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守る時

「早くこちらに逃げてください」


 僕らは海岸付近まで移動し、王国民の避難誘導に従事する。

 まだ、逃げ遅れている人たちが大勢いる。


 東京を守る王国軍第一師団は前線で防衛に当たり、王国魔導軍大学からも全ての魔導士が戦場に駆り出されており、僕らはお互いに役割分担をして任務をこなす。


 だけれども、準備不足や不意打ちな宣戦布告が相まって、到底捌き切れないほどの人が取り残されている。


「アスカ君! 師団から連絡で、海岸線に米帝が上陸! 米帝は潜水艦から部隊を送り出しているみたいです。そして、後方には大規模揚陸艦隊が接近。接岸されれば、数個師団分の敵が上陸する可能性あり」


 通信役も担うマミから無線連絡が入る。

 状況は最悪だ。


「了解! だが、まだ避難が完了していない。よって、僕らはここで敵を迎え撃つ。全員即時攻撃できるよう準備して!」


「「了解」」


 全員の応答を聞いたその時だった。


「魔導攻撃接近!」


 ヒビトからの一報。

 東京湾の方を見る。

 そこには、30個程度の火球が現界し、こちらに向かってきていた。


 僕は咄嗟に指示を送る。

「ナオミは出来るだけ火球を抑えて、ヒビトと僕は攻撃を火球にぶつける」


 その指示と同時に、皆詠唱を始める。

 僕も、間髪入れずに名刀『一徹』を抜き、詠唱する。


「我の矛は幾重にも広がり、皆を守る『多弾頭水球マルチラウンド』」

 僕とヒビトはそれぞれ10個ずつ水球を現界させ、敵の火球にぶつける。


 火球はたちまち蒸発し、残りの火球は、ナオミの「複数防壁」により防ぎ切る。


「敵部隊視認!」


 ヒビトが叫ぶ!

 敵は7人。小隊規模である。

 しかし、こちらが、数的不利。

 逃げようにも、王国民の避難が間に合ってない。


「ここを防衛する。マミは後方で治癒魔導待機。ナオミは適宜盾を現界させて、敵が突っ込んできたら僕とヒビトでカバー!」



 僕らは隊列を組み、敵の侵攻に備える。

 すると、目の前の敵は一つの盾を現界させて、その後ろに隠れてしまった。

 が、次の瞬間、敵の盾の後方より光り輝く物体が現界する。


「あ、あれは、光球!」


 エレンとの模擬戦で見た魔導。

 しかも、エレンが現界させた光球よりも規模が大きい。


「ア、アスカ! 私、あれは防ぎ切れないわよ! 一個ならまだしも複数の光球なんて」


 ナオミが冷や汗をかきながら僕を見る。

 どうすればいい、どうすれば乗り切れるんだ。

 僕らも攻撃をぶつけるしかない。


「ナオミはMAXパワーで堅牢防壁を現界させて、僕とヒビトもMAXパワーで攻撃をぶつける!」


 そして、敵が光球を僕らに向け放つ。

 それと同時に、僕らも攻撃を放つ。


 僕とヒビトの火球により2つの光球を消滅させることに成功。

 しかし、未だ3つの光球がこちらに向かってくる。


「アスカ、ヒビト! 後ろに下がって、なんとか食い止めてみるから」


 ナオミが防御姿勢を取り、堅牢防壁にどんどん魔導を供給していく。

 しかし、やはり3つの光球は防げそうにない。

 マミの治癒魔導で着弾と同時に治癒したとしても僕らは助からない可能性の方が高い。


 そして、ついに光球が目の前に迫る。

「みんな伏せろ!」


 僕がそう叫び、光球に備えようとした時だった。





「はいはいはいはい、我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防壁』」


 突如、後方から快活な叫び声と同時に、黄金に光り輝く盾が目の前に現界する。


 この黄金の盾は、『絶対防壁』。

 ということは、今来たのは……。


「アスカはいつもピンチに直面しているな〜」


 そこには、笑顔満点のユミ姉と魔導軍大学の仲間が立っていた。



「ユミ姉!」

 僕は嬉しさのあまり、大きな声でユミ姉を呼ぶ。


「ソイニー師匠からアスカのことを頼まれてるからね。絶対に傷つけさせないし。私の弟の二の舞にはさせないから! それじゃ、チーム・クルルギ 行くよ!」


 ユミ姉のチームは7人。

 7人構成は魔導軍の基本。

 それは米帝でも日本王国でも変わらない。


 魔導軍大学には上級魔導士しか入学できないため、今目の前にいるユミ姉の仲間は皆上級魔導しということだ。


 ユミ姉の仲間たちは散開し、四方から敵に攻撃を加え、あっという間に敵を撃破してしまった。

 そして、ユミ姉を残して、他の人たちは、前線に向かってさらに進軍していった。

 援軍も続々と到着し、王国民の避難を支援する。


 ユミ姉はというと、僕らの方に近寄ってきて、

 そして告げる。


「アスカ達は、私と一緒に王宮にいる指揮官の護衛任務が言い渡されたわ。私はそれを伝えに来たの」

「指揮官の護衛任務? 一体、今、誰が指揮を執っているんですか!? 王宮からの命令なんて、これまで一切届いてませんよ。僕たちに」

「それはそうよ。第一王子は九州にいるし、王は米帝に亡命しちゃうし、東京を指揮する体制なんて整っていないんだから。だけど、今、1人の指揮官が名乗り出て、必死に体制を整えようとして、やっとその体制が機能し始めて、東京防衛のために巻き返しを図っているところよ。そして、その指揮官は……」

「その指揮官は?」


 僕は固唾を飲んでユミ姉の言葉に聞き入る。


「アスカならすぐに分かるでしょ! その指揮官は姫様よ!」


「「え? 姫様!?」」


 僕だけでなく、チーム・ニベリウム一同が驚く。

 姫様が指揮官に名乗り出て、この戦場の指揮をしてるって!?

 こんな苦戦の中、姫様は王国民を守るために立ち上がったのか。


「だけど、ちょっと待ってください」


 突然、ナオミが話に割って入る。

 ユミ姉や僕らはナオミの方を見る。

 ナオミは、少し話ずらそうにしながら口を開く。


「あの、さっきの王様の話によると、姫様も天界人の血を引く者ですよね。天界の味方なんじゃないですか?」


 もっともな指摘であった。

 しかし、ユミ姉は首を横に振りながら、間髪入れずに回答する。

「確かに、姫様はその理論でいくと、天界人の血を引くということになるわね。だけどね、たとえ天界人だとしても、今姫様は、王国民を守るために必死に指揮してるの。この目で私は見てきたの。あの姿を見たならば、そんな疑念吹き飛ぶわ。姫様は、正真正銘、日本王国のために戦っているわ」


「すみません、失礼なことを言いました」


 ユミ姉の覇気迫る回答にナオミはすんなりと自分の意見を取り下げる。


「他に、訊きたいことはあるかしら? ないようだったら急ぎましょう。アスカ! こういう時だからこそ、あなたがそばにいてあげなさい。今は非常時だから、体裁とか過去のこととかどうでもいいわ。姫様を守りなさい」


 ユミ姉はまっすぐ僕を見つめ、そして微笑む。

 姫様を守らなければならない時が来た。

 姫様と別れたあの日から、夢見て、そして目標にしてこれまで頑張ってきた。

 今がその時ならば、僕は全身全霊を尽くして、姫様を守らなければならない。


「ユミ姉、それじゃあ行こう! チーム・ニルベスタはこれより王宮に向かう!」

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