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旧同士

 九州が消滅する約12時間前


『こちら天界魔導士特殊部隊アタッカーこれより降下作戦に移行する。降下開始!」


 天の川が空にかかり、その下を流れ星が流れる。

 そんな幻想的な夜空に一つの浮かぶ赤い点。

 その点は、航空機から飛び降りた天界魔導士の降下部隊が発する光。

 彼らは人知れず、極秘任務のために九州に降り立つ。


 その狙いは、ソイニー帝級攻撃魔導士……。


 —————————

 天界魔導士が天高くから降下している時、ソイニー師匠やロージェ先生ら、福岡天神地区で夜戦をしていた。

 街はすでに炎に包まれ、絶え間なく聞こえる詠唱と銃声、砲撃音。

 並の精神では気が狂ってしまうくらいの壮絶さ。


 そんな中、ソイニー師匠は縦横無尽に飛び回り、帝級範囲魔導で、一面の敵を薙ぎ払う。

 目の前の全ての敵を殲滅し、別の地区の応援に回ろうとしたその時、ビルとビルの間の路地に逃げ込む中つ国魔導士の姿を見つける。


「ロージェ、私は残党を殲滅するから、あなたは先に他の地区の救援に向かって」

「ソイニー隊長! 了解です!」


 ソイニー師匠は、その魔導士を追いかけ路地に入る。

 グングンとスピードを上げ、すぐに逃げる魔導士に追いつく。

 詠唱を始め、止めを刺そうとする……と、突然、逃げていた魔導士はしゃがみ、しゃがんだ魔導士の目の前から杖を持ち今にも攻撃を放ちそうな魔導士が急に現れ、ソイニー師匠目掛けて魔導を放つ。しかも、無詠唱で。


爆裂弾ボンバー


「罠!? 我が命に従いてこの身を守りたもう、堅牢防壁ソリッジシールド


 ソイニー師匠はすぐに盾を現界させ相手の攻撃を防ぐ。


「無詠唱で、魔導を現界させた? まさか」


 ソイニー師匠は相手の素性に気づく。

 すると、無詠唱で魔導を現界させた魔導士が薄気味悪い笑顔をソイニー師匠に向け……、



「よう、ソイニー、久しいな」


 と声をかける。


「あ、あなたは、ロイス・ハミルトン! なぜ天界帝級魔導士のあなたがここに!?」

「は、は、は、いつの時代の話をしてるんだソイニー。俺はお前と一緒に天界を守っていた時とは違うのだ。俺はもう皇級攻撃魔導士だぞ」


 ソイニー師匠は、目の前で笑っているロイス’を見て、絶句する。

 中つ国と米帝だけでなく、天界人もは参戦してきてしまっている。

 これでは、日本王国の勝ち目は皆無に等しくなってしまう。

 しかし、この状況にさらなる追い討ちがかかる。

 ロイスの後ろからもう1人人物が現れる。


「久しぶり、ソイニー。元気そうで何より」

「アーシャ・ロベリス先生!」

「覚えていてくれてありがと。私の優秀な弟子、久々に会えて嬉しいわ、ソイニー」


 アーシャ・ロベリス天界皇級攻撃魔導士。

 そして、ソイニー師匠に魔導を教えた先生。


「どうして2人がここにいるんですか⁉︎」


 ソイニー師匠は、杖を構えながら訊く。

 すると、アーシャが一歩前に出てソイニー師匠を宥めるように話す。


「怖がることはないわ、ソイニー。私達はあなたを助けにきたのよ」

「私を助けに? 私は助けなんて求めていません」

「これから、助けを求めるようになるのよ。今回、天界大統領は本気で日本王国を滅ぼし、天界人が食す用の魂を日本王国民を使って養魂し、天界に出荷するつもりだわ。そして、ソイニーが日本王国殲滅に力を貸すならば、天地大戦でのソイニーの裏切りを許し、死刑を取り消す恩赦を与えると言っているわ。下界人なんて放っておいて天界な戻ってきなさい。ソイニー」


 アーシャが言い終わるとロイスも続けて口を開く。


「そうだぞ、ソイニー。また俺と一緒に下界を征服しようじゃないか!」




「……」




 沈黙が場を支配する。

 しかし、ソイニーは沈黙しながらもまっすぐ昔の魔導の先生、アーシャを見据える。


「あなた達はまだ、そんなことを言っているんですか?」

「ソイニー、言葉は気をつけて発しなさい。これは最初で最後のチャンスよ」


 アーシャは今度は子どもを嗜めるように言う。


「私は、長らくこの日本王国で暮しました。彼らは強く、優しく、辛いことがあっても逞しく生き、人生を必死に生きていました。その姿は、天界で教わったような、怠惰で醜く、人の不幸を望むと言った姿とは程遠い。そして、私は悟りました。天界人も下界人は、少しばかり魔導の得意不得意があるだけで、ほとんど変わらない、同じ生命なのだと。だから。天界人だから下界人を奴隷のように征服していいなんて道理は、全く通じません。私は、最後まで日本王国のために戦います」


