1.朝の廊下に壁ができていた
*エレナ視点です
「うわっ!」
思わず声を上げると、少し後ろを歩いていた幼なじみであり、親友でもあるシャルロットが足を止めた。
「どうしたの、エレナ?」
私は黙って廊下の先を指差した。
そこには、大勢の令嬢たちに取り囲まれた四人の男がいた。
男たちはこちらに背を向けているため、顔までは見えない。
けれど、あれだけ大勢の令嬢が集まっているのだから、それなりに目立つ人たちなのだろう。
容姿がいいのか、家柄がいいのか。
あるいは、その両方か。
理由は知らないし、興味もない。
今の私たちにとって重要なのは、ただ一つ。
――邪魔だということだ。
ここは王都にある王立アカデミー。
貴族の子女を中心に、18歳から22歳ほどまでの令息令嬢が通う高等教育機関で、政治、領地経営、外交、法学、錬金術、騎士学などの専門分野に加え、上流階級に必要な礼儀作法まで学ぶ、いわば大学のような場所だ。
そんな由緒あるアカデミーの廊下を、朝から大勢の令嬢たちが塞いでいた。
その中心にいる四人の男も、堂々と廊下の真ん中に立っている。
シャルロットと顔を見合わせる。
――二人揃って、ドン引きである。
せっかく近道としてこの廊下を選んだというのに、あれでは通ることができない。
しかも朝の時間帯だ。
急いでいる学生も少なくないはずなのに、令嬢たちは周囲などまるで気にせず、男たちへ華やかな声を飛ばしている。
こちらを向いてほしいだの、今日も素敵だの、少しだけでも話したいだの。
実に元気なことである。
私は並んで立つ四人の背中を眺め、思わずため息をついた。
「あんなところに四人並んでたら、ただの壁じゃん」
シャルロットも否定はしなかった。
結局、私たちはその廊下を諦め、来た道を引き返すことにした。
背後からは相変わらず令嬢たちの華やかな声が響いている。
男たちの名前らしきものも聞こえた気がしたが、特に気には留めなかった。
どうせ今後、関わることもない人たちだ。
そう思っていた。
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