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秘策

 目を閉じたてから数秒経ったが、いつまで経っても首が切られる様子はない。僕はゆっくり目を開ける。

 天界大統領の刃は僕に届いていなかった。


 首を見ると、黄金に輝くシールドが、絶対防御が貼られている。

 ナオミの方を見る。

 ナオミは必死に絶対防御を限界させており、マミがナオミの後ろから、必死にナオミに魔導を供給している。

 しかし、ナオミとマミの必死の抵抗も虚しく、絶対防御はもうすぐ破られそうだ。ヒビトも必死に駆けつけているが、間に合いそうにない。


 ——すまないみんな、最後はあっけないものだ。


 僕は全てを諦めようとする……


「アスカ! 諦めるんじゃない『絶対防壁(改)』」


 聞き慣れた声が聞こえた瞬間、アスカの首元に新たな防壁が限界する。

 天界大統領のヤイバは、ナオミが限界させた防壁は突破したが、もう一つの防壁は突破できそうにない。


 天界大統領の一瞬のもたつきを見逃さなかったヒビトは、希刀を投げ、天界大統領を串刺しにする。


「グフ」


 っとよろめく天界大統領。

「アスカ、逃げろ!」


 再びヒビトが叫ぶ。アスカは、その声によって正気に戻る。


「逃すか!」

 天界大統領は渾身の力を込めると、たちまち防壁は吹き飛んでしまった。刃がアスカの背中に迫る。体勢を変えてもその刃を受け切れない。確実に直撃する。


「弟子に触れるな!」


 急に現れた人影は、見覚えのある刀でもって、天界大統領の刃を受け止めた。


「ソイニー師匠!」

「アスカ、遅れてすみません。早く引いてください。少しばかり時間を稼ぎます」

 ソイニー師匠は、間髪入れずに連撃を繰り出し、天界大統領を圧倒する。次第に後ろに引き下がる天界大統領。その様子を見つめていると、


「さあ、早くこっちに、アスカ」

「ユミ姉」


 ユミ姉が僕の腕を引っ張る。


「全く、まだ諦めるのは早いよアスカ。アスカが全く抵抗しないから焦ったじゃない。私の絶対防御が間に合ってしかも、天界大統領に通じたからいいけどお」

「ごめんなさい。だけど、勝てないんです。秘策も通じなかった」

「活路は必ずある。皆を信じて、運命を信じて、自分を信じて。アスカはこれまで幾度となく困難を乗り越えてきた。あなたと出会ってから私はずっと見てきた。アスカは強い。そして選ばれた人。あなたなら必ず天界大統領を倒せる」


 ユミ姉の自信に満ちた目つき。僕はユミ姉の言葉に幾度となく救われてきた。そうだ、まだ負けてない。負けが確定する前に諦めるなんて、僕らしくない。


「最後まで足掻いてみるよ」

「全力で私はバックアップするから」


 僕とユミ姉は姫様やヒビト、ナオミ、マミのところまで一旦退く。

 ナオミやヒビト、姫様から安堵の声、そして怒られたことは言うまでもない。


 一方、ソイニー師匠は天界大統領と激闘を繰り広げている。あの刀は、『一徹』。なぜソイニー師匠が一徹を使っているのか。不思議だったが、ユミ姉がことの成り行きを全て教えてくれた。


「ソイニー師匠はね、天界大統領の妹だったの。そして、初代魔導具士の妹でもあるの。だから一徹を使用できるみたい。それと、作戦よ。ソイニー師匠がある程度、天界大統領の体力を削ってくれるわ。変わるがわるスイッチし続けて、なるべく天界大統領に回復の隙を与えないようにする」

「だけど、それだといつまで経っても倒せませんよ」

「単調な攻撃を続ける理由は相手を油断させること。ソイニー師匠には秘策があるらしいの。それは一回しか使えない技らしいの」

「……その一撃必殺に全てをかけるんですね。ユミ姉」

「そうよ、それしか方法がないの」

「わかったよ」


 僕らはお互いに顔を見合わせて頷く。


「ユミさん、国軍はアスカやソイニーを援護すればいいのですね」

「そうです姫様。天界大統領に回復の隙を与えないよう、全力でお願いします」



 ———


「我が妹、ソイニーよ。まだ私に歯向かうのか」

「私はお前を兄とは認めない。初代魔導具士、アイシャ兄さんを殺したお前を」

「我々は、この狂った世界に秩序をもたらす必要があった。その必要性はお前も重々承知していたではないか」

「確かに、秩序を築く必要があった。しかし、もっと別の方法があったはず。下界を強制的に支配し、道具のように下界人をすり潰していく。そんな統治の仕方をしなくても、もっと違う、調和の取れた統治の仕方があったはず」

「ソイニー、お前はまだ理想から抜け出せてないな。下界人は醜い。利己的。横暴なのだ。そんな奴らを支配するのに強権力は必須であり、もはや私は支配に疲れたのだ。だから、全てを殺し、おしまいにする。下界を滅ぼすのは私の権利でもある。だから手を出すなソイニー。そしてその忌々しい、アイシャが作製した魔導無効化が付与された刀をしまえ。それでは私は倒せぬぞ」

「そんなことわかっている。スイッチ」



 ソイニー師匠の掛け声と同時に、今度はヒビトが前に出る。

 先ほどは急に加速した天界大統領に目が慣れず、吹き飛ばされてしまったが、今度はそのようなヘマはしまいと覚悟を決めてヒビトは剣を振るう。

 味方の援護も相まって、ヒビト単独でもなんとか天界大統領の攻撃を受けきっている。



「アスカ、ヒビトが時間を稼いでくれている間に秘策を伝えます」

 アスカの元に戻ってきたソイニー師匠は開口一番そう告げた。



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