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陰府これに隨ふ  作者: 雀ヶ森 惠
2.une semaine de bonté,ou les sept éléments capitaux
56/60

Tokyo gamer's night(3)

「ぁゃιぃ」


「あやの……」


「小文字の鳴っちゃうほどあyっしいでう」


「だってそうじゃない!? これ原作通りに進めるとなると私達のアライメントが下がりかねない展開だよ?」


 一旦あのジラルディン――強固に「小僧」と名乗り続けていたあの公女と別れた私たちは、都の往来で揉めているのであった。


「あ~っ、やっぱりあの噂マジなのかな……」


「噂、とは?」


 私は髪を掻き毟るあやのに訊き返した。


「以前もアオヒツギが言ってたじゃないの、NPCは単なるプログラムではないって」


「そのことか……」


「そtrならわたしもまえjから疑問だってんです余りにもNPCが聖地に動きすぎだって。。。」


「だったとして、我々に害をなすことを運営が直接やってくるのか? だとしたらおかしなゲームだな」


「其処なのよね、一体公女サマは……いいえ運営はわたし達に何をさせたいやら」


「来血に入らんば故事を絵図でう!」


「虎の……子ども」それはいったい何を意味するのか? 口の中で呟いてみてもあやのもまるこめX誰も気にせず会話を進めるだけ。


「男は度胸! 何でも試してみるのさ」


「おお!」


 駄目だ、猪突猛進モードになっている。ふたりとも私一人が反対したところで止める気はないだろう。


「取り合えず原作だといきなり捕まって現れるんだっけ? 何処で捕らえればいいのかしら?」


「都にある伯爵の屋敷近辺か、屋敷そのものに潜伏している可能性は?」


 もう諦めたとばかりに私は少年の捕縛に口を出し始めた。


「じぇーんさんのいう通りでう、恐らくそのあたりにいるんじゃないかとおもっていたんでうsよ!」


 このゲームは自動でマッピングしてくれる等という生易しい機能は付属していない。だとしたら――


「ボレスキン伯爵の都の私邸はここからそう遠かないわよ、有名人物だけあってwikiでリサーチ済みでーす。行くわよ?」


 すると我々三人のアバターの頭に黄色の文字が不意に付いた。


『小姓セシル捕縛ミッション遂行中』


「なにこれ!? こんなの付くの?」


 あやのが慌てている。どうやら今回のメンテナンスからの仕様変更と思った方が良いだろう。

 取り合えず彼に着いて私とまるこめXはしばし歩き (下町と違って絡まれることもない)程なくして伯爵の館辿り着いた。

 そこは聖堂騎士団の寺院とは違った建築様式なのだろうが、どこかしら似通った点もあったし、王城ともどこか共通点があった。小説作品を3D化したときに色々とあったには違いないが――

 どこかそれらは大型テーマパークの洋風お化け屋敷を彷彿とさせた。私だけか?


 屋敷の周囲にはバリケード代わりに杭が打たれ紐が張られていたが、それでも横手に周ってみると派手な色のペンキがぶちまけられチョークで「裏切り者の売国奴め」と落書きされていた。


「こういうのって、主人公サイド見てるだけじゃわからない立場よね」


 あやのはそう言ったが確かにそうだった。王国からすれば伯爵は裏切り者の大逆者だった。


「で、どこからはいるんうsか?」


「空き家よ? 何処からでも」


 あやのは紐を乗り越えると正面玄関から堂々と伯爵邸の扉を開けた。鍵は開いていた。彼は手招きする。

 私とまるこめXはそれに続いた。


 あやのはカンテラを点けると仄暗い室内の様子がうっすら見えてきた。

 そこは嘗ては立派に手入れされた屋敷だったのだろう、今は見る影もなく略奪されて荒廃しているのだが。


「内部の様子はだいたい知ってる、着いてきて?」


 途中先代の肖像画と思しき絵が掛かっていたが、木炭で目が塗りつぶされていた。


「あんまりじゃないかああな。。」


「彼が居るとしたらアルチュール・ヴラドの部屋くらいのもんだけど……」


「そうなのか……」


 一行は先ず三階に昇る。


「……で、例の、」


 不意に、女の声が聞こえてきた。


「しっ、アーリャ・ミオナが戻ってきたのかしら? お静かに」


「………………」


「………………」


 兎も角一行は声を殺して続きを待った。


「……ギリ……キユル……トエノ」


「もっとはっきり言え!」


 この声は、アオヒツギ!?


「……フネニ……シロシアサノ……シモ」


 何故、『冬景色』の歌詞を? しかしこのままでは……!


「あやの! まるこめX! 中にいるのはアオヒツギだ、突入するぞ‼」


 二人の返事を待たずに私はその部屋に踏み込んだ。


 この冬は終わらない。

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