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徳栄軒信玄

岡崎を落ち着かせた後、清洲に戻り兄上に報告をする。

「三河をな、名古屋は平手に任せ三河を信照に任せる」

「ありがとうございます。荒廃しているため早めにと考えておりますが2年ほどいただければ」

「わかったが援軍を命令する場合もある」

「はい、その時は必ず」

こうして話が終わると岡崎に戻り名古屋に兵を戻す前に吉田城・野田城そして井伊谷城までも主のいない城を落として遠江を狙う橋頭堡とした。


「奥平は長篠城と所領安堵、吉良義安は西安城と所領を安堵」

「酒井忠次は吉田城代、野田城は石川家成、井伊谷城は本多忠勝に任せる」

攻めてこないとはわかっているが先ずは安定させるために早急に城主を決め、自分の所領には鷲尾等を小さな城と共に城代としておいた。

「慶次郎も滝川家で独立して1万石を与える」

そして早々に改革を行うために指導できる農民を名古屋からの移住を兄上にお願いして農業改革を行い、綿花の栽培も行いながら道の拡張と関所の廃止等を行いボロボロになった三河のために働き続けることになった。


中根の爺には引退と同時に岡崎に入ってもらいのれん分けで角屋元秀と名乗って御用商人として出入りさせる。

「若様、のれん分けまでしていただき元秀感謝にたえませぬ」

「若はいいよそれよりしっかりと必要な品物を岡崎に入れてくれ、堺にも紹介状を爺と共に書こう」

「小十郎様、爺は嬉しいですぞ岡崎の城主となられ爺を頼りにしていただけるとは」

涙もろくなった爺をなだめ、

「暇な慶次郎を連れて街中を巡回して気になったところを報告してくれ」

慶次郎を見ると手をふり、

「領地など面倒なこと中根の爺に任せて時々話し相手に街中を歩くさ」

1万石を与えたが内政はさほど興味もなく心配した鷲尾等が隣接しあっているので時々見ていると言われ爺とセットで自分の領地と三河領内を見ることになり更に、

「そういえば爺の妹の孫娘に手を出したな、夫婦になれようちの養女にして輿入れさせるから」

そう言うと更にめんどく下がるが爺には頭が上がらないのか説得をしてくれ了承させた。


兄上にはその事を説明する書状と三河の開発のため堺の金を流用することを伝えると半分は尾張から送ると返事がありその銭で農業改革と綿での木綿を栽培して加工まで行い津経由で送り出したり牛やマガモを尾張からわけてもらい進めていくが、

「忠次、良いことなのに頑固すぎるぞ」

酒井を松平家の頃と同じように筆頭家老として登用してその下に鷲尾と兼松と慶次郎、三河からは石川数正・本多正信・高木清秀・内藤正成・鳥居元忠をそして近習として渡辺守綱・平岩親吉・本多忠勝・榊原康政・服部正成を側においた。


「最初の評定を行う、この場所では大いに討論してくれ決めるのも責任を負うのも私だからな」

未だに皆のなかでは小さい青年前の私が言うと緊張したままこちらを見て沈黙する。

「やめだやめだ小十郎、灘の酒を出せ宴会だ」

慶次郎が言うなり立ち上がると鷲尾と兼松を呼び台所へと立つ、私と鷲尾と兼松は苦笑いをして三河の武将は驚いて私を見る。

「食事もつまみも用意している」

「わかった。10樽ぐらい出すぞ」

半分以上飲むつもりだなと思いながら酒井が、

「殿、よろしいのですか」

「かまわぬ、初顔合わせでお互い気後れもしよう、元々見ての通り無礼講だ」

頑固な三河武士は驚きながら食事を持った侍女と樽を肩に担いだ慶次郎達が入ってきて茶碗をまわすと酒を注ぎ慶次郎が、

「小十郎頼む」

「よし、皆に行き渡ったな、今までのいきさつはどうでもよい、先ずは三河の民が暮らしやすい世の中にし戦いではこの世から争いをなくすために織田家は動いており当主である兄上の考えも一緒だ、現場でよいと思ったことは事後報告でも良い失敗したらその原因を皆で考え良くする。開墾や治水などの金策は私の仕事だ無駄はいかんが必要なら酒井や中根の爺に相談して決定してくれ」

