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仲間を守るためには

 魔専入学から3週間が経った。


 魔専では、数学や科学などの一般教養や魔導理論の座学の他に、実践演習としてチームの連携の仕方や防衛戦・奇襲など実戦で役立つ技能を学んでいる。

 放課後はロージェ先生やソイニー師匠の元で刀や魔導の修行をする。

 こんな感じでかなり充実した生活を送っていた。


 ただ一つだけ、チームリーダーになってか、,とても気になってるものがあった。

 それは「コード999」

 公的機関や魔導士などが、味方の魔導士に緊急救援要請する時に発するコード。


 チームリーダーとして、チームメイトの安全を守りたいが、どうすれば守れるのか。

 隙間すきま時間にそんなことを考えていた。

 そして、ある日の放課後のロージェ先生との稽古中のこと……



「ほれほれ、アスカ、今日は稽古に身が入ってないぞ。

 ヒビトがいないから、やる気が起きないのか?」


 ロージェ先生は、身の入らない僕を心配する。

 確かに、今日はヒビトがお父さんの手伝いで王宮に行ってしまっているから張り合いがないのは事実だが、実際にはどのようにチームメイトを守ればいいか考えていた。



「ロージェ先生、すみません。考えごとをしてました」

「考えごととはどうしたんだ」

「あの、チームリーダーとして仲間を守るためにはどうしたらいいって考えてました。特に効率の良い、コード999のチーム内の共有方法がないかと……」

「なんじゃ、そうだったのか。大体みんなコード999を携帯電話やメッセージ、無線で伝えておるぞ。かならずしも効率的とは言えないがな。それでも、これまで多くのものが命拾いしてきておる」


 やはりみんな文明のりきである科学のちからを使って緊急事態の情報を共有しているのか。


「まあ、魔導士だったらコード999用の魔道具があればさらに効率良く情報共有できるかもしれんがな。まあ、そんな魔導具はないがな」


 魔導士だったらコード用の魔道具があれば……


 それだ!


 コード999を発出できる魔導具を作ってしまえばいいんだ。

 前に姫様との通信用魔導具を作ったことがあったから、それを応用すればできるはず。


「ロージェ先生、それですよ。コード999発出用魔導具を作ればいいんです!」

「確かに我々魔導具士の才を持つ者なら作製することは可能だろうが、皆にはなんていうんだ? まさか自分で作ったとは言うまい」

「そうですね。まあ、僕が魔導具士だとバレないようにソイニー師匠から腕のいい魔導具士を紹介してもらったとでもしておきます」

「まあ、それならば信じてもらえるか」

「あの、ロージェ先生、作成にあたって先生の工房を貸していただけませんか?」

「おーいいぞ。自由に使いなさい」


 その日の稽古の後、僕はロージェ先生の工房に入り浸り、姫様に渡した連絡用魔導具を改良して、一定以上の強い魔導を瞬間的に流すと電波を周囲に発し、コード999の電波が圏内の仲間に通報できる魔導具を作り終えた。

 流石に位置情報を特定する機能は付けられず、それは携帯のGPSに頼ることにしよう。


 次の日、早速チーム全員にコード999発出用魔導具、通称『999魔導具』を渡した。


「アスカ、これって何?」


 ヒビトが不思議そうに魔導具を見ながら僕に尋ねる。

 僕は自分が魔導具士であることがバレないよう細心の注意を払う。


「これは、コード999を発出用の魔導具、通称999魔導具で、一定以上の魔導を瞬間的に流すと、電波圏内にいるチーム全員にコード999が通知されると言う魔導具だよ。知り合いの魔導具士に作ってもらったんだ」


