屋敷への帰還とお祖父様
領地に戻る前にちょっとしたトラブルはありましたが、私は無事に本来の我が家に帰ってまいりました。
屋敷の中に入るとピシッと真っ直ぐな背筋をした初老の男性が出迎えてくれます。
「よく戻ってきたな、エリカ!
会いたかったぞ」
「ただいま戻りましたわ、お祖父様」
そう、迎えてくれた男性は先代のクロード公爵であり私の祖父でもあるドグネス・クロードお祖父様です。
「おお、おお。立派な挨拶ができるようになって。
王都での勉強を頑張っているようじゃな。
流石は我が孫じゃ」
元々、軍権を持って指揮していた経験からかお祖父様は非常に背が高く、今も訓練を欠かさないおかげで体格もガッチリしています。
そして普段ならば無表情を保ち周りを常に震え上がらせているらしいお祖父様ですが私の前では破顔して常にデレデレしております。
「それではお嬢様。
私たちは先にお嬢様の部屋を整えさせていただきます。
ドグネスさま、お久しぶりのところ非常に申し訳ありませんがお嬢様のことをよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
「うむ、エリカの事は任せてお前たちは存分に仕事に励むが良い」
モニカが頭を下げるとそれに合わせるようにメリルも頭を下げます。
そして、そのままモニカが屋敷の奥に進んでいくのを慌てないように気をつけながらついていくのでした。
一見すると失礼なように見えますがモニカは気を遣ってくれたのです。
お祖父様の私と2人で喋りたいというお気持ちを察したのでしょう。
「お祖父様とお話しする前にこちらを。
父から預かったものです」
私はそう言ってお祖父様に手紙を手渡す。
「うむ・・・なんじゃ?
クルドアから手紙とは珍しい」
お祖父様は手紙を受け取り読み始めます。
そのお顔は先程までのデレデレ顔が嘘のように般若のようになっていきます。
「メリルよ、ここに書いてある事は全て真実なのか?」
「はい、初代国王アイン様に誓って」
私は懐から金の懐中時計を取り出す。
お祖父様はそれをじっくりと眺めると
「話は分かった。
それでワシは何をすればよい?
いや、皆まで言わんでも分かっておるぞ!
シグルドの小僧を叩き殺してくればよいのだ!!」
「・・・は?いえ、そういうわけではありません!!」
お祖父様の言葉に耳を疑ってしまいました。
何処からそういう発想になったのでしょうか?
「しかし、エリカに何の罪も無いのに一方的な婚約破棄をしたなどと到底許せる事ではないわ!
エリカは心配せずともよいぞ。
ワシがきっちり引導を渡してくれるからな!!」
「待ってくださいお祖父様!
まだこの時間軸では何もされておりませんから。
むしろそのように動かれては私の計画が台無しになるのでおやめください!」
「むぐぐ・・・分かった。
今回は小僧の命は諦めよう。
しかし、次に同じことをした時は王族諸共葬り去ってくれる!」
「今回は婚約しないように手を打ってありますから心配しなくても大丈夫ですよ」
まさか、ここまで暴走されるとは。
前の時間軸だと婚約破棄の件を聞いたら本当に城まで突っ込んでいたかもしれませんわね。
そこも含めて王国の危機だったのでしょう。
私が大きなため息をつくと屋敷の奥からモニカとメリルが歩いてくる姿が見えた。
「お嬢様、部屋の準備が整いました。
ドグネスさま。盛り上がっているところ申し訳ありませんがお嬢様は長旅で疲れております。
一度部屋に戻る許可を頂けませんか?」
「うむ。
ワシの配慮が足りなかったようじゃの。
エリカよ、まずはゆっくり部屋で休んできなさい。
ワシは昂ぶった気を沈めてくる」
お祖父様はそう言って庭園へと向かいます。
恐らく剣を振って雑念を取り除きに行ったのでしょう。
モニカ、非常に良いタイミングでした。
私がモニカに微笑むと、モニカは恭しく一礼します。
「さあ、お嬢様。
まずはゆっくり休みましょう」
モニカに案内されて私は自室に戻るのでした。
誤字&言葉遣いの乱れが多かったので修正しました!
(8/30 23:00)