「話が長いぞ小十郎」

「すまぬな慶次郎、それと慶次郎には頼むな大事になるのでな」

そう言って乾杯をして一気に飲み干す。


「こんな透き通った酒があるんだ」

「中々うまいぞ」

「この食べ物はなんだ」

酒が進むと徐々に口数が増え話をしている。

「慶次郎、景気づけに舞え」

そう言うと嬉しそうに武骨な男が繊細に美しく舞い見とれさせており、

「よし、康政俺達も」

忠勝がそう言って榊原と立ち上がり武骨な田舎おどりを見せ次々と立ち上がり不満を爆発させた。


慶次郎が横に座り未だ開けたばかりの灘の酒を茶碗にいれて飲む、

「すごいな慶次郎」

「中々味があって面白いな」

熱気を感じていると忠次と正信が座り

「殿、大荒れになって申し訳ありませぬ」

「いいさ、義元に頭から押さえつけられて今度は織田が来たからな」

「しかし先程の言葉は実行して清洲からお叱りを」

「あっても私が怒られるだけだし、怠慢ならそれぞれだけど戦いに負けたり何か失敗しても次で取り返せと言うのが兄上だから怒られないように怠慢だけは注意」

「そうだよな小十郎はさぼって上様に怒られたものな、一番拳骨貰ってるんじゃないか」

「そうだよそのうちの半分は慶次郎が騒ぎすぎて怒られたんだよ」

そう言うと、

「家臣の不始末は城主が負うのだから問題あるまい」

「不始末ではなくわざとだからな慶次郎は」

そう言ってお互い顔を合わせて大笑いした。


「忠勝、井伊の遺児がおるはず」

近習である忠勝に思い出したように聞くと保護してると言う、

「いずれ井伊家を再興させるつもりだ、しっかりと面倒を頼むぞ」

そんな話をしたり色々な意見を聞いて変えたりしているが気分転換に慶次郎を連れ出して岡崎の城下町を歩き同じ職を一区画に集めたりとしているとあの小道であの男がすまきにした日和を担いで現れた。

