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陰府これに隨ふ  作者: 雀ヶ森 惠
2.une semaine de bonté,ou les sept éléments capitaux
53/60

省察

「じぇーんさんmん、mってましたよ! 来るんじゃないかって」


 まるこめXは急に抱きついてきた。ミスタイプは平常運転、久しぶりにこの面子と再会するのも何だか面映ゆい。


「まるちゃん、jane_doeを離してあげなさい、積もる話があるのは分かるけれどそれはまた後で」


 豪奢なあやののマイハウスを、少し大きくなったチーズたらが元気に走り回っていて喧しいくらいだ。


「で、あやのさんいない間どうしていたぼ?」


「それがねえ、気が付いたら三日ほど記憶がございませんのよ……? どういうことかしらね」



――その三日の間に、私はタマキと出会い二回もTru'nembraへ足を運んでいた訳なのだが。



「あー、ゼミの奴にはハッキングされるし頭来るわー」


「ゼミの奴……? あのWiiフィットトレーナー(なにがし)?」


「あやのさんってがくしえなんす?」


「冗談でも何でもなく24歳学生です、大学院生よ。あーこんなところから素性がバレるとは思ってもみなかったわね」


 大学院生、か。私のような半端ものとは違う、確固たる身分の持ち主なわけだ彼は。では私のやっていることは? フリーのイラストレーター、一番危うい立場で全てが自称に過ぎないではないか。

 男として完全に彼に負けを喫しているわけであった。アイカなら嘲笑するだろう。


「わたしの個人的事情なんてどうでもいいです、判ったことについて整理しましょ、三つあるの。先ずは第一点ね、john_doeは自分はKだと名乗ったけどこれに心当たりのある人っている?」


 そこ聞こえていたのか、あやの……しかしながら、

 言うべきだろうか? いや最近亡くなった幼稚園-中学校の同級生だと言って俄かに信じるものであろうか?

 そもそも何故KとD.D.T onlineに関連性があるというのだ。黙っていよう、今は――


 同様にまるこめXも沈黙を保っているではないか、この問に関しては誰も答えられないのだ、あやの本人でさえ。


「うーん、流石に情報が少ないかあ、じゃあ第二点ねどうやらアオヒツギは女性プレイヤーらしいです、そして上手くいけば――上手くいけばの話、此方の味方に引き込むことが出来る!」


「ええっっ! アオヒツギって女性プレイヤー何でうsか!」


「まあ、わたしが調べた数々の証拠に拠るとね」


「それは、その根拠については今朝聞き及んでいるが、彼女が同意するものか?」


「ふふふ……鳴かぬなら鳴かせてみよう不如帰!」


「豊臣はまけるんでうしょ……」


 まるこめXは尤もな事を言った。そう、豊臣方は結局敗北するのだ。

 果たしてアオヒツギの説得はどうなることになるのやら?


「第三点、ロックされたTiger chaserのスキルとは一体何か? john_doeはそれを解放しているようだけど」


 これだとあやのは倒れた後も結構、更に此方の話を聞いていた様子だな……


「わたしが推察するに、途中にNPCの亡骸が沢山あったじゃない、それもそのなんだかグロテスクなことになってる? あれがヒントっぽいのよね」


「確かにな……口から内臓を引きずり出すスキル?」


(ぼか)してよ! 暈しなさいよ! わざわざ言わなくていいから! わたしグロいの苦手なんだからっ! ……ねえ、まるちゃん?」


「わたついはべついに苦手はないでう。あやのさんびびりですか?」


「理系院生がビビりとかバレてしまったわ。とりあえずスキルについては未知、アンロック方法も未知……って何一つ判ってないじゃない!」


 その時私はあることを思い出した。


「リーリウム……?」


「ん? jane_doe、リーリウムがどうかしたの」


「いや、以前リーリウムが言っていたんだ、Tiger chaserのスキルはロックされてるって」


「それがどうしたのよ」


「nなるほど、リーリウムさんならsんのアンロック方法も知ってるんじゃないのかな?」


「「‼」」


「でも……リーリウムは、メンテナンスでシステムから消去された――」


 あやののアバターはやれやれというアクションを取ってみせた。


「結局は八方塞がりってわけね」


「そひつぎさんがしってるかもしれないでうs」


「ま、まるちゃんさっきから鋭いわね……」


 アオヒツギが知っているかもしれない? 何故それに気が付かなかった!?

 彼女が私と接触したときに私のマイハウスに彼女のIDが残されている可能性がある! IDさえ判明すれば相手のマイハウスに飛べる筈。


「あやの、アオヒツギの足跡や居場所を調べたかったら私を調べてみるんだ」


「ああ、成程ね。決断を下して貰うのは後日でも、彼女の居場所を特定しておくのは重要な事よね」


 しばしあやのは沈黙すると画面の向こう側で何か始めたが、数分後に吸っ頓狂な声を上げた。


「えーッ!? これどういう事? アオヒツギって正気なの!」


 一体どうした……?


 この冬は終わらない。

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