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~未来~
「ねえ!」
「何?」
彼女が呼びかけてきた。今日は家族でピクニックの日だ。彼女特製のお弁当が机の上に置いてある。
「これ、見て?」
「んー?」
彼女の手に握られていたのは、幼い頃、彼女が被っていた赤いリボンが付いた麦藁帽子だった。
「ままー! それなあに?」
愛らしい、五歳の娘が彼女に抱きつく。
「これはね? パパとママの『思い出』よ」
にっこりと笑いかける。
「わたしかぶりたい!」
そう娘が言うと、彼女はリボンの形を整えてから、被せてやった。僕はそれを微笑ましく見て、
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
「しゅっぱーつ!」
高らかに宣言したのだった。
「彼女と『海』」を読み続けて下さった方、本当にありがとうございます。
これからも、小説を書き続けていきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。