最終話 「オチが良ければ全て良しッ!」
「この話はフィクションでございます。」
北祭
「遠山禁四郎さまが死にました!?」
その言葉は騒いでいた店内を一瞬で凍結させるには十分であった。
個々の者が言葉の意味を理解したのも又、同じ一瞬の間で解答された。
一同
「………え?」
最終話
「オチが良ければ全て良しッ!」
【-長屋-】
脇賀源外
「なんだってこんな姿に?」
葛飾北祭
「えぇ、それが井戸さらいの日でして…
僕が清掃業をはじめた話をしたところ、俺にもやらせろと言われまして」
阿歩郎
「あんた浮世絵だけでなく、そんな商売まで始めて儲けてどうする気よ!
…まさかワタシは高いわよッ!」
北祭
「ええ、断わる理由もないので頼んだところ…」
源外
「おっ!オカマを軽く流したぞ………こやつ成長したな!」
活動丸
「まさか落ちたのか!?」
阿歩郎
「そんなドジッ子じゃないわよッ!簀巻きにして川に落としても戻ってくる奴よ?」
活動丸
「ま、まぁ、想像できるのが怖いんですけど…」
北祭
「落ちたんですが、お分かりのようにタダでは死なないお方なので
それでも急いで横穴掘って救出したんですが…」
活動丸
「どうみても…」
阿歩郎
「亡骸…でもワタシ泣かない!きっと生きてるって信じているからぁぁぁ!!」
活動丸
「汚いから泣きつかないで下さい!?」
阿歩郎
「いまは優しくギュっと抱いてぇぇl!!」
源外
「しかし、確かに一見死んでいるように見えるが…」
阿歩郎
「ちょ、ちょっと…ギュって…ギュって…く、首よ…そこ…」
北祭は、優しく力一杯に阿歩郎を強く抱きしめた。
それはもう、頭と首が離れる勢いで締め上げた。
源外
「仮死状態って奴だな」
北祭
「ということは生き返る可能性が?」
源外
「うーん、そう言えばお前の知り合いの医者なら何か分かるんじゃないか?」
活動丸
「え? ああ、なるほど」
阿歩郎
「あぶぶぶっ…」
【-闇と真紅が交わる空と川-】
船頭
「ここ、泳ぐのは無理だよ、六文ね…」
遠山
「ほぅ、では泳いでみるかなっと!」
遠山禁四郎は思いっきり河へ飛び込んだ。
意外と泳ぐ事が達者な彼は、静かな水面に波を立たせながら
反対岸へと向かい泳ぐのだが…
・
・
・
船頭
「ここ、泳ぐのは無理だよ、六文ね…」
遠山
「仕方ねぇ、頼むわ…ヘックション! チクショー! コノヤローメ!」
実はこの河、最初は泳ぎやすいのだが、次第に水が体に纏わり付き、
泳ぐものを水底へと沈める性質を持っていた。勿論、進めば進むほど体温を奪う低温。
・
・
・
遠山
「それにしても暗い河だなぁ…
…船頭さんよ、向こう岸にはどれくらいかかるんだい?」
船頭
「ここ、泳ぐのは無理だよ、六文ね…」
遠山
「壊れたカラクリかお前はッ!質問の答えになってねぇーだろッ!」
船頭
「………」
遠山
「んだよ、ダンマリかよ! 客商売ならもっと話せた方が良いぜ!」
船頭
「ここ、泳ぐのは無理だよ、六文ね…」
遠山
「もういいわッ!それとも六文渡せば説明してくれんのかい? ほらッ!」
船頭
「………」
遠山
「おい」
船頭
「………」
遠山
「なんで黙って金だけ取ってんだコラァ!」
船頭
「………」
遠山
「沈黙は金とか言うのか? なに実際に儲けてんだよッ!」
船頭
「しーん。」
遠山
「俺がすべった見たいじゃねぇーかッ!しかも「しーん」って言ったよな!?
しゃべれるじゃねぇーか!!説明するか金返せコノヤロウ!!」
船頭
「………」
遠山
「おい! なに引き返えしてんだよッ! その返せじゃねぇー!」
船頭
「ここ、泳ぐの無理だよ…」
遠山
「まだ言ってやがるッ!結局、戻って来たよ…」
子供
「おじさん!」
遠山
「ん? どうした坊主?」
子供
「助けて!」
遠山
「詳しく聞かせて…」
???
「おっとお客さん!その子をこっちに渡して貰えるかな?」
遠山
「あぁ?なんだ?でかい体して子供いじめてるのかい?」
???
「こっちも商売なんでねぇ…おとなしく渡してくれないか?」
遠山
「おとなしく………金払っても河ひとつすら渡してくれない船頭の方が
子供相手より楽しいと思うぞ?」
???
「あいつはどうでも良い。3度目は言わない。とりあえず砕け散れッ!!!」
どどどどどーんッ!!と重い棒を遠山禁四郎に向かって振り下ろした!
???
「すばやいなぁ」
遠山
「鬼でもあるまいし、こん棒なんて振り回すんじゃないよ!」
???
「鬼だが、なにか?」
遠山
「はぁ? 鬼はマッチョで大きくて赤やら青やらしてて、角生やしてだな」
???
「虎柄の腰巻をはいているとか?」
遠山
「そうそう、お前みたいに全てのイメージが一致しているような奴を人は」
???
