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陰府これに隨ふ  作者: 雀ヶ森 惠
2.une semaine de bonté,ou les sept éléments capitaux
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カダスでの喪失

 真っ赤に染まる空の下、雪原が照り返しを受け桃色に輝いている。

 ここは? そうだ私の、凍てつく荒野の、カダ――

 何処なのか思い出そうとしてそれは何者かに遮られた、点々と足跡が雪原に続いている。幼い私は雪を割ってそれに近づくと虎のものであることが判る。

 色めき立ち私はそれを追い始める、いつの間にか赤い空をカラスが旋回し始め――そこには三羽のカラスが居た。

 すると、なにか途轍もなく()()()()()()が、それは高貴なる雪原の王、彼は私に語りかけてくるのだ。



翌朝、あなたにとって

夢見た事も夢見られた事も、

全ては目覚めと共に消失するが、

あなたの虎の感触だけは実存する。


――その虎を、お前の虎を描いてもいいのだ、

 銀鶏!



 私が目を覚ますと、其処は自室のロフトでエアコンの回る音だけが静かに響いていた。

 眠っていたのか――? 身を起こすと、寝巻ではなく外出着のまま寝て居たようだ。そうだあの日、私は発作的に下り列車に乗って立川へ向かった、何をしに? もう一度彼らと逢うために――


 そこまで思い出すと私は勢いよく起き上がった。

 何故私は自室にいる!? 此処はあの珍妙な名前のネットカフェ、人間椅子ではないのか?

 そうだ……私は、jane_doeはjohn_doeに斬られて――


『それにここで死ぬと痛いわ、すごく』


 そう、リーリウムのせりふが蘇ってきた。

 私は、D.D.T onlineの中で死んだのか? しかし何故家に戻っている? 両の掌を広げて見つめて見てもそこには何もなかったし、最早虎の感触も実存なかった。

 あやの、まるこめX、アオヒツギ……三人はどうなったのだ。

 

 いや、あのとき私はjohn_doeに問うと彼ははっきり答えたではないか、

 

『私はKだ』と、


 K、彼は一体何者なのだ? 最早彼は夭逝した無関係な同級生以上の存在と化していた。

 混濁する実在のKと形而上のK。

 私は今一度Kと向き合う必要性がある?


 スマホで時間と日時を確認しようとしたが充電が切れていた、仕方なくパソコンを――

 そうだ。あるわけがない。

 押収、されたのだから――いや私が都合よく記憶のないまま立川から自宅に戻ったように、パソコンも戻ってきてはいないか? そう思いロフトを下りてデスクを確認するが……

 そこにはパソコンのあった形跡があるだけだ。アイカ……居なくなったのみならず私の足を引っ張ってくれる。

 ただその机の上にはあの出口と名乗る少女から渡されたアイテムのコードらしき紙片もまたそのままで置いてあった。かの意識体験が夢ではないように。


「このコードを使えばあいつに勝てた?」


 今言っても詮無いことなのにそう言わざるを得なかったのだった、この私は。



 昼間なのは判ったが正確な時間もわからない。冬場の弱い陽光を受けて私は外へ出た。

 あの二人組の刑事が言った通り付けられているのだろうが……

 駅前のラーメン店で腹を満たすと今度は上り列車に乗った。

15時10分発京王新宿行、そうか目を覚ました時14時頃か……日付が判明する、12月2X日、クリスマス目前であった。

充電のため置いてきたが、一日くらいスマホが無くても気にならない。

 笹塚で乗り換えて、都営新宿線本八幡行。


 何故、私も其処へ向かっているか分からなかった。fifth dimensions――


 この冬は終わらない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読了。 続きが楽しみすぎる。
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