↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
71/83

第70話 何で行く?

 翌日。


 放課後。


 新潟中央女子学園・はむぶ部室。


 ホワイトボードには昨日書かれた文字が残っていた。


『夏合宿 月潟リゾート木崎湖キャンプ場』


「場所は決まったね」


 真宵が言う。


「次は交通手段」


「あっ」


 華が思い出した。


「昨日、彩鼓先輩が運転するって」


「そうだった」


 みなみも頷く。


 ちょうどその時。


 ガラッ。


「こんにちはー」


 彩鼓だった。


「噂をすれば」


 真宵が言う。


「昨日の話だけど」


 彩鼓は椅子に座る。


「私の車で行けばいいと思うんだよね」


「何人乗りなんですか?」


 桜が尋ねる。


「五人乗り」


「……五人乗りですか」


 桜が固まった。


 現在参加予定は六人。


 彩鼓。


 真宵。


 華。


 みなみ。


 桜。


 物理的に、全員は乗れない。


「荷物も積めますか?」


「後ろを使えば大丈夫」


 彩鼓は答えた。


「アンテナもポールも発電機も載るよ」


「発電機も?」


 華が驚く。


「フィールドデーだからね」


 彩鼓は当然という顔だった。


「電源があるとは限らないし」


「確かに」


 真宵も頷く。


 そこまでは問題なかった。


 しかし。


「彩鼓先輩」


 桜が恐る恐る聞く。


「運転歴は長いんですか?」


「うーん」


 彩鼓は少し考えた。


「免許取って半年くらい」


「半年」


「でも毎週運転してるよ」


「どこを?」


「家と大学」


「それだけ?」


「それだけ」


 桜は少しだけ不安になった。


 真宵も同じことを考えていた。


「高速道路は?」


「走ったことあるよ」


「何回?」


「2回。あ…でも新新バイパスは毎日乗ってるよ」


「……」


 真宵は黙った。


「でも無事故無違反!」


 彩鼓は胸を張る。


「それは立派ですけど」


 桜は苦笑した。


 すると。


「わたくしから一つ」


 澄香が口を開く。


「何?」


「彩鼓先輩のお車は五人乗りですし、わたくしはまだ運転免許を取っておりません。ですので、月潟財閥の運転手を立てて、一台で向かうという方法はいかがでしょう」


「えっ」


 華が目を丸くする。


「月潟財閥の運転手?」


「はい。必要であれば手配できますわ」


「それなら確実だね」


 みなみが頷く。


「安全面でも安心です」


 桜も同意した。


 真宵も、ほっと息をつく。


「それがいいかも」


「私も賛成」


 華が手を挙げる。


「車なら途中でサービスエリアや道の駅にも寄れるね」


「それも楽しそうです」


 桜が言う。


 だが。


「……」


 彩鼓は、どこか不満そうだった。


「彩鼓先輩?」


 真宵が様子をうかがう。


「どうかしましたか?」


「いや、その」


 彩鼓は腕を組んだ。


「せっかくなら、私が運転していきたいんだけど」


「え?」


「どうしても私も車を運転していきたい」


 彩鼓は子どものように言い張った。


「でも、五人乗りですし」


「そこをなんとか!」


「なんとかって言われましても」


 桜が困った顔をする。


「わたくしは免許を持っておりませんし、人数も合いませんわ」


「じゃあ、私が運転して、みんなは……」


「乗れません」


 真宵が即答した。


「一台では無理です」


「うう……」


 彩鼓は唇を尖らせる。


「でも、私の車で行きたい……」


 真宵は嫌な予感がした。


 このままでは、話が妙な方向へ転がる。


「なら、やっぱり1台で行くのはやめましょう」


「えっ」


「二台に分ければいいんです。彩鼓先輩はご自身の車を運転して、もう一台は月潟財閥の運転手さんにお願いする。それで解決です」


「でも……」


 彩鼓はまだ納得していない。


「どうしても私も車を運転していきたい」


 また同じことを言った。


「彩鼓先輩」


 真宵はため息をつく。


「その気持ちはわかりますけど、今回は人数の問題がありますから」


「むう……」


 彩鼓は机に突っ伏した。


「私、運転したいのに……」


「子どもみたいになってますよ」


 華が苦笑する。


「だって、せっかくの合宿だし」


「運転は合宿の目的ではありません」


 澄香が静かに言う。


「目的はフィールドデーコンテストですわ」


「それはそうだけど」


 彩鼓はまだ不満そうだった。


 真宵は、そんな彩鼓を見ながら、胸の奥に小さな不安を覚えていた。


 このまま本当に2台で行けるのだろうか。


 それとも、また何か起こるのだろうか。


 合宿まで、あと二週間。


 少しずつ準備が進み始めていた。


 誰もが。


 今年のフィールドデーコンテストを楽しみにしていた。


 ただ一人を除いて。


 真宵だけは。


 彩鼓がハンドルを握りたがる姿を思い浮かべて、小さくため息をついた。


「大丈夫かな……」


 そのつぶやきは。


 誰の耳にも届かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。