「鬼って言うんだろ?あぁ?」
どどどどどーんッ!と再び棒を振りかざして地面へと叩き付けてくる!
遠山
「坊主、少し離れてな。
いまからどうやら"鬼退治”しなけりゃならないみたいなんでなッ!」
【-長屋-】
活動丸は、急いで知り合いの闇医者を連れて来た。
帰って来る道すがら、状況を説明したり、曲者一を殴ったり、状況説明したり、
曲者二を蹴り飛ばしたり、状況説明したり、曲者三を吊るし上げたりなどしながら
今は、脇賀源外の長屋で診察が開始されようとしていた。
闇医者
「これは昔、見たことのある状態だ…
一目で仮死状態だとわかった源外殿はさすがですなぁ、んんんっ!」
阿歩郎
「で、早い話が助かるの?」
闇医者
「ええ、助かりますよ」
活動丸
「おぉ!」
阿歩郎
「なら、早く助けなさいよッ!それとも何か居るものとかあるの?」
闇医者
「………魂」
一同
「はぁ?」
活動丸
「おまえ…とうとう気が!?…元々だが…その…」
闇医者
「やばい方向へ行っているとは思わないがねぇ?」
阿歩郎
「もし自由に出来る人間がいたら?」
闇医者
「今は実験体のストックは足りてるし…あっても困る事はない…」
活動丸
「わかったぁぁぁ!言うな!もう言ってるけどもうイイ…」
源外
「ではその魂を戻す方法は?」
闇医者
「遠山さまのように生きたままあの世に行くことですなぁ、んんんっ!」
北祭
「生きたまま?」
活動丸
「あの世って………どこ?」
阿歩郎
「ワタシ、天国しか知らないわ…
…でも禁ちゃん居ない世界はもうあの世と同じよッ!」
闇医者
「実は趣味で陰陽師の免許も持ってるんだが」
阿歩郎
「えぇー!なにそれ?通信で取れるかしら?瓦版買えば良いの?」
闇医者
「井戸の底とあの世が繋がってしまっているようだねぇ…
理由は不明だけど、たまたま入って持って行かれたようだ、んんんっ!
あいかわらず面白い人だよ、今頃は奈落の底かな?」
活動丸
「井戸へ落ちて奈落の底………見事な落ち!」
阿歩郎
「オチなんてつかせないわよッ!
あの世だろうが、どこであろうが、ワタシは!
彼を救い出すッ!それが、それが妻としての務めだものぉぉぉぉ!!」
源外
「おまえは死んでくれた方が世の中は静かになるなぁ」
・
・
・
【-数時間後-】
なにやら怪しい祭壇と魔方陣に囲われた中心には、
仮死と化した遠山禁四郎が寝かされている。周囲にはいつもの愉快な仲間達。
そしてその近くに闇医者が祭祀の様な格好でブツブツと言いながら何か用意をしている。
闇医者
「本来は死者しか行けない場所だからね、遠山さまは肉体を残して
魂だけが死者の世界へと飛ばされた形になっている。んんんっ!」
活動丸
「た、たのしそうだな…」
阿歩郎
「どうすれば禁ちゃんは助かるの? 生贄? よし、爺さんもう長生きしたでしょ!」
源外
「ふざけるなッ!テメーの命で救ってやらんかいッ!」
阿歩郎
「駄目よ! そんなことして復活されてもワタシは『いちゃいちゃ』できないじゃないッ!
良くやった阿歩郎!そんなことは無いわ、禁ちゃん!おまえおれの為に…
当たり前じゃないッ!ワタシの愛は不めっつ………」
北祭
「踏め?」
活動丸
「不潔?」
源外
「うるさいからエレキテルでバチっと電気を流してやったわい!ガハハッ!」
闇医者
「とりあえずあの世に行かせられるのは丸1日、それ以上は本当の死だ。
その間ならば帰って来れると良いなぁ…んんん!」
北祭
「なにかサラっと言いましたよ!」
闇医者
「元々、一か八か、運と本人の体力次第みたいな所があるのだよ。
人体実験の数を増やして成功率を上げたいのだが、間に合いそうにもないんでね。」
活動丸
「じゃー、がんばって!」
北祭
「行かへんのかーいッ!」
活動丸
「いや、腕の調子が悪くて…」
北祭
「本気の理由かよッ!」
活動丸
「大丈夫!おまえの体は守るから!」
北祭
「それ、襲われるの確定の奴に言ってるように聞こえるのは気のせいか?」
活動丸
「ふっ、阿歩郎さんには指一本触れさせないでいてやるぎゃらぁぁぁぁぁー!!」
北祭
「ああああああっ!!」
阿歩郎
「何かビリビリするんだけど何かしら? ん?」
闇医者
「今、あんたらまとめてあの世に送ってるんだよ」
阿歩郎
「ぎゃあああぁぁぁあぁぁ!!」
源外
「まさに悪役の殺し文句を聞くことになるとは、長生きするものだ。ハハハッ!」
闇医者・島蜂六 (しまほうろく)の手によって
遠山禁四郎を死者の国から救出すべく3人の男が送り込まれた。
果たして彼らは無事、救い出すことが出来るのか、はたまた生き返る事は出来るのか、
それは誰にも分からない。
-終-
遠山禁四郎
「え?続くの?ここは誰?私はどこ?」




