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結束

「こちょこちょこちょ」


 リビングのソファに座っていた僕をソイニー師匠は思いっきりくすぐりだす。


「ソ、ソ、ソイニー師匠、なんですか一体」

「これはアスカへの罰なのです!」


 ソイニー師匠は楽しそうにくすぐってくる。


「まあ、これぐらいでいいでしょう」


 やっとソイニー師匠はくすぐりを止め、僕の横に座り直す。


「一体どうしたんですか、ソイニー師匠」

「アスカ。私に何か隠してませんか?」

「え?」


 隠す?

 この前師匠のプリンを食べてしまったことかな?

 それとも、ロージェ先生がお寿司を奢ってくれたこと?


「いや思い当たる節はないです……」

「アスカ、あなた魔道具を作ったでしょ?」


 あ! あれだ、999魔道具のことだ。

 そういえば、ソイニー師匠にはまだ伝えてなかったし、しかも、ソイニー師匠が知り合いの魔道具士に依頼して作成してもらったことになってたんだ。

 やばい。


「今日の会議で、ユーリ・シルベニスタに訊かれて戸惑いましたよ。

 なんとか、機転を聞かして誤魔化しときましたが」

「ソイニー師匠すみません!」

「まあ、アスカが魔道具士であることがバレてしまうのではないかとヒヤヒヤしましたが、大丈夫だったので今回はくすぐりだけにしておきます。これからは気をつけてくださいよ」

「はい……すみません」

「それよりも良い魔道具を作りましたね。仲間のためを思って作った優しい魔道具。

 このおかげでマミさんは助かった訳です。よくやりましたねアスカ。誇らしいです」


 ソイニー師匠に怒られるかと身構えていたが、拍子抜けするぐらい魔道具について褒められた。

 僕は申し訳ないと思いつつ、内心とても嬉しかった。

 だって、師匠に褒められたのだから。


「アスカ、そのコード999用の魔道具って、私やユミの分も作れたりしませんか? とても便利そうなので、欲しいのですが」

「それはお安い御用です。師匠やユミ姉のためなら もちろん作ります」

「ありがとう」

「あの、ソイニー師匠、僕やレイト兄の処遇はどうなりましたか?」


 僕はやっと気になっていたことを切り出す。

 ソイニー師匠は少し伏し目がちになりながら告げる。


「アスカはお咎めなしよ。だけどレイト君は、退学処分になったわ」

「た、退学!?」

「まあ、普通なら逮捕されていてもおかしくないんだけどね」

「そうなんですね……まあ、当然の結果だと思います。ただ、腐っても兄なので少し寂しい気持ちにはなりますが……」


 気落ちしている僕をソイニー師匠は優しく僕の頭を撫でる。


「それにしても、アスカも冷静さを取り戻してくれて嬉しいわ。アスカが暴走しているってロージェから連絡が入って、急いで魔専に行くと、アスカがとても怒っていて、あんなに怒っているアスカを見たことなかったからどうなっちゃうかと心配したのよ」

「心配させてすみません。あの時、師匠のビンタで正気に戻りました」

「ごめんね、だけど、ビンタくらいしか思いつかなくて‥‥‥。初めてよ、ビンタを人にぶつけたの」

「僕も初めてでした。ビンタされたの‥‥‥」


 僕は昨日のことを思い出す。

 ナオミの盾に押しつぶされながらも怒りを剥き出しにし、レイト兄を殺めようとしてしまった自分を。

 あんなに冷静さを欠いたのは初めてだったかもしれない。

 僕は自分の手を人を助けるためでなく、危うく殺めるために使いそうになった。

 そして、マミの『助けて』という言葉がなければ、レイト兄というトラウマを自分で乗り越えることもできなかった。

 僕もまだまだ未熟者だ。


 —————

 処遇会議の次の日から僕らはこれまで通りに学校に通いだした。


「みんな、本当にごめんなさい」

 学校に着くなり、僕はヒビトやナオミ、そしてマミに取り乱してしまったことを謝った。

 みんな優しく、「気にすることはない」と言ってくれたことがとてもありがたかった。


「あの、アスカ君、私の方こそありがとう。あの時アスカ君が来てくれたから今の私がいます。アスカ君が来てくれた時、私、本当にとても、嬉しかったの。あの、これは感謝の気持ちとして受け取って欲しい」


