第12話 異世界の解放
チートデーモン「我はチートを管理する神なり…。我の真の姿を見たのはお前たちが初めてだ。誇るがいい」
女神は悪魔だった。その事実を目の当たりにした盗賊団は衝撃を受けた。
手下「ひぃっ! あ、悪魔だ!」
サラ「くっ! こんな化け物と戦えってのかい!?」
トニー「私は逃げますよ! デーモンなんて聞いてねーもん!」
動揺する盗賊団をジャックが落ち着かせる。
ジャック「精霊の指輪にもともと備わっている女神降臨の儀式は召喚魔法だから魔物の類だと始めからわかっていたことだ。それに…」
ジャックはニヤリと笑みを浮かべて言った。
ジャック「奴からチートを盗んだ時点で俺たちの勝利は決まっている」
女神が悪魔の姿に変わったことに勇者ケンゴも動揺していた。
勇者ケンゴ「そ、そんな…女神さまが悪魔だなんて…」
老人「戦いの最中によそ見はいけませんぞ!」
棒立ちで隙だらけの勇者ケンゴに老人が一太刀を浴びせた。
勇者ケンゴ「うっ!…ぐうっ!」
かなり傷が深く入ったのか勇者ケンゴはもう立っているのがやっとのようだった。
老人「私の亡き妻は女神が悪魔だと気づいたのでしょうな。女神に歯向かおうとしてエルフに殺されました。そしてあなたの持つ剣豪のチートは私の剣聖のチートと対を成す妻の物だったのですよ」
勇者ケンゴ「剣聖だと!?」
老人「返してもらいますぞ!」
老人が鬼の形相で斬りかかる。
勇者ケンゴ「年寄りが舐めるな!」
勇者ケンゴも残りの力を振り絞って剣を振る。勝負を決める一太刀を切り結んだ両者。
老人「…」
勇者ケンゴ「…ば、馬鹿な!」
倒れた勇者ケンゴ。そして老人も致命傷を負っていた。
老人「こ、これで妻のもとに…」
ジャックの勝利宣言を聞いたチートデーモンは鼻で笑った。
チートデーモン「フンッ…強がりで適当なことをほざきよる…」
ジャック「強がりかどうかステータスオープンで確認してみな」
チートデーモンはジャックに言われた通り自分のステータスを確認してみる。どうやらいくつかのチートは盗まれていないようだった。すると驚くべきことがわかった。
チートデーモン「ステータスが下がっているだと…!」
ジャック「特定の条件を満たさないと発動しない使い勝手の悪い能力を得る代わりにステータスが下がるようなチートのみを盗まずに残しておいた。今のお前はここにいる誰よりも弱い!」
ジャックの言葉を聞いた盗賊団は一斉にチートデーモンに襲いかかった。
サラ「やっちまいな! 野郎ども!」
手下「ヒャッハー!」
チートデーモンのステータスが下がったせいで盗賊団の全ての攻撃がクリーンヒットしていく。
チートデーモン「ぐぬうっ!」
手下「お三方! 決めてくだせぇ!」
最後にジャックとサラとトニーが攻撃を繰り出す。
トニー「チートデーモン覚悟!」
サラ「神様気取りもここまでだね!」
ジャック「異世界転生でもさせてもらうんだな!」
ついにチートデーモンはとどめの一撃を受けた。
チートデーモン「ぐうっ!…人間どもめ油断したわ…しかし我が倒れても必ずや次の女神が現れてお前たちの抹殺を始めるだろう…それまでせいぜい一時の平和に酔いしれるがいい…」
最後の言葉を残してチートデーモンは塵となって消える。
サラ「終わったようだね…」
これで盗賊団と女神の戦いは決着がついた。
トニー「結局チートは女神の物だったんですか?」
ジャック「いや、女神が持っていたチートは異世界の人たちから奪った物だったんだ。それを一部の人に与えて世界のバランスを崩壊させてたのさ」
ジャックの手のひらにある精霊の指輪に注目が集まる。
サラ「その集めたチートはどうするんだい?」
ジャック「これか? …こうするんだ」
なんとジャックは精霊の指輪を巨人の杖で叩き壊した。宿っていたチートが光りを放ってほうぼうに散っていった。
ジャック「これでチートは本来の仕様に戻る。チートというのは誰かが独占したり譲渡するものじゃないんだ」
女神が奪ったチートは異世界の人たちのもとに戻った。チートは以前のように無作為に選ばれた人の手に渡り自分がチートを持っていることに気づかないまま人生を終える人も出てくるだろう。だがそれでいいのだ。自分になんのチートがあるのか挑戦したり見つけたときの喜びが味わえるのだから。そう、ジャックたち3人が異世界転生する前に自分たちのチートを見つけていたように…。




