終わりの始まり
「おはよう」
久々の魔専。クラスに入ると、クラスメイトが一斉にこちらを見る。
あの激戦の中、クラスメイトは欠けることなく全員健在だ。
「アスカ君。君って魔導具士だったんだね」
クラスメイトの一人が話しかけてくる。魔導具士は忌み嫌われる存在。今まで魔導具士であることを隠してきた。軽蔑されても仕方がないかもしれないため、僕は、そのクラスメイトの非難の言葉を待つ。
「ありがとう。アスカ君。みんなを守ってくれて」
予想外だった。非難されるかと思いきや感謝された。
「え? あの、僕は魔導具士だったことをみんなに隠してたんだけど……」
「確かにアスカ君が魔導具士であることには驚いたよ。魔導具士なのに強いことも。ただ、魔導具士が悪い奴っていうのは確かに昔から教えられてきて最初は怖いと思ったよ。だけど、アスカ君は僕らを守ってくれた。そんなアスカ君が悪い人なはずがない。僕らは、考えを改めないといけないねってみんなで話してたんだ」
他のクラスメイト達も頷く。
「僕たちはアスカ君の味方だよ。魔導具士だろうがなんだろうが、僕らは君を信じる。君はこれから天界大統領を討伐するんでしょ。最大限協力するよ」
あの激戦を戦い抜いたクラスメイトの顔つきは戦士の顔つきになっていた。この国を守りたい。魔導士としてのプライドを賭けて。そんな気持ちが皆を鼓舞していた。
「ありがとう。必ず勝とう」
僕はそう告げると自分の席に着く。するとヒビトやナオミ、マミが寄ってくる。
「アスカ、こうして魔専で会うのも久しぶりやな」
「そうだねヒビト。あの日、いきなり米帝からミサイルを撃ち込まれた以来だね」
「それで、今後の話なんだけど、いつ天界大統領に襲われてもおかしくない現状、常に二人一組か、4人で行動していた方がいいと思うんだ」
「確かに、それがいいね。それじゃあ早速なんだけど、今日やらないといけないことがあるんだ。魔専の地下にある天界に通じる秘密のゲートを破壊したいんだ」
「天界に通じる秘密のゲートが魔専の地下に?」
「うん、なんでそこにゲートがあるのかは分からないが、とにかくこのまま残しておくと天界大統領に使われてしまうかもしれない。だからその前に壊さないと」
「わかった。じゃあ、授業が始まる前に壊しに行こう」
僕らは、魔専の地下に向かう。魔専の地下の入り口は鉄柵で固く閉じられていた。爆破魔導で錠前を破壊し、地下へと降りていく。
地下には複数の部屋が点在し、それを一つずつ調べていくと最奥の部屋に大きな全身鏡が存在していた。
「これが天界へのゲート?」
ナオミが鏡の前に立ち、鏡の向こうを見据える。
ナオミの横に立ち、手を前に出し鏡を触ろうとする。
「ちょっと待って」
僕の手を掴んで制止したのはヒビトだった。
「アスカ、いきなり触れるのは危険すぎるよ」
「た、確かに」
「じゃあ、怖そう、誰が破壊する?」
「じゃあ、僕が明幸を使って破壊するよ。みんな下がっていて」
僕は、明幸を抜くと魔導を刀に通す。
「我、命に従いて明幸よ力を発揮……」
僕は詠唱し、明幸の斬撃を用いて鏡を破壊するはずだった。そのはずだったが……。
「グハ」
鏡から突然飛び出てきた人物に気を取られ僕は詠唱を止めてしまう。
「え、この人は誰?」
マミが目を丸くしながら尋ねる。
鏡から出てきた人物は傷を負い、虫の息であるが、虚な目で僕らを見上げると、か細い声で何かを発する。
「あ、あ、あなたは、もしや、ユキナ様の嫡男。わずかに面影が……、に、逃げてください。彼が攻めてきます。早く」
ユキナ様? ユキナとは僕の母親の名前だなぜその名を知っているのか。彼らが攻めてくる?まさか。
「アスカ、刀を構えて!」
僕と同じ思考をしたヒビトが僕に向かって叫ぶ。
「我、命に従いて明幸よ力を発揮せよ『斬撃』」
僕は、明幸に魔導を思い切り溜め鏡に切り掛かる。
——カキン
しかし、僕は鏡を着ることはできなかった。明幸は、鏡から伸びてきた剣によって、鏡を破壊することを防がれていた。
「あはは、本当に通じてやがった。ここは魔専の地下か? おい、目の前のガキ達」
鏡から出てきた人物……。僕らはその人物を知っている。
「ヒビト、コード999を発令。即刻退避! 僕が殿を務める。だから逃げるんだ」
チーム・ニベリウムのメンバー達は、突然現れた目の前の人物の強さを肌身で感じ、恐怖している。自然と、足が後方に動き、全速力で逃げ出す。
「潔いなアスカ。全く、アマテウスがこの鏡の位置を教えるのがもう少し遅ければ、壊されていたぞ。この反逆者が」
先ほど鏡から飛び出してきた瀕死の人物はアマテウスというらしい。確か、エレンが言っていた下界側の味方の天界人ではないか。
「アマテウス、俺は知ってるぞ。お前もユキナがこの鏡を使って下界に逃げる際に加担したんだろ。全く、至る所に反逆者がいてわしは疲れるわ。まあいい。では始めるか。天界大統領ダンテ・ニベリウムが地球終焉を告げる」
その男はそう言うと、詠唱を叫んだ
「カラド・ボルグ」
5色の玉が融合し、高熱と光が放たれる。その光はアスカめがけて放たれ。僕は防ぐ余裕もなくモロにその攻撃を喰らってしまう。
「おいおいおい、一撃で死んでしまっては誰が地球を守るのだ、誰がわしを楽しませるのだ」
天界大統領は不服そうな表情をしながら一歩踏み出す。その勢いにより土煙が払われる。
「おかしい、なぜ崩壊していないのだこの建物は」
天界大統領の放った攻撃の大きさからいって魔専が倒壊していてもおかしくない。しかし、魔専は今も健在だ。
天界大統領はもう一歩踏み出した時、天界大統領が起こした風圧で周りの土煙が完全に晴れた。
「なんと、そうこなくては」
天界大統領の目がとらえた光景。
それは、ナオミが現界させた『絶対防壁』を盾としたアスカとその仲間達。
彼らは、咄嗟の逃げたように見せかけて瞬時に体制を整えて、魔専自体も守ったのであった。