 マミは、照れながら、僕に助けてくれたお礼にと大福をくれた。

 なぜ大福なのかとその場のみんなが一瞬思ったが、その気持ちは飲み込んでおいた。


「それにしても、アスカがあんなに熱くなるところを初めて見たよ。アスカの刀を抑えるのが大変で、実は魔導で『身体向上』させてやっと止めることができたんだ」


 ヒビトはアスカの刀の強さに感心している。


「私もびっくりしたんだから。コード999が来たと思うと、ヒビトはすぐに飛んで行っちゃうし、駆けつけて見たら、アスカとヒビトが対峙してるし」

「ナオミもごめんね」


 あの事件により、幸か不幸か、雨降って地固まるなのか、チーム内の結束は少しばかり強まった。



「あ、一限って、魔導演習じゃないっけ? 早く着替えていかなきゃ」

 ナオミが、一限までの時間が少ないことに気づく。

 僕らは、会話を済ませ、準備に取り掛かる。



 準備を済ませ、演習場に行くと、ホワイトボードには自習とデカデカと書かれていた。

「なんだ〜自習だって、アスカ〜じゃあ、ちょっと私に攻撃をぶつけて見て、新しい魔導を試して見たいんだ」


 ナオミが自習という言葉に、少し残念がりながら、僕の袖を引く。


「まあ、いいけど、どんな魔導を習得したの?」

「よくぞ聞いてくれました。なんとですね、『多数防壁マルチシールド』と『反発防壁レスチエーション』よ」


 おーいつの間に二つも習得していたのか。

 僕はまだ『散弾バースト』しか習得していないのに。

 すごいなナオミは。


 僕は、球体魔導をナオミに向かって発射する。

 間髪入れずに次から次へと。


 一方ナオミは、『多数防壁』を使い、5個の防壁を出し、僕の攻撃を全て防ぎきった。


「ナオミの盾は本当にすごいね」

「まだまだよ。次は『反発防壁』を使ってみるからお願い」


 仰せのままにと言いながら、先ほどより大きめの球体を一つ限界させ、ナオミに向かって発射する。


 ナオミは、すぐに詠唱を始め、


「我は、全てを拒絶し、跳ね返す『反発防壁レスチエーション』」


 少し大きめの盾が現界し、僕の攻撃と接触する。

 接触したが、爆発などは起こらず、僕の放った球体はナオミの盾にへばりついている。


「お、重たい、だけどなんのこれしき」


 ナオミは、めいいっぱい踏ん張ってから、盾をおもいきり前に押し出した。

 すると、僕の出した球体は見事、跳ね返り僕の方に返ってくる。

 そう、僕の方に。

 ってあれ、僕の方に返ってきちゃったらダメなんじゃないの?


 僕が予想外の出来事にあたふたしている間に、僕に、ナオミが跳ね返した僕の攻撃が当たった。


「痛〜」

「アスカ、ごめん、大丈夫!?」


 ナオミが心配そうにすぐ駆け寄る」

 まあ、腕も動くし、足も折れてなさそうだ。

 良かった、手加減した球体をナオミに発射して。

 もし、魔導を全力で詰め込んで発射してたら、僕が死んでたかもしれない。


「あ、大丈夫だよ。それにしてもナオミはすごいな」

「ごめんね、他の方向に飛ばせば良かったんだけど。つい、まっすぐ返しちゃった。えへへ」


 ナオミは、少し舌を出しながら、反省する。


「アスカ君大丈夫?」


 僕に魔導攻撃が当たったところを見たマミも僕に駆け寄ってきた。

 その後ろからヒビトも駆け寄ってくるのが見える。


「マミ、大丈夫だよ。かすり傷程度だから」

「あ、少し血が出てる。今治癒するから」


 マミは倒れている僕の隣に座ると、僕の手を持つ。

 持ったはずなのだが‥‥‥。


「あっ‥‥‥」


 と言うと、顔を赤らめながらすぐに手を離してしまった。

 だが、一度首を横に振ると、もう一度、手を握り、詠唱し、治癒魔導を僕にかけてくれる。


「マミも、治癒魔導が上達してるんだね。傷の治り具合が早いや」

「私も毎日ちゃんと修行してるからね。もう大丈夫だよ」

「ありがとう」


 僕はマミに感謝を告げると、立ち上がる。


「そういえば、ヒビトって上級魔導士なんだもんね。あ〜私ももっと強くなりたいな〜」


 僕の横にいたナオミが唐突に話始める。


「どうしたの急に」


 僕はナオミに聞き返す。

 ナオミは少し空を見ながら、思いを告げる・


「いや、色々な魔導を習得するのは楽しいんだけど、もっと強さの底上げというか、つまり上級魔導士とかになって人の役に立ちたいなって」

「そうだよね。僕もそれには賛同。もっと強くなりたい」

「やっぱ毎日の鍛錬が重要だよね。私も将来は、ユミさんみたいに『絶対防壁アブソリューションシールド』とか使えるようになるのかな」

「どうなんだろうね。あの魔導は特殊だし‥‥‥あ、そうだ、本人にコツとか聞いてみれば?」


 僕は妙案を思いつく。

『絶対防壁』は使える魔導士の絶対数が少ない。

 そのため、教えてくれる人がいないため、みんな習得できないのも、絶対防壁をみんなが使えない理由の一つであった。

 それならば、近場に『絶対防壁』を使える人がいるんだから訊けばいい。


「え? ユミさんに直接習うってこと?」


 ナオミは今日一番の狼狽を見せる。


「そうそう、ユミ姉はいつも家にいて暇そうだし。時間あると思うよ」

「え、そんな、それは願ったり叶ったりだけど、てかめちゃくちゃ嬉しいんだけど、本当にいいのかな?」

「たぶん大丈夫だと思うけどな。なんなら今日帰りに寄ってってみる?」

「え? いいの!?」


 ナオミは目を輝かせて食いついてくる。

 こんなに真剣で嬉しそうな人を見るとこちらまで嬉しくなって気分が良くなる。


「その話いい話じゃないか、僕も行きたいな」

「私もアスカ君の家に行ってみたいです」


 横で話を聞いていたヒビトやマミは、ただ単純に僕の家を見てみたい感じであったが、乗り気である。


「そうとなれば、今日の放課後の反省会は僕の家でやろう」


 とは言ったものの、いきなり家に呼んで良かったのだろうか。

 家の掃除とか、ソイニー師匠は色々したがるだろう。

 まあ、後で連絡しておけば放課後まで6時間ぐらいあるし、なんとかなるだろう。


 こうして、放課後、僕らは一緒に僕の家に向かった。


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