お茶請けは七不思議 5
「次なんだけど、僕もこの七不思議は詳しくないんだ。『残されたメッセージ』ってやつなんだけど。先生から聞いても詳しく教えてもらえてないんだ。ただ毎年、入学式から数週間辺りで頻発していると言っていたから、新入生の悪戯じゃないかと先生は言っていた」
「七不思議と言うには少しパンチが弱い気がしますけど、どうなんでしょうか?気になるのはメッセージの内容ですね。それによってはホラーっぽいと思えるかもしれません。今までのがホラーっぽいかどうかは別ですが」
「悪いんだが、僕も内容までは知らないんだ。先生から愚痴のような感じで一方的に聞かされてただけだし。そこまで言ったなら話してくれてもよかったのに」
多分だけど、下手に教えると真似する生徒が出てくる事を心配して言わなかったんだと思っている。
「どうしても知りたいのであれば先生に聞くといい。教えてくれるかは分からないが、僕に聞くよりは情報が落ちると思うぞ」
「機会があれば聞いてみましょうか。出来ればそのメッセージを見せてもらいたいんですけど、多分無理でしょうね。それはそうと華篠先輩、いい加減に講師の事を先生と言うの直してください。少し気になります」
「それは僕も直したいとは思っているんだが中々癖が抜けなくてな。それに、先輩後輩で話してるだけなら気にしなくてもいいだろ」
僕としては身内で話す分には別に気にする程でもないと思うけどな。先生の前ではちゃんとしている訳だし、文句を言われる筋合いはない。とは言え、花見技が言っている事ももっともなので、さっさと話を逸らす。
「今はその話よりも七不思議だろ? とは言っても次の七不思議も詳しく知らないんだよ。『月夜の影』って言うやつなんだけど、これは警備員さん達の間で広がっているらしい。それ以外の情報があんまりないから、これ以上は答えられない」
「下手な憶測で話を作られるよりも、分からないと言ってもらった方が個人的はいいと思います。一応、メモには推測と記載しておきますが、華篠先輩はどう思いますか?先輩の推測を聞いておきたいんですけど」
「まあ文字通り、月夜に影が出来たと言う噂じゃないか? 多分だけど何も無い所に影でもあったとかそう言う話だろ。オチは鳥が月の光に当たって、影が出来たみたいな感じだと思う」
これはあくまでも僕の推測。合っている間違っているはこの場合関係ない。
「確かに名前だけ聞くとそれぐらいしか思いつきませんね。でも、何で情報が少ないんでしょうか? 結構分かりやすいうえに、広まりやすそうですけど」
「多分だけど、広まっているのが警備員さんの間だけだからじゃないか? その間だけならそこまで広まらないだろうからな」
確証は無いけど、と付け加えておく。変に推測を正しいものと植え付けるより、間違っている可能性があると分かっていた方が、花見技にとっても都合がいいだろう。
「広まるのはその間だけですか。これは小説のネタとして使えそうですね。同じ大学にいながら関わりのないコミュニティで広がる噂、それが取り返しのつかない状態で、主人公の前に脅威として現れる。それにしても、七不思議からはネタがパッと思い浮かばないのに、何故か関係のない部分でネタが出るのでしょうね」
「あれじゃないか? 下手に完成された物を参考にするよりも、曖昧な方がネタにしやすいとかそう言う感じだと思う」
まあ、その辺は人によるんだろうけど。向き不向きは誰にでもあるだろう。