 ソイニー師匠は、声を高らかに響かせ、その高貴なる意志を叫ぶ。


「やっぱりこうなったわね」

「そうですね、アーシャ様、予想通りすぎて、清々しいです。昔から融通効かないわ、傲慢でしたからね。皇級魔導士が2人目の前にいて敵うわけがないと頭ではわかってるくせに」

 アーシャとロイスがため息を吐く。


「そうね、じゃあ無理にでも連れて帰りますか。こっちに来てください。ナタリー」


 アーシャは後ろの方にいた人物を呼ぶ。

 身長はソイニー師匠くらいに小さく、おっとりした顔つきの少女が現れる。


「ソイニー先輩お久しぶりです」

「ナタリーあなたまでいたの?」

「久々の再会で、お話もたくさんしたいところですが、すみません。我が命は、自我を犯し精神を蝕む『精神制御メンタルコントロール

「なんですか? 私を支配するつもりですか! うぐっ」


 ソイニー師匠は抵抗する間も無く、精神性魔導をかけられる。

 ソイニーは、その場に崩れ落ちる。

 その好機を見逃さずに、ロイスとアーシャはソイニー師匠を取り押さえる。

 しかし、ソイニー師匠はこの状況下でも諦めていなかった。


「まだ、私は‥‥‥負けるわけには‥‥‥行かない!」


 なんとソイニー師匠は己の胆力だけで、精神性魔導を打ち破ってしまった。


「なんと、さすがはソイニー、自ら精神支配を破るとは。だけど、身柄は抑えましたから、身動きは取れないですよ」


 アーシャは、ソイニーの才能に驚きながらも、冷静にソイニーの身柄を拘束し続ける。

 すると、地面に押さえつけられたソイニー師匠の顔の近くまでナタリーが近づく。

「やっぱり、ソイニー先輩を精神支配するには、動揺させて精神の奥深くまで支配しないと無理そうですね。だけど、それをやるとほとんどの人は、精神が壊れてしまい廃人になってしまうんですが、どうしますか? アーシャ様」


 ナタリーはアーシャを見上げる。


「そうね、抜け殻みたいになっても天界に帰ってきてくれれば、私がお人形さんのように介護するから、廃人にしてしまっていいわよ。ナタリー」

「分かりました。私も、廃人になったソイニー先輩で遊びたいですし。本気で精神支配しますね」


 ナタリーは子どもが新しいおもちゃを与えられた時のような笑顔をソイニー師匠に向ける。


「や、やめなさい。ナタリー」


 ソイニー師匠は、皇級魔導士2人から身柄を拘束されて、なすすべがなく、言葉でしか威嚇できない。

 しかし、そんな威嚇を御構い無しに、ナタリーは話を続ける。


「ソイニー先輩。面白いことを教えてあげます。ソイニー先輩って、下界人を愛してしまったがために、下界で過ごしてきたんですよね。そして、その下界人との間に1人の男の子が生まれた。しかし、残念なことに、その男の子は、天地大戦の最中、一歳足らずで下界人と一緒に亡くなってしまった。そうですよね」

「今更、そんな話で、私を動揺させようとしても無理ですよ」

「まあまあ、そんな焦らないで、話は最後まで聞いてください。先輩。実はですね、ソイニー先輩の息子さんって死んでないんですよ」

「え!? そんなバカな、私はこの目で見たのです。愛する我が子が、目の前で天界人に‥‥‥あやめられるところを‥‥‥生き残っているはずがありません‥‥‥」

「それはですね。全部私が仕組んだことなのです。ソイニー先輩の子どもなんて、是が非でも欲しいじゃないですか。愛でて舐めて可愛がりたいじゃないですか。だから、吹き飛ばして殺すと見せかけて、拉致して来てもらったのです」

「そんな、そんなことが‥‥‥」

「ソイニー先輩は、しっかり息子さんの亡骸を確認しましたか?」

「いや、それは、爆風で何もかも‥‥‥」

「本当は、吹き飛んでないですよ。そして彼は今も生きています。私が天界で育ててましたからね。だけど、数年前に養子に出したんですよ。ソイニー先輩の攻撃から身を守るために人質として欲しいと言う人がいましてね。そして、天界大統領もその人に引き渡せとおっしゃるのであげちゃいました」

「ナタリーそれは本当なのですか!?」


 ソイニー師匠は目の色を変えて、必死にナタリーに訊く。


「いいですね。その困惑に満ちた表情。その表情を今度は絶望に変えたいですね。もちろん今話したことは、本当ですよ。何一つ嘘はついていません。それでですね。誰にあげたか知りたいですよね」

「誰に渡したの!? 言いなさいナタリー」

「それはですね。米帝大統領ですよ。米帝大統領次男、エレン・ミカエル。その子があなたの息子です」


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