第四話 「邂逅遭遇 (かいこうそうぐう)」
「この物語は、登場人物や団体・事柄などはフィクションでござる!」
秘書
「ええ、北町奉行所内では唯一の女性です!」
【遠山の禁さん-必殺幕末編-】
「第四話
邂逅遭遇 (かいこうそうぐう)」
阿歩郎
「あの和菓子屋が怪しいと?」
情報屋
「ああ、歴史は古く暴れん坊と言われた将軍までさかのぼる。」
阿歩郎
「あら?なにかイイ響き♪」
情報屋
「今では一般にも出回ってはいる“砂糖”だが、
それまでは“砂糖=黒砂糖”だった時代の話だ。
将軍が全国に広めようと改革で奨励したんだな。するとそれと高松藩が答えた。
そして品種改良など独自の精糖方法を確立させるまでに」
阿歩郎
「それが“阿波和三盆”ね♪」
情報屋
「その阿波和三盆を使い和菓子を作っているのがこの店だ。」
阿歩郎
「それの何処が怪しいわけ?」
情報屋
「まぁ、これだけ聞くと将軍さま御用達の和菓子屋として名をはせている店。
だが阿波和三盆なんて代物、そうそう入手できると思うか?」
阿歩郎
「う~ん、何か裏で取引でもあったと?」
情報屋
「この店は高松藩出身の職人が作った店だから入手するコネはあるわけだ」
阿歩郎
「どこぞの知らぬ馬の骨よりは同じ藩の人間にってことね。」
情報屋
「黒い噂はここからだ。実は鳥井の息がかかった店なんだよ。」
阿歩郎
「どういうこと?」
情報屋
「“あくまで噂”なんだが…
将軍ご用達になった切欠が鳥井が将軍に勧めたからとされている。」
阿歩郎
「うまいものは将軍に勧めるのはおかしな事ではないが…
今も鳥井に何らかの繋がりがあると?例えば…資金援助とか?」
情報屋
「“あくまで噂”ここから先は俺でも危ないのでね。姉さんが調べてくださいよ。」
阿歩郎
「そう、ありがとね。じゃーこれ!」
情報屋
「まいどあり!ってこっちの紙なんですか?」
阿歩郎
「任侠茶屋特別割引券よ♪」
情報屋
「え!あの店怖いんですよ……あ!そうだもう一つ!
最近他にもいろいろ探りいれてるらしき奴がいるんですよ」
阿歩郎
「誰かしら?特徴はどんな男なの?イイ男?」
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遠山
「以前から噂の絶えない店ではあったが…
味自体は大江戸でも1,2を争うくらいだからなぁ (モグモグ)」
阿歩郎
「味も調査済みよ!お土産つき!!」
北祭
「確かにおいしいですね (モグモグ)」
秘書
「やはり人と会う時は手土産の一つは持参するのが礼儀。
少しは社会人…人として近づきましたね (モグモグ)」
阿歩郎
「なっー!人の土産食べながらなんて言い草?!
しかも言い直した上に近づいたってぬわにィィィィ?
ワタシは人じゃないのかっ!ゴラァー!!」
北祭
「(…おいしいけど、これ前に食べた味となんか違う気が)」
遠山
「喧嘩なんかするなよぉ!せっかく甘いもの食べて気持ちを穏やかに持てよ!」
秘書
「失礼しました。」
阿歩郎
「はぁ?」
遠山
「しかしこの情報は調べる価値はあるようだ。
他にも調べているのがいるようだし…阿歩郎!
引き続き頼んだぞ!」
阿歩郎「はぁ??」
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【-夜-】
黒い雲が月を嫌うかの如く覆い隠す、月はめげず存在を表現するも
怪しい世界を演出する照明でしかない。どこかで野犬が遠吠えを繰り返し、
魑魅魍魎どもが徘徊しそうな空気を漂わせている。
昼間は多くの庶民で賑わっていた大江戸も、夜となれば誰も歩いてはいない…
ごく希に遊郭帰りか酔った男に出会う事も、心の拠り所になるような
不気味な夜だった…
だが隠密行動するにはこれ以上ない条件ではある。
黒色の着物で全身を多い動くは阿歩郎、
彼が通ると何故か桃色の髪だけが光ない闇でも薄っすら浮き出ていた…
【-あやしい和菓子屋-】
店主
「今月の売り上げはどうだ」
男A
「それが将軍さまが体調を崩されてからというもの
献上する回数が減ってしまいました。」
店主
「ん~?将軍さまは部下にも振舞っておられたからな、
定期的に確保出来た売り上げの影響が大きいようだよ」
男B
「やはり材料費か値を上げるしか…」
店主
「馬鹿者っ!代々守ってきた味を落とせるかっ!
