ブラウン母娘の忠誠心
さて、ここまで計画は順調に進めた所で私にはもう一つ成功させたい計画がありました。
こちらは個人的な問題であり公私の私の部分にあたりますので、公の計画が順調に進んでいる時にしか着手出来ません。
しかし、現状では公の計画は順風満帆ですので私の方の計画を進めても大丈夫でしょう。
というわけで、私は一旦王都を離れてクロード家の領地に戻ってきております。
私の後ろにはお付きとしてモニカとメリルも控えております。
当初はメリルを母親の元から離すのは心苦しく連れて行くのはモニカのみの予定だったのですが(もちろん護衛は付いているという前提です)、その話をメリルにすると
「私はお嬢様のお付きになる予定です。
常にお嬢様の側にいてお世話をさせていただきたいと願っていますので連れて行ってもらえませんか?
お嬢様の母との時間を大事にするようにというお心遣いは大変嬉しいですが母も理解し私が共にあることを望むはずです」
と猛アピールされてしまいました。
そこで私はジョン爺と共に庭の手入れをしているマリアに確認に行きます。
メリルはマリアにそっくりで記憶の中、前の時間のメリルと並べると姉妹と言えるような容姿をしておりました。
当初は育児とキツい仕事の両立から疲れ果てて顔色が悪く、精神面でも不安定な状態だったのですが、クロード家に来てから生活の質が上がったこと。
食事・教育など全てこちらが行なっているので育児の手間がほぼなくなった事。
穏やかなジョン爺と共に庭の手入れをして草木を愛でる生活。
それらの要素が重なった結果日が経つ毎に肌ツヤが良くなり元の明るさを取り戻していきました。
庭園で作業をしていたジョン爺とマリアの元に参ります。
「お二人とも御機嫌よう」
私の挨拶に2人も笑顔で答えてくれます。
「マリアに話があるのですがいいかしら?」
「私にですか?
私に出来ることなら何でも言ってください!」
マリアはそう言ってキラキラした目で私を見ます。
何でしょう・・・この妙に熱い眼差しは。
凄く身近でも感じたことが、というよりも現在進行形で私の後ろからも向けられている気がします。
言わずもがなメリルのことです。
親子とは眼力まで似てくるものなのでしょうか?
とりあえず庭に設置されたテーブルと椅子にマリアを呼びます。
「実は私は暫く王都を離れて領地に戻ることになりました。
どれほどの期間向こうに滞在するかはまだ未定ですが2〜3ヶ月はかかると思います」
「それはまた・・・長い期間お嬢様の姿を見れないのは寂しくありますね」
マリアは私の話に落胆したように肩を落としました。
やはり娘が一緒についていくと思っているのでしょうか?
「私もここの者たちと離れるのは寂しくもあります。
そこで長期に渡ってマリアとメリルを離れさせるのは心苦しいのでメリルはこちらに置いていこうかと」
私の発言にマリアは驚き目をカッと開きます。
「お嬢様の気遣い大変ありがたいです。
メリルはその話を了承したのかい?」
マリアがメリルに話の矛先を向けるとメリルは大きく首を横に振ります。
「母さん、私はお嬢様についていきたい。
母さんと離れるのは寂しいけど、それ以上にお嬢様のお世話が長期間出来ないなんて私には何より辛い罰のようなものだわ。
母さんも分かってくれるでしょう?」
メリルがそう問いかけるとマリアは大きく頷いた。
「もちろんよ。
むしろ私との時間を大事にするために大恩あるお嬢様を蔑ろにするなら親子の縁を切ってたね!
でも、メリルがそういう気持ちでいるなら安心したよ。
さすがは私の娘ね!」
その親子の縁を切るという発言に私は淑女にあるまじく一口飲もうと口に含んだお茶を吐き出してしまいました。
「お・・・お嬢様!
大丈夫ですか!?」
「ゴホゴホ・・・だ、大丈夫よ。
ちょっと驚いただけだから」
後ろに控えていたメリルがすぐにハンカチを取り出し私の背中をさすりながら濡れた箇所を拭いてくれます。
そしてモニカはテーブルの上をサッと片付けて新しいお茶を用意してくれました。
気を取り直してマリアへと顔を向けます。
「マリアはそれでよろしいのですか?
先ほども申しましたが私は親子の時間を邪魔するつもりはないのですが・・・」
「いえ、お嬢様。
私もメリルも常にお嬢様を第一に考えご恩をお返ししたいと考えております。
メリルが少しでもお嬢様のお役に立てるなら是非とも連れて行ってあげてください」
「私からもお願いします!」
そう言って2人は私に頭を下げます。
私としてもメリルへの教育の時間はなるべく取りたいので嬉しい申し出ではあります。
ですので
「分かりました。
それではよろしくお願いするわね」
とメリルに笑顔で答えました。
しかし、心の中は2人の忠誠心の高さが予想外すぎて乱れておりました。
(正直、2人の忠誠心が重いですわ。
まぁ、メリルに関してはシグルド殿下がどうにかなさってくれるでしょう)
まさか、殿下に期待することがあるとは思わず深い息を吐いてしまいます。
その後は気を取り直してジョン爺とマリアの手入れをした庭を見せてもらいました。
女性の視点が加わったことで庭が格段に華やかになっており、一連のやりとりで疲れた心を癒してくれたというのが救いでしたわ。




