エミリオとユリアン
休み時間、いつもの仲間たちが集まっている場所に近づいてくる人影がありました。
ユリアン皇子です。
ユリアン皇子はエミリオ様の前に来ると気軽に話しかけられました。
「やぁ、エミリオ。久しぶりだね。
・・・最初は君が余りにも変わりすぎて分からなかったよ」
そう、エミリオ様は騎士科に所属されてから内面だけでなく外見まで変わられました。
私と身長が余り変わらない160センチより少し上程度の身長だったのですが、現在のエミリオ様は175センチよりも高くなっています。
ビリーが180センチあるのですが並んでも見劣りしません。
いま私たちのグループでの身長としてはトップがビリー、次にエミリオ様となっている程です。
また、以前の甘えた幼い様子は全く無くなっていますので傍目には別人に見えるでしょう。
「ありがとう、ユリアン。
以前の僕は甘ったれた子供だったからね。
変わったと言われるのは最高の褒め言葉だよ」
そう言ってエミリオ様はユリアン皇子に手を差し出します。
ユリアン皇子もその手を掴んで硬く握り合います。
ユリアン皇子も同じぐらいの身長があり、高身長で絵に描いた王族という2人の握手は非常にサマになっておりますわね。
教室の外から皇子を見に来られた野次馬な令嬢たちが黄色い悲鳴をあげておられます。
「男が変わるきっかけは殆どが女性関係だと思うんだけど、例えばこの中に君が変わるきっかけになった女性がいるのかな?」
ユリアン皇子はそう言ってこちら側を見ますが、その目は私を捉えており早く紹介しろと言っているようです。
恐らくはこの場の皆がそれは分かっていたのでしょう。
そこでエミリオ様は私ではなくビリーをユリアン皇子の前に出しました。
「ははは、皆が皆そうとは限らないさ。
僕はいま騎士科に所属していて、このビリーとは切磋琢磨し無二の親友とも言うべき存在なんだ。
彼の存在が無ければ今の僕は無かったね」
「ああ、どうも。
紹介に預かったビリーと言います」
巻き込まれたビリーには申し訳ないですがこの返しは上手いと言わざるを得ませんね。
ビリーと切磋琢磨してエミリオ様が変わられ、2人が仲の良い友人であることは学校内では知れ渡っています。
平民と王族がという意見も上がりましたが、これまた野性味溢れるビリーと王族のエミリオ様という正反対の組み合わせが逆に良いと女生徒に非常に評判が良かったそうです。
芸術の心得がある女生徒が描いた2人が肩を組んで笑い合うという絵は大変に好評で、大量に出回っているという話も聞きます。
ユリアン様としては完全に狙いと違う展開になったのでしょうか慌てることなく対処されます。
「最初の挨拶でも言ったがユリアンという。
私も一学生として扱われるのでどうか普通に接してほしい」
と言ってビリーとも握手をします。
相変わらず外からの叫び声が凄まじいですわね。
ビリーと握手を終えると改めてエミリオ様に向かい合い
「良ければ君たちの事を紹介してもらえないか?
唯一の知り合いであるエミリオを通じて私は君たちと仲良くなりたいんだ」
と言いました。
これでは断ることは不可能でしょうね。
私たちは一人一人挨拶していきます。
メリルの時には
「君がシグルドの婚約者か!
これからよろしく頼むよ」
と反応しておられました。
そして最後に私の番です。
「私はクローネ公爵の娘、エリカ・クロードと申します。
よろしくお願いしますわ」
と挨拶をするとユリアン様は
「貴女がかの有名なクロード公爵令嬢でしたか!
エリカ嬢のご活躍は帝国にも届いておりますよ。
是非、私と強い縁を結んで欲しいものです」
といい、私の手をとりその甲に口づけされました。
ユリアン皇子が手を離した瞬間に強い力で後ろに引っ張られました。
その犯人はビリーで私の身体を引っ張ると一歩前に出て私を隠してしまいます。
さらにエミリオ様が前に立ちはだかり
「エリカ様は未だ婚約者のいない身。
その方にこの挨拶は周囲に誤解を生むきっかけになりますぞ。
どうぞお気をつけを!」
と言葉こそ丁寧であるが中身は
「姉上の手に勝手に口づけしてんじゃねぇよ!」
と言っているようでした。
しかし、ユリアン皇子は全く気にした様子もなく、また会いましょうとその場から去っていかれました。




