
そこまで言いかけたマオの視線が、横へ移動し俺の隣で安心しきった顔をして、羊羹を無心にモグモグ食べているメイド服の少女へと向いた。その時、ユウの視線もマオへと向く 。
これから雇い主になる人の前で正体がバレる訳にはいかない二人の脳内だけで、天地がひっくり返るほどの絶開がシンクロした 。
『(ゆ、勇者ユウぅぅぅーーっ!? なぜ光の軍勢の最高戦力が、そんなところでメイド服を着て暢気に羊羹なんて食べているんだ……っ!?)』
『(むぐっ!? ひっ……!? ま、魔王マオ……っ!? なぜ魔王軍の総大将が、わざわざ執事服なんて着てこんなところにいるのよぉぉぉ――っ!?)』
マオの言葉の語尾がヒュッと空気になって消えていく 。完全に雇ってもらう前に正体がバレるわけない二人は、心臓が止まるほどの更なるパニックに陥っていた 。しかし、マオはユウの身体から、回復のエフェクトが立ち上っているのを見逃さなかった 。
(ま、マズい……っ! あいつはあの濃厚なリソースをモグモグ補給し続けて、体力が持続で回復にある状態じゃないか……!? それに俺は、謎の転移で後ろの部屋に飛ばされて、体力が僅かしかない…今、ここで確実に消し飛ばされる……っ!)
(クソっ、魔王のやつ、私をみてた!?扉の勢いのまま、羊羹をモグモグしてる隙を狙って襲ってくる気ね……っ!? ままだ回復バフの途中なのに……っ! 早く飲み込まなきゃ、でも喉に詰まる――っ!)
そんな命がけの無言の空気の中、冷静になって2人を見つめた俺はDIY作業の合間に水分補給用しようとしていたコップ付きの大きな魔法瓶の水筒をインベントリから出し、冷たいハーブ茶をわけたコップにトトト……と注ぎ、「まぁまぁ、二人とも落ち着きなよ」とマオとユウの二人にそれぞれ差し出して割って入った 。
「マオさんに、ユウちゃんだね? 同じブラック職場からバックれてきた仲間かい? 奇遇だね。ここは、『なんちゃって魔王城』ってコンセプトのお城だ。ここにいる間は、手伝いさんとして雇うからこの調印書にサインしてくれない?」
おじさんがのんきに差し出した調印書を見て、二人は(これだけのボロ屋敷なのに魔王の城を名乗るのは無理がありすぎるだろ!?)と脳内で同時に、激しく突っ込む。
1人でボロ屋敷の全修リフォームはさすがにきついと思っていたサトウは、時間差があったが運営が設定した、親切なお助けNPCのイベントか、隠しクエストに違いないと思い込み。ログにイベント開始通知が来ない。さらに、時間差を出しリアルな没入感を出すために2人を使た素晴らしい演出に深く納得し、2人まとめて住み込みの手伝いとして雇用を促した。
絶賛、回復中のユウとおじさんの手にある調印書を数往復し思った 。
(くっ……! ひとつの水筒から注がれた液体を分け合って飲んでしまった……!? 宿敵同士に同じ盃を交わさせ、強制的に和睦の契りを結ばせるとは悪魔なのか……っ! 羊羹モグモグ勇者に、後でハメ殺されるより目の前のこの契約を結べば、この家の住人(強制平和)になれるか……この男とすぐに契約を結んだ方が生き残れる……はずだっ!)
マオは、自身の生死を天秤にし狂ったように、了承へとタップした 。
それを見たユウも、葛藤するが、羊羹を口にくわえたまま、ボロボロの涙目で慌ててため確認もせず了承をタップする。
(魔王がサインした!? 勇者だけど……魔王以上のなにかの手下になってしまう…でも、でも、サインして住人にならなきゃ……っ!)
その瞬間、自由度MMOのハウジング機能が完全にシステムロックされた。ちょうど、時計の針が16時頃を回った頃だった 。
二人は、自身の内部ステータスの変化に驚愕し、完全に硬直した。
(な……何だ、これ……手袋っ!? 俺の全魔力が消えている……!? すべてのスキルがグレーアウトして……レベル、1……だと……!? 執事服のせいで、執事へとシステム的に固定されただと……!?)
(聖剣の加護が発動しない……え?髪留めになっちゃった。それに、変装用の『メイド服』だったのに、システム的に本当にレベル1のメイドに固定されちゃった――!?)
二人は、ガタガタと震える目でおじさんを見つめた。
(あの調印に同意した瞬間、ただの変装用の服が、まさか自分たちの内部データ(魂)にまで侵食して全てを強制上書きし、レベルさえ1に書き換えてしまうなんて……っ! 反抗した瞬間に存在ごと消し去られる……っ!)
最強から最弱(ただし、服装は最高に似合っている)になった二人。目の前に佇むこのおっさんの存在が、自分たちより遥か上の存在に見えてしまった瞬間だった。
そんな2人の思考を、サトウは完全に無視する形でスタッフ画面をみていた。その後、床を直するのに使用していた真っ新できれいなDIY用の直板を床にスッと引き、その上をポンポンと叩いた。
「よし、調印完了だね。レベル1の基礎ステータスになってるから無理は禁物だよ。他の部屋や床はまだ直してなくて、割れたら剣山みたいで危険だから、まずはこのきれいな直板の上に並んで座って、少し落ち着きなよ」
「「は、ははーーっ!!(※ボロ屋敷の住人のため、絶対に逆らえない)」」
二人は完全におじさんが自分より上だと思い込み圧倒する。さらに足元には、そこかしこに鋭い剣山が存在すると勘違いし、そのきれいな直板の上に2人は、肩が触れ合うほどの距離で並び、膝を抱えてピシッと綺麗な『体育座り』の姿勢で小さく固まった。
フリルが可愛いメイド服を着てまだ口に羊羹をくわえている美少女(勇者)と、シックな執事服の袖をまくった凄まじい眼光のイケメン(魔王)。そんな世界の命運を握るはずの二人が、埃っぽいボロ屋敷の片隅で、借りてきた猫のように肩を寄せ合ってちょこんと体育座りをしている。その光景は、客観的に見ればあまりにもシュールで、最高に情けない絵面だった。
「うん、よく似合ってるよ。それじゃ、おじさんは床板の長さを測るから、のんびりしててね」
俺は二人の行儀の良さに満足しながら、再びノギスとメジャーを手に取り、ベコベコに歪んだ床へと向き直る。
こうして、42歳のライトプレイヤーおじさんと、変装用アイテムのせいで能力を奪われ、ボロ屋敷のリビングで並んで体育座りをさせられる世界最強の二人による、勘違いだらけの僻地ライフが、ここに幕を開けたのだった。
ここ変というのが無いようにした1話目になってるといいな読み手ののかたは千差万別絶対はないので何かあればコメントください。




