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帝国の不作と王国の豊作

ユリアン皇子が留学されてから数日、彼は何故か私達のグループの中にいることが当たり前になってしまっていました。

学生の身分の差なしとはいえ、隣国の皇子なのですから公爵家令嬢や次期王妃、第二王子がいるので当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが。

初日の手にキス事件から仲間たちも警戒はしていたのですが、全く気にしない様子で来られては無碍にも出来ないと言ったところでしょうか。

普通は選択学科を選んだコースに行くのですが、彼は今期のみの留学という事で各コースを見学という形で順次回っておりました。

そんなユリアン皇子は何故かいつも私の近くにいてニコニコと笑いかけてきます。

普段はビリーとエミリオ様、メリルとシャルロットが前後左右に配置されて私に極力近づけない布陣を取っているのですが現在は領主科の授業が終わったところです。

つまり、現在真正面からユリアン皇子に話しかけられています。

彼は私の好きなものは何かとか、よく読む本は何かとかそんな事をよく聞いて来られます。

キチンと答えてはいるのですが私の事ばかり聞かれるというのも辟易してきますね。

この機会に前から聞きたかった事を聞いてみるとしましょう。


「ユリアン皇子は何故こちらに留学されようと思ったのですか?

教育のレベルは我が国よりも大きなラズアーレ帝国の方が上なのではないですか?」


以前の歴史でも話したことですが、王国の歴史よりも帝国の歴史の方が遥かに長いです。

そのため、あちらの国の方が様々な面で洗練されていると言われています。

同盟国とは言え王国にわざわざ学びに来ることがあるとは思えません。

それも皇子自らとは・・・何か学びたい事柄があるのであればもっと下の者で良かったはずです。

それが私達が彼を警戒している最大の理由になるのですが。


「ははは、エリディス王国の教育も大したものだと思うけどね。

まぁ、正直に言うと我が国はここ何年も不作が続いていて下のもの達が飢えで苦しんでいるんだよ。

しかし、王国の方では特にこの数年豊作が続いているそうじゃないか。

何かその秘訣でも学べればと思ってね」


ユリアン皇子の言う事は事実です。

ここ最近、帝国の不作が続き貧富の差がより激しくなっていると言う話は聞きます。

その為に帝国を捨てて王国に流れ着くもの達も少なくないという報告を受けております。

この流れは前回の時間軸でもあったことなので特に問題はないでしょう。

貧しいものが虐げられている現状には心が痛みますが、それはラズアーレ帝国が解決する問題です。

他国の公爵令嬢如きが口に出す問題ではありません。

一方で我が国の豊作の話です。

元々、我が国では作物の取れる量が多く質も良いという話をしましたが、それがここ数年で更に良くなっているのです。

本来、豊作すぎると言うのも良くない話ですが、ラズアーレ帝国が不作な事もあり、採れすぎた作物を全て輸出に回しても全て高値で買い取って頂いております。

その為に我が国はここ数年で一気に好景気となり人々は毎日を幸せに過ごしていると聞きます。

この話自体はいいのですが、この豊作に関しては前回の時間軸では起こらなかった事です。

作物の取れる量は減りこそしないものの増えることもなく、帝国の流民が流入してきた分だけ輸出に回せる作物の量は減り、このような好景気は起こっておりませんでした。

悪い事では無いのですがこの違いは気になりますね。

ユリアン皇子の話では彼がここにいるのもこの事が原因のようですし。

ユリアン皇子が何か調べていらっしゃるのでしたら探りを入れてみましょうか。


「私達の方では特に農業に新しい技術を導入しようとしたという話は聞きませんが何か分かりましたか?」


私がそう尋ねると彼はその言葉を待っていましたと言わんばかりに笑った。


「ああ、調べてみたら面白いことが分かったよ。

私は君の存在がそうさせると思っているよ、エリカ・クロード公爵令嬢」

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