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お茶請けは七不思議 3

「華篠先輩は私がホラー小説家を目指してるのは知ってますよね? 今スランプ期間に入っていまして。それでアイデアが出なくて困っているのです」

「困っていると言っていたけど、僕を待たせてまで書いていたのは? アイデアがあったから時間をとってまで書いていたんじゃないのか?」

「あれは異世界転生系ホラーの話を書いていたんですよ。『本当は怖い異世界転生ー小説で見てたのと違う!ー』って言う、異世界転生の短編をまとめた話です」

「聞くのも怖いがどんな話だ?」

「今書いているのは『無詠唱魔法は……』って言うタイトルですね。転生して親に捨てられた主人公が人里離れた魔法使いに出会い、魔法を教えてもらう話です。

 大体のプロットは……、師匠の元で無詠唱魔法を覚えるけど、その途中で師匠が亡くなってしまう。もっと魔法を覚えたい主人公は魔法学校に受験行った結果、レベルの低さに驚いた。今だに詠唱を行なっている。ここは小説で見た、レベルの違いを見せて『僕、なんかやっちゃいました?』が出来るのではないか? そう思い、無詠唱魔法を唱えた。すると、周りが慌てている。ここで例のセリフを言おうと思ったが、何故か取り押さえられて魔法が使えない様に道具を着けられた。何故こんな事をするのかと聞いたら、無詠唱魔法は世界的に法律で禁止されていると言う。魔法とは危険なものであり、簡単に使えないよう詠唱と言うストッパーが必要とされている。一度でも無詠唱をしてしまうと、意識してない時でも勝手に魔法が出てくるようになる。そうなってしまった者はもれなく処刑しないといけない。主人公は『師匠はやっていた』と言ったが、その師匠は指名手配をされていた。その後、主人公はこんなの違うと言いながら処刑された。無詠唱魔法は犯罪でした」

「さらっとえげつない話をするな、軽い気持ちで聞いていい話じゃなかったぞ」


 気軽な気持ちで聞いたけど情報量が多すぎる。そこまで書けるならスランプではないと思う。とりあえず、脱線した話を戻す事にした。


「聞いていた感じ、全然スランプを感じさせないプロットだったが、この相談って必要あるか?」

「今書いてるのはホラーと言うよりも、異世界寄りの話です。私が書きたいのは現代ホラーなのですけど、全然書けなくて困っているんです」


 言いたい事は何となく分かる。分かるが相談したところで、僕が出来る事は無いと思う。


「そこで華篠先輩の出番です。この町、古都野には噂が多く存在するじゃないですか。その噂を小説のアイデアとして参考資料にしたいのです。華篠先輩にはその噂を集めるか、知っている話があれば教えてもらおうと思って相談したかったんですよ」


 花見技の言う様にこの古都野町には噂の類いが多く存在する。その中には花見技が好みそうな怪談とか都市伝説などもある。僕もいくつか聞いた事があるけど、この町の噂には少し問題がある。


「さらっと集める頭数に入れられてるのはどうかと思うが、しかし、噂集めか」


 噂集めと聞いて白無の顔を思い出した。あいつもバイトで噂を集めていたし、最近の流行なのだろうか。


「僕も少しだけ知っている。けど、この町のそう言う噂、特にホラーの類いはくだらない噂から発祥している事が多いんだが大丈夫か? ホラーとして話を聞きたいのなら参考にならないと思うんだけど」


 この町の噂は、大袈裟に脚色されたものが多い。元になった話を聞いてみたら、あまりにも脚色され過ぎていて原型自体、変わってしまった噂まである。そんな話を聞いても参考にならないと思うが、そうではないらしい。

 

「それならそれでいいです。別に怖い話を求めている訳じゃないのですよ。今、現代ホラーの話が思いつかなくてアイデアになりそうな、参考資料になるような噂があれば知りたいのです。

 それにくだらない話がどの様な噂に変化したか話を創る上で参考になりますし、出来れば元になった話も知っておきたいのですよね」


 つまり、参考資料として変化した噂を集めるのが目的って事か。確かにホラー小説を書くために噂を集めるのは、資料としては悪くないだろう。なんせこの町は噂の宝庫なのだから。


「僕に求めるのは噂集めると、その元となった話を探せばいいって事か」

「厳密に言うと、元となった話の推理もしてほしいんです。解答がある場合はそのまま教えてもらえればいいんですけど、ちょっと協力してもらえないかなと思いまして。分かりやすく、華篠先輩は主人公役になってもらいたいのです。ホラーには時に謎解きも必要ですから」


 主人公役になって欲しい、その言葉を聞いて僕はどんな顔をしているだろうか。子供の頃に憧れたその言葉は、歳を重ねるにつれて縁遠い物だと理解した。憧れや努力で主人公になれるなら、きっと誰でも主人公になれるだろう。少なくとも僕には主人公なんて大役、受け入れる器が小さ過ぎて務まる気がしない。何かがあって、絶望してそう思ったとかそう言うわけではなく、時が経つにつれてそう思うようになった。

 とは言え、主人公でなく主人公役。僕自身を主人公にした小説が書きたいと言うわけではなさそうだ。それならば別にかまわない。ちょっとした答えが分からない謎解きゲームだと思えばいい暇つぶしになるだろう。


「ぼくに主人公役なんて大それた肩書は無理だけど、特にやる事もないから暇つぶし程度には協力するよ」

「それはありがたいですね。私、噂集めるのが苦手で中々集まらなかったんのですよね。まあ、協力してくれるまで返さない予定だったので、華篠先輩は断れないのですが」

「ここへ来るのも今日で最後だ」

「今日は帰しませんよ⭐︎」


 席を立って鞄に手を伸ばすが、いつの間にか花見技が持っていた。この野郎、読んでやがったな。


「冗談はさて置き、華篠先輩が協力してくれるのは助かります。猫の手も借りたいくらい集まらなくて困ってたんです」

「猫の手も借りたいは、かき集めるって意味はないからな。まあ、やる事もないし、手伝うくらいなら」


 そう言うと花見技は嬉しそうな顔をして鞄を返してきた。どうやら納得してくれたみたいだ。


「とりあえず、今すぐに話せそうなものはありますか? ここの大学にある七不思議みたいなものを知っていればお願いしたいのですが」

前の話で花見技鳴子のルビを振り忘れました。読み方は『はなみぎなるこ』です。

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