短刀を片手に持ちながら悪そうな男が走ってくるのを避けてすねを切ろうかと避けて体を低くした瞬間男は吹っ飛びすまきが落ちてきてあわてて受け止めた。

「落とさずに拾えたな」

「絶対わざとだろう、こっちが足切ってそっちに短刀ごと飛ばして受け止めて貰おうとしたのに」

「悪意がな背中から出てたぞ」

「悪人は向こう、向こうだ」

「うるさい」

懐かしい顔が目を擦りながら気がつきこちらを見る。

「中根小十郎だ」

何でまたと思いながら慶次郎が綱を斬り起こす。

「助けた人はこちらで、潰された人」

もう苦笑いしか出来ずに砂埃を落とすと、

「慶次郎頼んだ」

力が抜けて何か言っていたが気にかけず城に戻った。


「しばらく寝込む」

忠次が何か言いたそうだが何時もの事ですと中根の爺に言われてそっとしておいてくれ自分でも馬鹿なことだが寝込んだ。

「小十郎いい加減に機嫌をなおせ」

無視して綿で作った敷き布団に包まれ慶次郎を無視している。

「何か考えがあったとはわかっていたが日和が何の関係がある。会ったばかりで」

「うっさい、木偶の坊、馬に蹴られて死んでしまえ」

感情は出さずにめんどくさそうに答えると慶次郎は行ってしまった。

布団から起き上がると百地を呼び清洲に行くと言って馬に乗って駆けさせた。


「何だ小十郎、面白い顔をしおって」

「結婚をしようかと思いましたが諦めました」

そう言うと私を見て笑いながら裏へ連れていかれる。

「市、小十郎が色づいて散ったぞ」

ダイレクトに言われ崩れ落ちる。

「兄上、何てことを小十郎大丈夫」

「姉上、兄上の心ない言葉でとどめをさされ小十郎はもう駄目にございます」

芝居がかり姉上の胸に崩れ落ち嘘泣きで言うと兄上が、

「なら本当にとどめを」

「兄上」

今回は大勝だが空しい、

「まあ良い、使者として甲斐に行け心傷旅行だ」

そう言うと珍しく笑いながら兄は行ってしまった。


「さあ、甲斐へ行ってらっしゃい悲しむとお犬も悲しみますから」

姉上に見送られ贈り物を積んで向かう、

「一人で何をするか、しかし未だ寒いと言うか」

使者を先に送り知らせると案内と言う監視がつけられ甲斐へ入った。

「富士山、竹取物語だよな」

あのときに知らなかった物語を慶次郎に教えられながら躑躅ヶ崎への長い坂を登りようやく到着した。

「先鋒が出陣か数日以内に出兵か」

中に通され前と同じように覇気の無い信玄の弟信廉が影武者として座り右側に眼光が鋭い信玄が座っており今回は目線を合わせた後無視して座った。


「織田小十郎信照、織田家の使者として徳栄軒信玄公に挨拶と同盟のため婚姻をお願いしたいと」

そう言うと信廉が頷き話し合って返事をすると、

「それとひとつお願いが」

「何かな」

「北で、あの景虎との戦が行われると思います。武田の戦いをこの目で見せていただけるなら嬉しい限りです」

そう言いながら目線だけは本物を見て広間を出ると小部屋に案内された。


「この後を考えるとやりきれないな」

信繁や勘助が死んだことを思いだしやりきれなかった自分を思い出しながら苦悶する。

大きく息を吐き目を閉じて全てを頭から消す。

どのくらいかわからないが呼ばれたので広間へと戻った。

今回は本物の徳栄軒信玄であり代わりに面頬をつけた信廉が座っており眼中になく正面だけ見続けた。


「織田家との婚姻は機会があれば、同盟は締結する」

破る気満々なこの男に相変わらずと思いながら礼を言い、

「それと、もし海が見たい場合は遠江はいただきます」

「岡崎の城主はその方か」

「それでは義父の仇ですぞ」

義信が立ち上がり仇討ちを言うらしい、

「まさしくですよ、義元に槍を突き立て首をはねましたから」

「貴様、許さんぞ」

「太郎やめぬか」

「しかし父上」

「使者に手をかければ武田は信頼を無くす」

どの顔が言うのかと思いながら、

「父親の仇討ちもせず、弱い者虐めばかりしている当主に仇討ちと言われるなら喜んで相対しますがね」

「貴様、氏真殿を」

「やめぬか太郎、虎昌連れていけ」

守役でこの後すぐに父親を追い落とそうとする二人が消えていった。


「未だ小僧と呼ばれる年齢なのにここまでするのは何だ」

この威圧はいつでも怖いと言うか兄上以上に人的に欠落があるこの男に何を言っても無駄だったと思い出しながら、

「先程伝えた通りただ継いだけじめのつかぬ者には退場していただこうと、無論港を得られますから」

「そこまで露骨に二代と言うことか」

義信の自分と同じ父親を下ろした事が起きると言うことを信玄は自覚したが顔色も変えずに、

「話はこれまでとする。北への観戦は了承した」


そう言うと二日後に出陣した。

6日か、茶臼山に到着する日にちを考えながら進んでいると横に武将が並ぶ、

「お初にお目にかかります。山本勘助殿ですね」

「私の様な者の名前を」

「小十郎で良いですよ、勘助殿と呼ばせていただきます」

「小十郎殿は義元殿の首をあげそのまま岡崎をそして井伊谷まで落として圧力をかけるとは、仇討ちで出てこないと」

「織田を攻め滅ぼす今川を調べましたからね、氏真は直接は動かず間接的にしか権力を誇示できないと」

「どこまでが嘘か真か、私に平気でその事を話す。私の命をとるつもりでべらべらと」

「人は平等に何時かは命を無くしますからね」

意味深に言うと遠くを見つめながら考え込む、

「そうですね、義元殿は自ら不条理を思ったでしょうな」

「尾張のうつけが気がつけば目の前に、有り得ないでしょう」

勘助は頷きため息をついて、

「勝利をするために積み重ねてきたと、周りが何と言おうと」

そう言い驚嘆した顔をして私を見続けた。


「しかし勘助殿が織田にいれば少しは楽を出来ます」

「評価していただけるとは、武田を見て率直にどう思われますかな」

「徳栄軒信玄殿に殺されます」

「ここだけの話と言うことで」

勘助を知らなければ信じられないが記憶は自分の心にあり大きく息をはくと、

「甲斐そして信濃を手にいれても尾張の豊かさには勝てずじり貧に、隠している黒川の金鉱は算出量は減り続け代価である商業を進めたいが海はなし」

顔色を変えずに勘助は聞いている。

「小山田や穴山を見るに武田に屈したとは思えず重要な局面で失敗をするだろう、かつぎ上げられた当主の欠点ですね勘助殿が利で釣っているが二人はその場だけ、兵が強いのは貧しさのゆえ」

背伸びをして大きく息をはくと風林火山の旗を見つめ勘助は黙って一礼すると戻っていった。


「塩崎城かずれたかな」

茶臼山だと思ったが城にはいる。

妻女山には謙信は入っており徐々に武田は焦っているのが目に見えてきており5日目に川中島を横断して海津城に入った。

しかし上杉勢は妻女山から動かず兵糧が尽き果ててるはずなのにと悩んでいるようだった。

「御屋形さまがお呼びです」

唐突に言われて勘助と共にこちらを見ている信玄が、

「今の状況どう思う」

それだけ聞かれ、

「善光寺に兵糧を集積と越中からの援軍を待っているでしょう、数が少なすぎますからね」

虎の尾を踏んだなと思い勘助を見ると、

「御屋形さますぐに上杉に対して動かなければ」

そう言って強引に評定をするために連れていった。

「長居しすぎたかな」

妻女山の謙信を見上げこの後の武田が奇襲をするために夕食を多めに炊く量に気がつく事になるのを考え、一言言えば啄木鳥は3千程なら残り2万で1万3千を待ち受ければ大勝出来るが信玄を快勝させるつもりはなく啄木鳥が勘助から提案され評定で決まったようでご飯が多めに炊かれ始めた。


「百地、出陣の時に抜け出すぞ」

馬の準備をさせ奇襲を行うために出かけた武田勢に紛れ脱出し馬に乗って北へと向かい直江津から船に乗り西へと帰還することになった。

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