噂話とやってきた王子様
私の10歳の誕生日パーティーでお披露目会とはいえ、2回目ですのでそれほど緊張しておりません。
しかし、私の隣にはガチガチに緊張している少女がおります。
それは私の侍女であるメリル・ブラウンです。
彼女はいつものメイド服ではなく今日の為に仕上げたドレスとアクセサリーを着けており髪も綺麗に整えられています。
「エリカ様・・・やっぱり私は場違いでは?」
「そんな事はありませんよ。
貴方にはここで貴族のパーティーというのがどういうものか、直に体験して今後に活かしてほしいのですからいい加減に覚悟を決めてちょうだい。
それにクラリス先生と私の教えがしっかりと身に付いているかチェックするという意味もありますし。
それと貴女の今日の設定は私の親戚ということになっているという話はしましたわね。
では、私の事を何と呼ぶかも覚えていますわね?」
私がそう言うとメリルは顔を赤くしてモジモジしながら
「わ・・・分かっております。
お、お姉様」
その言葉を聞いて私は思わず手に持った扇子を広げて顔を隠します。
何なんでしょうか、この可愛い生き物は?
妹を持つ姉というのはこんな素晴らしい体験をなさっているのでしょうか?
破壊力が高すぎますわ。
「お、お姉様!どうなさいました?
私、お姉様に何か失礼なことでも!?」
「い、いえ問題ないわ。
むしろとても素晴らしい体験をさせてくれてありがとう。
私を姉と思って頼ってちょうだい」
「はい、ありがとうございます。お姉様」
ふふふ、実に素晴らしいですわ。
この時間を今日だけで終わらせない為にも本日は頑張らねば。
「本日、我が娘が10歳になる記念すべき日を迎えました。
このめでたい日を祝う為に駆けつけてくれた皆さまには感謝の言葉もありません。
それでは可愛い我が娘をぜひ皆様に紹介させてください!」
お父様の紹介を受けて私は立ち上がります。
「ご紹介に預かったエリカ・クロードです。
先ずは皆さま、私のお祝いに駆けつけてくれたことに深い感謝を捧げます。
そして、この日を無事に迎えられた感謝を神と初代国王アイン様に捧げたいと思います。
・・・皆さま、本日はどうぞお楽しみください!」
お父様と私の挨拶が終わり様々な貴族達が挨拶に来ます。
本命は・・・まだ来場されていないようですね。
そういえばあの日もサプライズとして遅れて登場された記憶がありますね。
さて、私は現在クロード家のテーブルに座りお父様とお母様に挟まれています。
この挟まれている中にもう1人メリルもおります。
当然、この少女は誰だと言う話になるですが、私達は遠い親戚であること答えます。
しかし、メリルは私の事をお姉様と呼び私も妹のように接します。
また、両親もメリルのことを実の娘のように扱っております。
するとどうでしょうか?
表では私の誕生日を祝っておりますが裏ではまことしやかに噂になっております。
メリルがクロード家の隠し子ではないかと。
そんな噂が流れ始めた時に入り口の付近がざわめき始めます。
そしてそちらの方から複数のお付きを従えた黒髪の少年が現れます。
「遅くなってすまぬ。
エリディス王国第1王子、シグルド・エリディス。
クロード公爵令嬢を祝う為にまいった!」
最初の1話からやっと王子の登場です。
 