「「え?」」


 ヒビトやナオミ、マミが一斉に驚く。


「魔導具士の作った魔導具って杖以外に初めて見た。だけど、これって大丈夫なの? 盗聴器とか暴発したりとかしない?」


 ナオミもやはり、この世界の共通認識である魔導具士は悪い人、性悪であると言う考えが染み付いていた。

 そのため、杖以外の魔導具を見て、少しばかり怖がっている。

 僕はそんな恐怖を払拭しようと躍起になる。


「大丈夫だよ。ソイニー師匠の知り合いの優秀な魔導具士に作ってもらったから、そこらへんの見知らぬ魔導具士に作ってもらったわけじゃないから」

「ソイニー様の知り合いの魔導具士が作成したのね‥‥‥それなら、安心か」


 なんとかソイニー師匠の名前を使ってナオミを説得することに成功する。

 また、マミやヒビトも、ナオミほどの抵抗感を示さなかったが、各々魔導具士の作った杖以外の魔導具を使用することに抵抗があるみたいだった。

 しかし、ソイニー師匠の名前を聞いて安心する。


「それじゃあ、もし襲われた時は、この999魔導具に魔導を流せばみんなに助けを求められるんだね」


 ヒビトは999魔導具をまじまじと眺めながら訊く。


「そうだよ。一応電波が届く範囲になってしまうけど‥‥‥あと、位置情報は携帯とかを使ってね。この魔導具だとわからないから」


 僕は一応この魔導具の欠点も説明しておく。

 説明を終えるとチームメンバー達は、「これは便利だ」とか「安心ね」とか、なんだかんだ、皆この999魔導具を最終的に気に入ってくれたみたいだった。

 その仲間の姿を見て、作成して良かったと心の中で安堵する。


 それからさらに一週間経ち、チーム内の親密度や信頼感も順当に増していき、順風満帆の魔専生活を送れていると思っていたが、実は少しずつ問題が燃え上がりつつあった。


 その問題の渦中はチームメイトのマミであり、そこにはやはりレイト兄が絡んでいた。


 ————


「やっぱり、マミ・ユフゲルは絶世の美女だよな。あーものにして〜」


 レイト兄がタバコを吹かしながら校舎裏で、レイト兄は同じチームのレイビッヒ・アランと、マミについて話している。


「チーム・ニベリウムになんで女が2人もいるんだよ。うちらのチームには1人もいないのに。女成分が足りね〜。不公平だよな、レイト」

「ホントだぜ。よりによってあのクズアスカのチームにいるなんてな。よし俺は決めたぞ。マミ・ユフゲルを俺の愛人にする。マミは平民の出だから、貴族には逆らえないさ。無理やりねじ伏せれば俺たちになびいて、うまく行けば、俺たちのチームに入ることになるかもしれないしさ」

「チームの途中変更ってできるんか? レイト」

「先輩から聞いたんだ。本人が強く望んめば現チームから脱退することが可能なんだってよ。だから、脅しや暴力なんでもいいからマミを口説き落とそうぜ」

「いいね、単純に力で相手を屈服させる。俺は嫌いじゃないぜレイト。そうと決まれば、マミ・ユフゲルを落とそう」


 レイト兄は、マミに一目惚れをしていた。

 見た時から絶対に手に入れたいと、これまで何かいい方法はないかと画策してきた。

 最初は、マミの両親を脅して、マミをレイト兄の愛人になるよう説得させようとしたが、マミの両親を脅すにしても、マミの両親はミハマ家が関わっているから手出しできないことに気づく。

 そして、あれこれ思案したのちに、ならば、本人を屈服させてしまおうと思いついたのだ。


 それはいつも通りの日常が流れる日だった。

 午後の最後の授業は魔導演習で、演習場で魔導を使いまくり、魔導の許容量をあげる訓練をした。

 みんなクタクタになりながら、やっと下校できることに安堵していた。

 チーム・ニベリウムは、魔導演習の後は、みんなで反省会を開くことにしている。

 だから、今日も全員でファミレスで反省会をする予定だった‥‥‥、だったのだが、マミだけが用事があるから後で行くと言ったのだった。


「マミどうしたんだろ用事って」

 僕が、空を見ながらなんも考えなしに、ただ漠然とマミの話題を出す。


「ホントよね、なんか靴箱の扉を開いた時に、数秒間固まっていたけど、何か関係あるのかしら」

 ナオミが少し笑いながら、ニヤニヤする。


「それって、ラブレターが入っていたとかってこと?」

 僕はナオミを見ながら訊く。

「確かに、マミってものすごい美人じゃんそれでおしとやかだし。モテると思うのよね〜」


 確かに、マミは通行人が思わず振り向いてしまうほどに美人だった。

 魔専内でも、あわよくばマミと付き合いたいと狙う人がいると噂でよく聞く。

 じゃあ、やっぱり告白なのかな‥‥‥と考えていた時、大切なことを思い出す。


「あ! 僕の刀を学校に忘れた。夜に稽古があるから持っていかないといけないのに」

 僕はしまったと狼狽すると、ヒビトが冷静に「それは取りに戻ったほうがいいね」と勧めてきた。

 僕は、ヒビトの提案に従い、学校に戻ることにする。


「ごめん、ヒビトとナオミは先に行ってて、取ったらすぐに合流するから」


 僕はダッシュで学校に戻る。


 一方その頃、マミはみんなの予想通り告白を受けていた。

 相手は、あのレイト兄だった。


「マミさん、僕は貴族や平民といった身分の違いは気にしません。あなたを一目見た時から好きでした。付き合ってもらえませんか? 悪いようにはしませんから」


 レイト兄はいつものようなニタニタ顔のまま告白する。

 その告白を受け、マミは戸惑っている。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「あの、アロンガス家の嫡男様からそのようなお言葉をいただき大変恐縮です。ありがとうございます。ですが、私は魔専在学中に恋人は作らないと決めておりますので、申し訳ありませんが、お引き受けすることができません」


 マミは、いつもはおどおどしているが、この時ばかりは、しっかりと考えを伝えた。

 しっかりと伝えなければ、相手の勇気や想いを踏みにじって失礼であると思ったから‥‥‥。


 レイト兄は振られた。

 振られたのだ。

 だけど、振られたにもかかわらず、レイト兄は悲しそうではない。

 むしろ一層ニタニタ顔になっている。

 そして、奇妙なことを言い出す。


「あなたは私と付き合うのですよ」

「え!?」


 レイト兄の言葉の意図がわからず、マミは聞き返す。


「私の告白を受け入れていれば、人間として扱ったものを。貴族の申し出を断ってタダで済むとは思うまい。マミさん、あなたは今日から私の奴隷になってもらいます」


 レイト兄がそう言うと、建物の陰に隠れていたレイビッヒがマミを後ろから羽交い締めにした。


「い、痛い、痛いです。やめてください。お願いします。レイトさん」


 マミの悲痛な叫びが夕刻を貫く。

文字数が多くなったため分割しました。

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