ましてや値を上げたらご贔屓にしてくれるお客様に何と言えば良いのだっ!」
男A
「しかし、このままでは味どころか店自体が…」
店主
「やはり…要求を呑まざる終えないのか!」
・
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・
阿歩郎
「羽振り良さそうに見えて結構苦労してるようねぇ。
それに要求って何かしら?鳥井に資金援助してるように見えないし……!?」
男A
「誰だっ!?」
阿歩郎
「ばれたかっ!?」
同心
「ああ、いやねぇ。夜遅くまで明かりが付いてるもんだからさぁ。」
店主
「お、脅かさないでくださいよ。」
阿歩郎
「ワタシじゃないかった…ほっ」
同心
「いや、これは失礼。何か悪巧みでもしてたかな?」
店主
「なにをご冗談を、アハハ!」
同心
「そうかい。ならあまり“長居”すると良くないみたいだなっ!
火の始末だけはちゃんとして寝ろよ!じゃっ!」
店主
「見回りご苦労さまです。」
・
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・
同心
「いつまで付けてくるんだ?」
阿歩郎
「よく気づいたわね?」
同心
「そりゃ、事件起こされたら面倒だからだよ 」
阿歩郎
「ん?」
同心
「おや?気づいてなかったか?お前さんのこと、あいつら感づいてたよ。」
阿歩郎
「なっ!?」
同心
「だからあいつらの会話は真っ赤な嘘だ。信じるなよ?」
阿歩郎
「あんたのことを信じろと?」
同心
「ふっ、中に居た男は店主と従業員2人で合計3人か?」
阿歩郎
「まさか!?」
同心
「隠れては居たがなかなかの手強れだな。用心棒か何かか、
お前さんが屋根裏に居た真下に1人、裏に周り込もうと1人いたな」
阿歩郎
「ワタシ大ピンチだったじゃない!?はっ!まさか…
それでワタシにあなたを尾行するようにわざと店主に気づかれた!?」
同心
「まぁ、否定はせん!」
阿歩郎
「阿歩郎ちゃん凹むわぁ~…って何で助けたの?」
同心
「実わなっ、お前さんが夜道を走ってるのを見かけてなっ!
その桃色の髪の毛はちゃんと隠さないと闇夜でも見えてるぞ!」
阿歩郎
「さらにショック!!」
同心
「慣れんことはするなってことだっ!
……そうそう、話なんだが、まずあの和菓子屋は鳥井に資金援助している。
それもかなりあくどいやり方でなっ、それは勝手に調べてくれ。」
阿歩郎
「そこまで言って教えないのかよぉ!…で他には?」
同心
「北町奉行所の遠山禁四郎さまにお目通りを願いたい。」
阿歩郎
「なぜそれを!?」
同心
「違うのか?遠山さまの者と?」
阿歩郎
「な、なんで繋がりがあると分かるんだ???」
同心
「変った生き物を飼って、それにこの件を調査させているのは
…遠山さまくらいかとなっ!」
阿歩郎
「うーん、なるほど。
鋭いわね、確かに遠山さまの命でってまだ味方かも知らないのに言っちゃったよ!!!
……って誰が変な生き物だコラァ!!!」
同心
「安心せい…と言っても口では何とでも言えるわな。
よし、明日の夕刻にでも奉行所に出向くから伝えておいてくれよ!」
阿歩郎
「勝手に話を…あれ?もう居ない…足速いのか?おっさん???」
同心
「……言い忘れたな。」
阿歩郎
「うわっ!どこから出てきた!?」
同心
「俺、…いや、私の名前は門戸無用だ。」
-つづく-