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種蒔きと友情

「あら、2人とも先程よりも仲良しになったわね」


手を繋いで戻ってくる私達を見てお母様が呟かれます。


「ええ、先程は本当の姉妹のような時間を過ごせましたわ。

シグルド王子、大変お待たせしてもうしわけありません。

さぁ、メリル後は頼んだわよ」


「はい、お姉様!

シグルド王子、足りぬ身だと理解はしておりますが私が相手を務めさせて頂きます」


先程まで怯えていたとは思えない堂々とした態度。

これならば問題ないでしょう。


「何が足りぬ身なものか。

そなたと話をするのはとても楽しく好ましい時間だ。

・・・エリカ嬢、感謝する!」


シグルド王子はそう言って私に頭を下げられました。

その態度に私は笑顔で答えましたが心の中では疑問が湧き上がってきます。


(あの傲慢や不遜で出来ていたシグルド王子が私に頭を下げるなんて・・・前の時間軸ではどれだけフォローしてもこんなことありませんでしたのに。

メリルが関わっているからこうなっているという線もあるのでしょうがどうにも違和感がありますわね。

少し探ってみる必要がありそうですね)


心の中ではそんな事を考えながらも


「それではシグルド王子。

私の大切な妹をどうかよろしくお願いしますね」


と挨拶して会場を周ることにしました。



会場を周り挨拶をしますと皆が口々にお祝いの言葉を述べてくれますが、その次に続くのはメリルのことです。

さすが社交界の方々は噂好きでございます。

皆はメリルの所作を褒めながらも「ところであのご令嬢とはどのような関係が?」という疑問に続きます。

そこまで力のない貴族には


「血縁関係にある令嬢で今日は私のお祝いの為に駆けつけてくださいましたの」


と答え、力のある貴族には


「私の自慢のいも・・・従姉妹ですわ」


とわざと言い間違えをしてアピールをしておきます。

ここで植えた種は今後きっと役に立つことでしょう。

メリルの方を見るとシグルド王子と楽しそうに談笑しております。

その様子を楽しそうに眺めながらお父様やお母様も偶に声をかけてサポートしてくださいますわね。

当然、周りの貴族にもその光景は見えております。

彼らの中でメリルは王子に気に入られお父様とお母様も私ではなくメリルを優先して大事にしているように見えていることでしょう。

今日は種蒔きのつもりでしたが思いの外成長してくださっているようですね。

私は心の中ではほくそ笑みながらパーティの終了まで挨拶をこなしました。

招待された貴族達が続々と帰路に着く中でシグルド王子だけは別れづらそうにしております。


「王子、もうそろそろ城に戻りませんと」


お付きの者達に急かされてやっとお戻りになる心が決まったようです。

私はそんな王子に声をかけます。


「シグルド王子、本日は誠にありがとうございました」


「うむ、これからも健やかに過ごしてくれ。

メリル嬢、そなたも元気で」


「はい、ありがとうございます」


私との挨拶もそこそこにメリルに別れの挨拶をするシグルド王子に微笑みながら


「ふふふ、シグルド王子。

私達は本日大変有意義な時間を過ごし友情を育みましたよね?」


「うん?・・・どういうことだ?」


王子は私の言葉の意味が分からずに首を傾げます。


「ふふ、もっと簡単に言いましょうか。

私達はとても仲の良い友人になったと言うことです。

と〜っても仲の良い友人ならばお互いの家に遊びに行くことも珍しくはないでしょう?」


シグルド王子は私の言葉の意味に気付いたのか目を見開きます。


「なるほど、そういうことか」


そう呟いてお付きの者に大きな声で宣言をします。


「本日、私はクロード家と大変有意義な時間を過ごしエリカ嬢と友情を深めた。

この話を広めておくのだぞ」


「は、かしこまりました」


「エリカ嬢、本日は大変に有意義な時間であった。

本当に感謝する」


「ええ、私も良い時間を過ごせましたわ。

王子が遊びに来られる時は妹と共に歓迎しますわ」


「うむ、ではさらばだ!」


そう言ってシグルド王子も帰路に着きます。

私は成り行きが理解できなく呆然としていたメリルの肩に手を置き


「これでまた姉妹の時間が増えるわね」


と笑いました。

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