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勇者の条件  作者: KEI
第40話 勇者の条件

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(四)一族と仲間

◆ 一族


次に、一族。


かつて魔王軍は、勇者血族を監視対象にした。


歴代勇者は、東の古英雄の系譜と関わっていた。


王族。


騎士。


古い聖職者。


神託を受けた家。


その記録は、血筋の重要性を示しているように見えた。


だから血筋は、勇者の条件とされた。


だが、ロアンの家系からは何も見つからなかった。


王族でもない。


聖職者の末裔でもない。


東の勇者血族でもない。


畑。


家畜。


薪割り。


家事手伝い。


小鬼の書庫番が資料を読む。


「うちは普通の家です。畑と家畜と薪割りなら」


竜将は額に手を当てた。


「それを後世は、勇者の一族と呼ぶのか」


吸血侯が答える。


「すでに呼んでいます」


「畑と家畜と薪割りを」


「はい」


「勇者の一族と」


「はい」


竜将は深く息を吐いた。


死霊宰相が言う。


「血がロアンを勇者にしたのではない。ロアンが魔王を討ったために、血筋が後から意味を持った」


「では、血筋を封じても、足りぬ」


竜将が苦々しく言った。


「はい」


ロアンの家族は、彼を勇者として送り出したわけではない。


神聖な使命を託したわけでもない。


家の仕事を手伝わせ、怪我を心配し、帰りを待っていた。


帰る場所だった。


それは、勇者の条件としては地味すぎる。


だが、旅をする者には必要だった。


死霊宰相は新しい札を置く。


帰る場所だった家族。


「勇者の一族だったから勇者が出たのではない。ロアンが魔王を討ったため、家族が後に勇者の一族と呼ばれた」


吸血侯が静かに言う。


「人間は、血筋にも物語を求める」


竜将は言った。


「魔族もだ」


吸血侯は少し笑った。


「否定はしません」


◆ 仲間


最後に、仲間。


かつて魔王は、勇者を一人の剣士としてだけでは見なかった。


それは正しかった。


回復役。


魔術師。


前衛。


索敵役。


地形突破役。


補給。


情報。


それらが揃って初めて、勇者は魔王の前に立つ。


これは非常に鋭い分析だった。


実際、ロアンたちは一人では魔王に届かなかった。


ミルカが術式をずらした。


エナが危険を見た。


ガルドが魔王に傷を入れた。


ロアンが中心になった。


だが、彼らは最初から賢者、聖女、剣聖として揃っていたわけではない。


ミルカは、普通の火の魔法を異常な精度で使った魔法使いだった。


エナは、地方神殿の見習い神官だった。


ガルドは、田舎道場で剣を振り、必要なら崖を上って薬草を取っていた剣士だった。


吸血侯が言う。


「我らは、称号を探しました」


死霊宰相が続ける。


「彼らは、役割を果たした」


竜将は魔王戦を思い出す。


ロアンが動くと、全員が動いた。


ミルカが魔法陣の要を焼き、エナが一拍を読ませ、ガルドが踏み込み、ロアンが穴を埋めた。


勇者一人が、従者を従えていたのではない。


一人が欠ければ崩れる四人だった。


竜将は小さく言う。


「勇者一人と従者ではなかった」


吸血侯がうなずく。


「四人で一つの戦力でした」


小鬼の書庫番が、小さく言う。


「本人たちは、それを一番よく知っていたようです」


死霊宰相は新しい札を置く。


足りないものを補った者たち。


「伝説の仲間が揃っていたから勇者が来たのではない。互いに足りないものを補った者たちが、後に伝説の仲間と呼ばれた」


竜将は、古い仲間の札を見た。


そして、新しい札を見る。


伝説の仲間。


足りないものを補った者たち。


それもまた、似ている。


だが、同じではなかった。



※第40話「勇者の条件」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/yuusha-no-jouken-top/

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