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僕の責務

「さあ、ソイニーその奥義で全てを消し去りなさい!」


アーシャが、上空に待機しているソイニーに向かって指示を飛ばす。

ソイニーは、アーシャの指示に従い、手を上空に向け、そして、最終詠唱を開始する。


「‥‥‥我はそのために‥‥‥‥、杖を振る‥‥‥‥わん。いざ‥‥‥‥、だめ、だめ」


 しかし、何やら様子がおかしい。ソイニー師匠は上空に挙げている手をは反対の手で避けようとする。


「私は‥‥‥一体‥‥‥何を‥‥‥、ここは、東京!? 私は九州にいるのでは?」


ナタリーがかけた精神支配の魔術からソイニー師匠は、なんと抜け出しかけていた。


「え? まじですか? ソイニー先輩はさすがですね。二度も私の精神制御から逃れようとするよは。だけどそうはさせません。そのまま東京を破壊してもらいます」


 ナタリーはソイニー師匠の覚醒に驚きながらも、再び精神制御の魔導をかける。

 だが、ソイニー師匠も必死に抵抗する。


「う‥‥‥、私は、この街を、この思い出の詰まった街を‥‥‥壊したくない‥‥‥」


 ソイニー師匠は苦しんでいる。


「ソイニー師匠!」


 僕は、力を振り絞って、ソイニー師匠に向かって叫ぶと、ソイニー師匠は僕に気づいた。

その目に、涙を溜めながら。


「アスカ‥‥‥無事で‥‥‥良かった」

「僕は大丈夫ですが、ソイニー師匠、今あなたを助けます」

「いや、来てはダメ。お願いアスカ、私ごと魔導で‥‥‥吹き飛ばして。私は、操られているの。魔導を‥‥制御できなくて‥‥‥このままだと私は‥‥‥街を破壊してしまう。それだけは、私はしたくない‥‥‥この大切な街を破壊したくない。だからお願い。私を殺して‥‥‥魔導を打ち消して」

「そんな‥‥‥」


僕は、周りを見回す。

ヒビトは、父親の倒れた姿を見て、泣きながら呆然としている。

ヒビトも助けたい、だけど心ここに在らずの姫様も守らなければいけない。

マミやナオミだって救いたい。

そして、僕が不甲斐ないせいで、僕を死刑から救ってくれたユーリ・シルベニスタを手助けすることもできなかった。


「ああ、なんで僕にはいつも力がないんだ。努力しても努力しても、さらに高い壁が僕に立ちはだかる。いや、今は嘆いている暇はない、どうにかして打開しなければ。僕は決めたんだ。前世のようにもう誰も死なせないと」


 すると、姫様が急に目を開け、僕の腕を掴み告げる。

ヒビトの叫び声で、意識が戻ったみたいだ。

姫様は、周りをみて現状を素早く理解し、涙を一滴流しながら、僕に静かに告げる。


「アスカ、ダメです。あなたは仲間を連れて逃げなさい。私はここに残ります。ここに残らなければいけないのです。日本王国の姫ですから。トップが逃げるわけには行きません」


「何を言っているんですか、姫様! あなたが死んではこの国が終わってしまいます」


「アスカ、この国はもう負けます。あの天界魔導士達に勝てるわけがありません。ユーリがあそこに倒れていますね。もう終わりです。だけれども、1人でも多くの人をあなたには救って欲しい。だから逃げなさい。愛しい人、アスカ」


 姫は想いを告げたが、僕は到底納得できない。


「何を言ってるんですか姫様。まだ負けてませんよ」

「アスカ、ごめんなさい。毎回酷いことばかりで。私に関わってしまったがばかりに、辛い思いばかりさせてしまって‥‥‥」

「そんなこと言わないでください姫様」

「アスカ、お願いします。あなただけでも生き延びてください。そうすれば私の心も晴れます」

「そんな‥‥‥」


 僕は絶句する。全く言葉が出てこない。

 姫は、司令官として敗戦の責任をとりここで死のうとしている。

 確かに、これから大逆転なんて考えつかない。

 おそらく、負けてしまうだろう。


 だけど、姫様は死なせたくない。

 もう二度と大切な人を失いたくない。

 だから、僕は、この身が粉々に砕かれようと、最後まで皆を守り続ける、それが僕の覚悟だ。


「ふざけないでください。姫様」


 僕は今までにないくらい強い語気で姫様を叱る。


「国の代表だか、司令官だか知りません。死ぬなんて簡単に言わないでください。あなたは死にません。私が死んでも守りますから」


 僕は、姫様を再び抱き締める。


 しかし、姫様は困惑している。

「アスカ、これは命令です。私はアスカに死んでほしくない。だからあなたは逃げてください」

「いや、僕はその命令には絶対従えません。僕は絶対あなたの側を離れません。たとえ、罪に問われようとも」


 僕は意志の硬さを姫様に伝える。


「アスカ、あなたは本当に‥‥‥馬鹿者です」


 少し僕の頬が温かくなり、濡れる。

 姫様は静かに泣いている。僕を強く抱きしめながら。


 そうと決まれば、最後まで戦わなければ。

 しかし、周りの魔導士は皆、アーシャの攻撃の余波で傷ついてしまっている。


僕は、最後の力を振り絞って、無言で立ち上がり、上空に帰っていったロイス、アーシャ、ナタリーを睨みつける。

そんな僕の姿を見て、僕が刺し違えて、ロイス達を倒そうとしていることを察したソイニー師匠が僕を必死に諭す。


「‥‥‥だめ、アスカ、私のことはもういいから、1人でも東京の人を救うために動きなさい。‥‥‥ここであなたが死んでしまったら、助けられる人も助けられません」

「ソイニー師匠、僕は、あなたの弟子になれて本当に光栄でした。ただ、すみません。僕は最後まで戦います」


「いいねいいね、師弟愛が詰まってるね。だけどそろそろ、くどいから死になさい。ナタリー、ソイニーに命令しなさい。攻撃開始と」

「はーい」


アーシャに言われたナタリーは、ソイニー師匠に命令する。


「さあ、ソイニー先輩『攻撃せよ!』」


「——っく、やめてーーー」


ソイニー師匠が現界させた隕石の一つが僕めがけて落ちてくる。

あんな大質量な隕石どうすることもできない。

大見得切って立ち上がった僕は、やはり無力だ。

だが、僕は、『負けない!』


怒りのせいか、体の底から魔導が溢れる感覚が身を覆う。

僕の体に何やら不思議な変化が起こっている。





「時は満ちました。今がその時です」




 ちょうどその時だった。

 僕の頭の中で声が響いたのは。


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