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転生者アスカ

 ニールと対峙するも一つ、大きな問題が存在した。


「だけど、今殺すには惜しいな。本来ならば全力のお前を殺したかった。刀を持たぬお前を一方的になぶり殺すのは性に合わんが、仕方あるまい」


 そういうと、勢いよく斬撃を浴びせてくるニーナ。これまでの鍛錬のおかげで、なんとか’かわせているが、反撃できないのであればジリ貧なのは確実。反撃手段の思案に思考を奪われている時、思わず床に足を滑らせてしまい、体勢が崩れる。


「おおっと、ビッグチャーンス」


 そう言いながらニーナは素早くアスカに詰め寄り、右足でアスカを蹴り上げ、吹き飛ばす。


「切ってしまうと楽しみが減るから蹴り上げたが、おいおいおい、まさか死んじまってないよな」


 ニーナは、いつもと変わらず殺しを楽しむ。壁まで吹き飛ばされたアスカは、意識が朦朧として視界が霞む。


 ——今回ばかりはダメかもしれない。


 そんな気の迷いがアスカを包もうとした。その時であった。

『刀を呼べ』

 声が聞こえた。その声はつい先日聞いたばかりの声。

 アスカにはその声が誰なのか、自然にわかった。いや、分らされたという表現が正しいか。不思議な魔力と一緒に大量の情報がアスカの脳内に流れ込んでくる。


『私の後継者よ。世界を救う覚悟があるならば、民を仲間を愛する人を、天界も地球も救う覚悟があるならば、私が絶大な信頼を置いていた刀を呼べ。もしアスカに資格があるならば、刀がアスカを認めるならば、その刀はアスカの期待に応えるだろう。その刀の名は……<明幸めいこう>。全ての幸せを祈り明るき未来を切り開く刀。さあ叫べ我が刀の名を。今が世界を救う一歩となる』


 暖かい気が、アスナの体の芯まで流れ込む。僕は初代魔導具士の転生者。なぜ初代が転生を望んだのかは分からなかったが、今は少し分かったような気がする。世界を救いたかったんだ……初代は。


 僕は、世界を救う。


「こい! <明幸めいこう>」

「おいおい、急に叫んでどうした、気でも触れたのか?」


 ニーナは急に叫び出した僕を見つめて笑うが、その顔は次第に真顔になった。上空に真っ青な円形のゲートが限界していた。


「お前、魔道具もないのにどうやって魔導を現界させているんだ! お前はいつも俺を楽しませてくれるな。しかし、魔導を使われては厄介だ。もう死ね」


 ニールが本気で切り掛かってくる。ニールの刀がアスナの首にたどり着く1秒前に、アスナの目の前に光の速さで漆黒の鞘が突っ込んできて、ニールとアスナの間に割り込んでくる。アスナは柄をタイミング良く掴むと、鞘から刀を抜き出し、そして、ニールの刀に当てた。


 キン


 乾いた音が王宮中に響く。


「おい、お前、なんでその刀を持っている。なぜその刀が扱える。その刀は、選ばれしものにしか扱えない天界魔道具である伝説の刀。今は誰も扱うことが出来ずに天界宝物庫に収蔵されているはず。それなのになぜお前が」


 あからさまに狼狽えるニーナに構わず。僕は唱える。


「増幅用魔導回路移植!」


 まるでかつて自分が使っていたかのように、しっくりくる刀。おかげで魔導回路も簡単に移植することができた。

 ニールに向けて思い切り刀を振り上げる。『加速アクセルドライブ』。呪文を唱えたアスカは、『一徹』とは比べられないほどに、軽やかでかつ、素早く振り上げ、その刀は、一瞬のうちにニールの片腕を吹き飛ばした。


「……え、痛えてえええ」


 初めは何が起きたのか状況が飲み込めなかったニールは自らの右腕を見て、状況を理解し、痛みに悶える。

「お前……、一体何をした。何を! なぜお前がその刀を使えるんだ。通常ならば下界人が天界魔道具なんて使えるはずがない」

「僕は覚悟を決めたんだ。世界を救うと。誰にも僕を止めさせはしない」

「お前みたいな青二才に世界が救えると? ふざけるな。お前は俺に殺されるんだよ! 俺の誘いを断ったその日にその運命は決まってたんだよ」


 ニールの闘志が燃え上がり、体全体を炎が包み込む。そして、神速でアスカに突っ込んでくる。しかしアスナには見えていた。ニールの姿がしっかりと捉え切れていた。

 アスナは、ニールを見据え、<明幸めいこう>を構え、そして、一振りする。


「嘘だろ。俺は敗れたのか」


 ニールはその一言だけ残し、前方へと倒れ込んだ。<明幸めいこう>はニールの首を捉えていたのだ。倒れたニールの首がわずかにずれる。呆気ない幕引きだった。

「俺が敗れるわけがない」

「なんという生命力なんだ、首を切られてまで話すことができるなんて」

「俺は、俺は、アイナが死んだその日に決めたんだ、アイナを殺した下界人を全て殺し尽くすと、他の下界人も同罪だ。そして大統領はその地位を下さった。まだ殺し足りない殺し足りない、殺し足りないのに、俺はここでこんなガキに敗れたのか。ちくしょおおおぉぉぉ……」

 雄叫びとが次第に小さくなる。それに伴いニールの瞼は閉じられる。そして静寂が訪れた。

 これまで苦しめられてきた、家族を惨殺したニールをようやく仕留めることができた。その喜びが、心の奥深くから溢れてくる。ついに仇を打てたのだと。


「やはりそうだったのか」


 ニーナとの死闘を眺めていた天界大統領は至って冷静なまま、僕に話しかけてくる。


「ニールを倒すことができるのはこの世には私くらいのものだ。しかし、アスカお前はニールを倒した。そして、お前は今、私にも扱うことが出来なかったその伝説の刀を呼び起こし、使用している。この事実から考えられることはただ一つ、アスカお前、転生者だな? しかも初代魔道具士の」

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